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ドラッグストア・カウボーイ。

中学生のころ、ホームセンターが好きだった。

だだっぴろい駐車場があり、入口付近に園芸コーナーがあり、ネジ、ペンキ、木材、工具なんかがたくさん置かれた、家庭人たちの「趣味と園芸」を体現したような空間である。ひまと元気を持て余した中学生。なにを買うわけでもないのにホームセンターに出かけてはぶらぶら時間をつぶし、申し訳程度に油性ペンなんかを買って満足していた。

都心で暮らすようになって、残念だなあと思うのは近くにホームセンターがないことである。ほしいものがあるわけじゃない。わざわざ休日をつかってお出かけするほどでもない。ふらっと立ち寄って、ぶらっと時間をつぶす。そしてわけもなくワクワクするあの感じ、いわゆるショッピングモールじゃ得られないんだよなあ。

と思っていたのだけど最近、自分がまったく同じよろこびをドラッグストアで得ていることに気がついた。

うちの近所には、駐車場付きのドラッグストアがある。そこそこ広く、医薬品だけでなく食料品もたくさん売っている。猛烈に行きたいわけではないけど、行けばぶらぶら時間がつぶれるし、まだストックがあるのに薬や日用品を買い求め、家に帰れば「ああ、あれを買うの忘れた」となにかを後悔する。けれどもその後悔は「また今度でいいか」と思える程度のものでしかない。平屋建ての外観、ぞんざいな陳列、適度に入り混じるバッタもん。考えれば考えるほどドラッグストアはホームセンターだ。


もうひとつ、ホームセンターとドラッグストアに共通項があるとすれば、そこで扱う商品の多くに、「ちいさな発明」が込められているところだろう。たとえば延長コード。鼻の角栓をとるシール。椅子の脚に貼るクッションシート。ものすごい深剃りができる五枚刃カミソリ。こうしたちいさな発明品のちいさな驚きが、ぼくをホームセンターやドラッグストアにつれていく。

一時期の新書コーナーも、ホームセンター的な空間だったんじゃないかなあ。