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落語は気仙沼にかぎる。

先の週末、気仙沼に行った。

2012年の「気仙沼さんま寄席」から続く、立川志の輔さんの独演会「おかえり寄席気仙沼」を観るための小旅行だ。皆勤賞というわけではないものの、志の輔師匠にかこつけて気仙沼に行く理由を自分につくり、気仙沼の方々とのつながりを切らさずにいる。もしも師匠の落語がやってなければ、どのタイミングでどうあそびに行くべきかわからず、なんだかんだと足が遠のいてしまっていたかもしれない。

そういう考えの人はぼくにかぎったわけじゃないらしく、先日の「おかえり寄席」にも北海道から沖縄まで、全国各地からの常連さんがあそびに来ていたそうだ。師匠の落語は、ぜったいに「観てよかった」「来てよかった」と思わせてくれるものだし、気仙沼の食べものもまた「来てよかった」「食べてよかった」を実感させてくれる。

さらには「おかえり寄席」の会場で、たくさんの地元スタッフさんたちが「おかえりなさい!」と声をかけてくれる。鶴亀食堂(上の定食を提供する食堂)では食べ終えてお店を出ていくお客さん全員に「行ってらっしゃい」の声をかけている。そうした声がけがぜんぜんマニュアルっぽくなく、ごく自然なあいさつとして響いている。——そりゃあ、師匠の独演会にかこつけて毎年あそびに行きたくなるよなあ、と思う。歩いていて食べていて、ほんとに気持ちのいい町なのだ、気仙沼は。


そういえば個人的にひとつ、うれしいことがあった。気仙沼に到着したその足で、ぼくは「中華そば まるき」を訪ねた。おいしくラーメンをいただいている途中、店長の熊谷さんがぼくの存在に気づいてくれた。

「だれですか?」みたいな顔をしていたお店の若いお兄ちゃんに、熊谷さんが「古賀さんだよ。『嫌われる勇気』を書いた」と紹介してくれた。すると間髪入れずに若いお兄ちゃんが「えっ? アドラーの?」と驚いてくれた。驚いたのはこちらだ。「いやー、ぼくあの本を読んだおかげで、こんな嫌われ者になっちゃいましたよ」なんてお兄ちゃんは笑ってくれた。

たくさんの場所で、たくさんの人に読んでもらっているんだなあ。あらためてうれしくなった。次に出す本も、そういう本にしたい。

気仙沼のみなさん、また来年あそびに行きますね。

落語は気仙沼にかぎる、です。