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脈絡もなく、性懲りもなく。

冬にまつわる3つの話。

① 観葉植物、枯れはじめる。

現在オフィスに3つの観葉植物がある。サボテンまで含めれば5つだけど、サボテンは植物界のダイオウグソクムシとも言える存在で、ほとんど世話を必要としない植物だとされている。それゆえ、まあ観葉植物は3つ。ひとつは自分で購入したもの。残るふたつは昨年夏、オフィスの移転祝いにいただいたものである。

その観葉植物が3つとも枯れはじめた。まだまだ元気な緑色をしているものの、枯れた葉が目立つようになり、焦げたような色の葉まである。枯れゆく原因として考えられるのはふたつ。水やりの不足と、冷気である。

一般に観葉植物は、夏には積極的な水やりが必要とされるものの、冬に水を与えすぎるとよくない、とされている。しかし後者の「与えすぎない」がどれくらいの「与えちゃダメ」なのか、よくわからない。そして枯れゆく観葉植物を見るのはつらい。植物ひとつまともに育てられない愚か者と、人間性を否定されているような気がしてしまう。早く春がきてほしいなあ、と思うし、いっそのことオフィス内の観葉植物はすべてフェイクグリーンでもいいんだよなあ、とも思う。


② 馬油を塗っている。

最近、ハンドクリームやフェイスクリーム、またリップクリームの代わりに馬油を塗っている。よく伸びてくれるし、匂いもなく、保湿力も高い。風呂上がりの顔に塗っておくと、翌朝になっても肌がしっとりして非常に調子がよろしい(べたべたはない)。おっさんのスキンケアなんて誰も興味はないだろうが、おっさんだからこそスキンケアが必要というか、若いころみたいに自然天然神秘の力にまかせるわけにはいかないのだ。でも馬油って、要はラードみたいなものなんだよなあ。ラードを顔に塗るのは嫌だなあ。逆に、馬油で炒めたチャーハンも嫌だなあ。


③ ダウンジャケットだらけだ。

冬の電車に乗っていると、また通勤路を歩いていると、ダウンジャケットやダウンコートを着た人だらけなことに驚かされる。かく言う自分もほとんどの日をダウンジャケットでぬくぬく過ごしているのだから、それ自体をどうこう言うつもりもない。ダウンジャケット万歳だ。ただし、ぼくにはダウンジャケットを見るたびに思い出す朝の景色がある。

ずいぶん前の冬、北京を訪ねたときのこと。せっかく中国に来たのだから朝粥を食べようとホテルを出た。さすがに冬季五輪を開催できる都市だけあって、北京の朝はべらぼうに寒かった。当然のようにダウンジャケットを着込んだぼくは、白い息を吐きながらホテルの近辺をうろついた。

すると、当時はまだ普及していなかったのか、北京のみなさんはほとんどダウンジャケットを着ていなかった。代わりに着ているものといえば、布団のように分厚い半纏。いや、正確には半纏よりもぜんぜん風を通さないつくりの、布団でつくったジャンパーみたいな防寒着である。「すげえな。まるで布団だな」と思った瞬間、気がついた。

「ダウンジャケットも、羽毛布団を着てるだけじゃん」

以来、ダウンジャケットを着るたびにぼくは「おれはいま羽毛布団を着ているのだ。寒いはずなどあるわけないのだ」と思うようになった。防寒的には頼もしくも、ファッション的にはちょっと心細い発想である。みなさんも街でフランス製の高級ダウンジャケットを見かけたら、「へっ。あんなのただの羽毛布団じゃねえか」なんて毒づいてみたらいいと思う。イソップ童話の『すっぱいブドウ』に出てくるキツネみたいなさみしさを味わえるはずだ。


以上、どうでもよろしい冬のお話である。