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あの人はいま、どう思っているんだろう。

最近ずっと、ハリルホジッチさんのことを考えている。

なんだかもはや「なかったこと」のようになっている彼のことを、しつこく考えている。もともとぼくは、ハリルホジッチ支持者ではまるでなかった。彼のやろうとしているサッカーの半分も理解できなかったし、ある意味では素直な、そして尊大な態度も好きではなかった。最終予選のどこかで解任されていたら、「まあ、そうだよね」と受け入れていたと思う。違和感が拭えないのは、解任時期とあいまいにもほどがある解任理由、それだけだ。

ハリルホジッチさんが就任して間もないころ、けっこう新鮮なおどろきを覚えたことがある。たしか吉田麻也選手だったと思うけど、ハリルホジッチの印象を訊かれた彼は、「ヨーロッパのなかでは少し古い、保守的なタイプのサッカーをやろうとしている」といったニュアンスで新監督を評していた。

そっかあ。日本人選手が置かれた状況は、もうクラマーさんの時代と違うのはもちろん、オフトの時代とも、トルシエの時代とも違うんだ。

代表監督として外国人指導者を招き、そこでようやく「世界の最先端」に触れていた時代はとっくに終わっていたんだ。みんなヨーロッパのクラブチームで、それぞれに「ほんとうの最先端」に揉まれているんだもんな。ハリルホジッチさんのサッカーを古く感じてしまうほどに。……これは、そこそこおおきな世代間ショックだった。

報道で漏れ聞こえてくるところを総合すると、ハリルホジッチさんに対しては、海外組ほど反発が強く、国内組ほど忠誠心が高かった印象がある。もしかしたらそれは「10年前の戦術しか語ってねえくせに、おれたちをガキ扱いするんじゃねえよ。こちとらペップやモウリーニョやクロップと闘ってんだよ、毎日」な反発もあったのかもしれない。


なんかなぁ、ハリルホジッチさんはどんな気持ちでコロンビア戦の勝利を観たんだろうって、ずっと考えてるんですよ。応援しなかったはずはないし、かといって「そら見たことか」を言いたい気持ちもあっただろうし、もちろん彼の蒔いてきた種は確実にいまの代表に生きているはずだし、それが「なかったこと」にされるのもわかっているはずだし、けれでもどこかで、選手が「ヴァヒドのおかげです」なんて言ってくれることも期待していないはずがないし。

勘当した息子の活躍を風の便りに聞く父親、みたいな軒先の姿が浮かんで、ちょっとだけ切なくなるんですよね。

教祖猫を噛む。
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ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp

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