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アイスコーヒーと氷水。

アイスコーヒーの季節である。

先月だったか先々月だったか、会社にあたらしいコーヒーメーカーを買った。そして数週間前に、追加のコーヒー豆を買った。ところが焙煎されたコーヒー豆が届いた途端、ぼくのからだはアイスコーヒーを欲するようになった。熱々のコーヒーを淹れるなんて信じられねえぜまったく、とホットコーヒーを拒絶するようになった。おそらく、このまえ買ったコーヒー豆は使われることのないまま秋を待つだろう。そしてカビっぽい匂いを放出し、ぼくに廃棄を迫るだろう。季節の移り変わりとは、かくも残酷なものなのである。

と書くと、ぼくのことをアイスコーヒー大好き野郎と思う人もあるかもしれないが、それは少し違う。じつはぼく、アイスコーヒーの味は好きなのだけど、アイスコーヒーを飲むと7割強の確率で腹を壊す、特殊な腸の持ち主なのだ。

それはアイスコーヒーが悪いんじゃなくて、冷たいものを飲んだから腹を下しているんだよ。かしこいあなたは言うだろう。しかし、コーラやアイスティーやアイスウーロン茶を飲んでもそんなことは起こらない。決まってアイスコーヒーのときにだけ、腹を壊すのである。

へえぇ、よっぽどコーヒーが合わない体質なんでしょうねえ。早く違う話題にならないかと思いながら、やさしいあなたは言うだろう。けれどもぼくはしつこく自身を説明する。不思議なことに、冷たい缶コーヒーでは腹を下さないのだ。つまり、コーヒーに含まれる特殊な成分がぼくの腹を攻撃しているのではなく、考えられる可能性があるとすればアイスコーヒーに投入された氷が、ぼくの腹を下しているのである。

それはちょっと矛盾してるじゃないか。相づちを打つのも面倒になってきたあなたは、黙って思うだろう。そう、たしかにヘンな話なのだ。ぼくは氷がたくさん入ったアイスティーやコーラでは腹を壊さない。壊すときは決まって、アイスコーヒーである。そして同時にアイス缶コーヒーでは腹を壊さず、原因は氷にありそうな気もする。


いま、ぼくはアイス缶コーヒーを飲みながら仕事をしている。やっぱり氷がほしいよなあ、と思いながらぬるくなりかけたコーヒーを飲んでいる。こんな話は誰も聞いてくれないだろうと思いつつ、聞いてもらえない話も「書く」ことはできるなあ、とこれを書いている。

それにしても氷を食べるのはぜんぜんオッケーだけど、溶けて水になった氷を飲むのはなんかイヤだよね。って、こんな話もどうでもいいよね。