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おれもお前もとんかつ野郎。

こういう先入観はよくないぞ、と思った。

本日、会社近くの大衆的なとんかつ店で昼ごはんを食べていたときのこと。隣の席にスーツ姿の男性ふたり組が座った。風体、また会話の内容から察するに上司と部下の関係にあるふたりらしい。すると上司らしき男性が、部下らしき男性を、軽く説教しはじめた。ちょっと、部下を小馬鹿にしたような口ぶりの説教だった。

「なーに偉そうに説教してやがんだ、てめえ」

とんかつを頬ばりながら、ぼくは思った。せっかくのとんかつを前に、説教なんてパワーハラスメントの現場を見せられた不快感も、当然あった。しかしながらそれ以上にぼくの心を占めていたのは、

「お前がどんだけ偉いんだ」

の感情である。偉くもなく、かしこくも有能でもない、ただ年功序列の慣習で上にいるだけの男が偉そうにしているさまに、腹が立った。そしてぼくが彼(上司)の偉さをあなどった最大の理由は、

「こんなとんかつ屋でとんかつ食ってやがるくせに」

であった。しかしながら考えてみると、隣席の話を盗み聞きして勝手に憤慨しているぼくもまた、こんなとんかつ屋でとんかつを食ってるとんかつ野郎である。彼(上司)のことをあなどっている場合ではない。


しばしばソーシャルメディア上で、「マクドナルドで女子高生がこんな話をしていた」とか「ファミレスで大学生がこんな話をしていた」などの投稿がバズることがある。ぼく自身、「ドトールでこんなカップルを見た」的な投稿を、過去にしたことがある。

いまさらのように気づいたのだけどもぼくらは、どこか「隣の席の客」をあなどる傾向がないだろうか。とくに居合わせた店がファストフードやファミレスであった場合、どこか「隣の席の客」を下に見るというか、愚かなる民として処理する癖がないだろうか。おのれもその店で胃袋を満たしていたにもかかわらず。

そんなわけで本日のぼくは、とんかつを食べながら一度軽く憤り、そののちに「こういう先入観はよくないぞ」と反省したのでした。この上司、もしかしたらすごい人なのかもしれんぞ、と。

まー、彼はただのとんかつ野郎だと思いますけどね。