カメラのほしくなる人生。
カメラと縁遠い人生を送ってきた。
フィルムカメラ時代に青春期を送ったこともあり、また男子校の運動部出身だったこともあり、写真を撮ること・撮られることについては、どうしても「わざわざ」の照れがついてまわっていた。わざわざ撮らなくてもいいじゃない。わざわざ残さなくてもいいじゃない。それがおれらの刹那じゃない。そんなふうに若さを浪費していた。高校あたりから40歳になるくらいまで、たぶんプライベートで撮られた写真は合計100枚も残っていないと思う。
犬がやってきて、それがぜんぶ変わった。
日々刻々と変化する犬を、犬との毎日を、写真に残したくなった。
iPhone があれば十分だろ、と思っていたカメラについても、いろんな欲が湧いてきた。もっときれいに、いついつまでも残したい。そう思うようになっていった。
カメラ好きな田中泰延さんと出会い、写真家の幡野広志さんと出会い、一緒に旅をしたことでその思いはより強固なものとなった。いい万年筆を買ったからといって、字がうまくなるわけではない。なんなら使わぬまま放置されることもある。同様に、いいカメラを買ったからといって写真がうまくなるわけではない。なんだかんだでそのカメラを構えず、iPhone ばかりになる可能性だって大いにある。
それでも昨日、はじめてのミラーレス一眼を買った。おそらく今日か明日には届くはずだ。いまからたのしみでならない。
カメラのほしくなる人生。それは撮るべき被写体を見つけた、とても幸せな人生なのだ。
犬に感謝だなぁ、と思う。