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コーンフレークの思い出。

もう20年以上、いや30年以上前のことかもしれない。

明石家さんまさんのトーク番組「さんまのまんま」に、たのきんトリオから抜け出し、大人のアイドルとして独走状態にあった当時の田原俊彦さんが、ゲスト出演していた。さんまさんはトシちゃんの近況、とくにプライベートについて、あれこれと質問をしていった。

「トシちゃんもひとり暮らしでしょ? 朝ごはんとかどうしてますのん?」

トシちゃんはさらっと「自分でつくりますよ」と答え、「朝はだいたいコーンフレークに牛乳かけるだけだから。栄養も摂れるし、簡単だし」みたいな説明を加えた。

するとさんまさん、「えーっ、あんなん食べますの!」と驚いてみせ、こんなふうに続けた。

「だってコーンフレークなんて気持ち悪いでしょう。あんなポテトチップスの上から牛乳かけて、べちゃべちゃにしたみたいなの」

ハハハハハ。トシちゃんは乾いた笑いで受け流していたけれど、ブラウン管の前に座るぼくは大笑いしながら「たしかに!」と唸った。以来しばらく、コーンフレークが気持ち悪くなった。きっとトシちゃんもそうに違いない、と思った。


本気なのかギャグなのかわからない、どちらにせよ「この人の目には、こんなふうに映っているんだ!」の驚きに触れたとき、ぼくは笑い、前のめりになり、その人のことをもっと知りたくなる。お笑いの世界にどこか世間ずれした人が多いように感じるのは、特異な目の持ち主だけが人気を博し、生き残っているからなのかもしれない。


お昼に入ったとんかつ屋さんに「とんかつ茶漬け」なるメニューがあり、急にコーンフレーク話を思い出したのだった。あのころのさんまさんなら、これをどんなふうに罵倒してくれるんだろうなあ、と。