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NHKに見る、話しことばと書きことば。

新聞各社の電子版とは別に、NHKニュースの電子版を見ている。

公共放送ということもあってか、批判や攻撃のトーンが薄く、またみずからの主張を声高に訴えることもしない。よくも悪くもお行儀がよく、なるほどNHKだなあ、と思う。

けれどもまあ、ちょっと読んでもらえばわかるように、このニュースサイトが醸し出す「お行儀のよさ」は、NHKの報道姿勢によるものというよりもむしろ、文体の問題だったりする。放送局という母体がそうさせるのだろう、ここでは原則的にニュース原稿が「ですます調」で書かれているのだ。

新聞は通常、「である調」で書かれる。最大の理由は、紙幅の都合だ。かぎられたスペースのなかに、できるだけ多くの情報を、破綻なく詰め込んでいくことが新聞社の使命であり、記者の腕の見せどころだったりする。

一方でNHKの場合、視聴者に向かって語りかけるように原稿は書かれているし、発話用の原稿であるかぎりにおいてそれは「ですます調」になる。そしてまた、紙幅の制限があるわけでもないWEB版が、放送のときと同じ「ですます調」になるのも自然なことだろう。


それで、だ。

放送局による「ですます調」と、新聞社による「である調」。ものすごく乱暴に、これを「話しことば」と「書きことば」というふうに分けてみたい。いろいろ異論はあるだろうけれど、ほら、いちおうNHKは放送局で、テレビもラジオも話しことばだし。それで新聞は書きことばだし。

話しことばとは、動的なことばである。ライブのことばと言ってもよく、そのぶん生き生きとした活気に満ちているはずのことばである。

他方、書きことばとは、静的なことばである。石に刻まれたような、過去的な、スタティックであるはずのことばである。

ところがなぜかNHKニュースのWEB版に並ぶ「ですます調」の話しことばは、とても静的な印象がある。ライブ感に欠いた、いかにも過去(たとえば今日の朝)に放送されたニュースの原稿です、といった趣がある。

おそらくここには「余計なことは言わず、必要なことだけ伝える」という、文字どおりに報道機関としてのお行儀のよさと、あとは「話しことばに文法的な正確性を求めすぎると、話しことば本来の躍動感が損なわれてしまう」という欠点とが関わっているのだろう。

その証拠に、というわけではないものの、NHKニュースのWEB版にはさまざまな特集記事があり、こちらは「である調」で書かれている。いかにもリズミカルな文章で、おもしろい記事、読ませる記事も多い。いつも「ですます調」で書いてる記者のみなさん、「である調」で思いっきり書きたかったんだろうなあ、なんて思ってしまう。

ぼくも「ですます調」で書くの、あんまり得意じゃないんですよねー。