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サイゼリヤが教えてくれること。

サイゼリヤが好きだ。

いたって平凡な舌を持つぼくは、吉野家も大好きだし、ココイチも好きだ。ドトールもおいしいと思うし、疲れた深夜に食べる富士そばも最高である。それでもやはり、サイゼリヤの「好き」はちょっと別格のような気がする。グルメな方々には笑われるかもしれないが、「おいしい」のほかに「たのしい」があるのだ、サイゼリヤには。

正直な話をすると、サイゼリヤで提供されるパスタやピザを「おいしい」とは、あまり思わない。価格の安さを差し引いても、もっと満足度の高いパスタやピザはいくらでもある。あるいはハンバーグ定食みたいなやつも、ほぼ食べることがない。サイゼリヤのおいしさ、そして独特の「たのしさ」は、むしろサイドメニューのほうにあるのだ。

たとえば辛味チキン。ルッコラの入ったイタリアンサラダ。ラムの串焼き。エスカルゴ。プロシュートに、ポップコーンシュリンプ。これらにシナモンプチフォッカのジェラートのせでも食べれば、もう大満足である。いま挙げた料理は、どれも間違いなく「おいしい」。そして次々にこれらが運ばれてくるテーブルは、とっても「たのしい」。


これをコンテンツの文脈で考えるなら、まんなかを貫くメインストーリー(サイゼリヤでいうパスタやピザ)は、特段おもしろくなくてもいいのかもしれない。お客さんが怒り出すほどまずいものを出したらダメだけど、まあ「普通」のレベルに達していればいいのかもしれない。大事なのは、細部だ。メインストーリーの両サイドに、「ひとくちサイズのおいしいもの」がたくさん並んでいると、そのコンテンツはとてつもなく豪華でたのしいものになる。細部(サイドメニュー)のつくり込みをサボってはいけないのだ。メインディッシュよりもずっと真剣に、細部をつくる必要があるのだ。


このニュースを読んで、そんなことを考えたのでした。

“サイゼリヤは14日、イタリア料理の新業態を11月に開業すると発表した。広さを通常の「サイゼリヤ」の半分程度に抑えた小型店で、賃料や設備が少なくてすむ。同社の人気メニュー「ミラノ風ドリア」を中心に約20種類を扱い、需要が伸びる宅配や持ち帰りサービスにも対応する。コロナ下で客足の戻りが鈍るなか、新業態を多店舗化の新しい柱に育てたい考えだ。”


どんな原稿にも、辛味チキンやエスカルゴが必要だよねー。