ガンズ・アンド・ローゼズと犬。
本日はぺだるの出社日。
うちのオフィスは、何十年も前に外国人向けのマンスリーマンションとして建てられたのち、その需要が目減りしていったのか、小規模オフィス向けに改築された建物に入っている。元マンションであるからつまり、壁を隔てた両隣に、よその会社が入っている。
そのため、夜の遅い時間に原稿を書いていたりすると、ときおり隣の会社、もしくはそのまた隣の会社が、宴会的な、うえーい的な叫声をあげはじめることがある。廊下に出るとデリバリーピザの匂いが立ちこめ、お若い男女方がきゃあきゃあ騒ぐ声が、どこぞのオフィスから漏れ聞こえてくる。
ぼくはもう、いい歳をしたおとなだ。お若い方々のきゃあきゃあに、「大事だよね」と思う。大事だよね、そういうの。いつも真面目な顔して働いてるその場所で、言うにこと欠いてアルコールを飲んでいるっていう、ちょっとした文化祭感。アルコールの力を借りて、仕事から離れた「わたし」を見せ合う、なんとなくの合コン感。がんばれ、お若い方々よ。飲みすぎたコーヒーのせいで頻尿ぎみになったぼくは、何度もトイレに向かいながら彼らのきゃあきゃあにうなづく。
しかし、隣家からの騒音について、それほど物わかりがいい人ばかりが揃っているわけではないのが現代社会だ。わけても、就業時間のどまんなかの時間帯に、壁を隔てた隣のオフィスからビーグル犬の吠え声がばうばう聞こえてくるのは、深刻な近隣トラブルに発展しかねない大問題である。
というわけで現在、臆病者ですぐに吠えてしまう犬を、彼がいちばん安心できるであろう場所に置いて、これを書いている。廊下から人の声や物音が聞こえると吠えてしまうので、ガンズ・アンド・ローゼズを大音量で流している。
飲みすぎたコーヒーのせいで頻尿ぎみになったぼくは、トイレに行くタイミングを失ったまま、ふとももに彼の体重と温もりを感じとめている。
カッキー、宣言しておく。きょうは原稿進まないよ。