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一発屋が登る山

ほんとうにありがたいことに、先週金曜日に発売された『幸せになる勇気』、本日大重版がかかって累計20万部となりました。そして、前作『嫌われる勇気』にも重版がかかり、こちらは累計104万部です。

まだ発売間もない、どんなことが書いてあるのかよくわからない本がこれだけの支持をいただいているのは、前作の貯金というか、前作への信頼あってこそなのだと思います。それだけに「期待を裏切られた」という感想も、今後出てくるのかもしれません。いや、出なければ嘘でしょう。

よくバラエティ番組で「一発屋芸人」って言葉が語られますが、そしてぼくら呑気な視聴者は毎年のように出てくる一発屋芸人さんを、その刹那性も含めてたのしく鑑賞しているものですが、うーん。激務のなかで「おれ、一発屋になりつつある」「とんでもない勢いで消費されてる」と自覚してしまった芸人さんたち、怖いだろうなあ。たとえ自覚したところで、「その山」は登らざるをえないわけですからね。向こうに崖が待っていることがわかっていても。

もちろん本の内容には自信を持っています。やれることは全部やった、よくぞここまでやりきったと、納得しています。だけど「ブーム」というフィルターをとおして読まれるしかない現在の状況は、やっぱりおそろしいものですよ。

唯一、救いと思えるのは前作『嫌われる勇気』が2年1か月という長い時間をかけてミリオンに届いたこと。そして韓国でもミリオンを達成し、台湾でも25万部に届いたこと。これは一過性のブームではなく、もう少し腰の据わったなにかが動いている証拠だと思うのですが、どうなんだろうなあ。書き手の目に映る世界って、よくも悪くも狭すぎますからね。

たぶん、いまがいちばん不安な時期なんだと思います。


それとは別に、いま進行中のあたらしい本の原稿が自分でも驚くくらいにおもしろいです。まだ推敲前の、がんがん書き飛ばしている段階なのであとで読み返すと目の前がまっ暗になる可能性もありますが、とりあえずこのまま走ります。