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締切のエブリデイ。

こういう機会でもないと、書かない話かもしれない。

20歳の自分に受けさせたい文章講義』という自著デビュー作が、24刷となった。ぼくは自分のことを、作家ではなく、職業ライターだと考えている。自著の刊行にあたっても、その考えは変わらない。仕事として引き受けているかぎり——自分ではなく——出版社や関係各所に、儲けを出さなければならないと考えている。編集者から貴重な機会をもらい、出版社から投資してもらった、そのリターンを返すことが自分の責務だと考えている。なので、部数はもちろんのこと、こうしてたくさん版を重ねていくことは自分の仕事を果たせた実感があり、とてもうれしい。

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あとがきの日付を見ると、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』という本は、2011年に書かれていることがわかる。その年のたしか夏、編集者の柿内芳文氏がぼくを訪ねてきた。当時彼が編集長を務めていた星海社新書のウェブサイトに「現役ライターに訊く、本物の文章術」みたいなインタビューを掲載したい、話を聴かせてくれ、と言うのだ。自宅近くのファミレスでインタビューに応じるなか、彼は「これをウェブのコンテンツで終わらせるのはもったいない。本にしましょう!」と言いはじめた。

何年も前から知り合い、いつか一緒に本をつくろうと言い合っていた彼と、はじめて本をつくることになった。


読み返すとこの本、なかなかいい。

いくつかの致命的欠陥があり、無駄な暑苦しさに満ちあふれているものの、欠点をおぎなってあまりある長所が、この本にはある。ひと言でいえばそれは、「逃げ」のなさ、だ。なにものからも逃げることなく、批判のすべてを受け止める覚悟で、言い訳も、方便としての謙遜も避けて、傷を負うことを承知で書いている。その姿勢については、いまの自分が読んでも「見習わなきゃなあ」と思わされる。


さて。


本日また柿内芳文氏がやってきて、先日持参したスケジュール表を完成させて帰っていった。それぞれの項目が付箋に記され、刊行日と部数までもが、そこに書き記されている。ちなみにこの部数は「最低限、ものすごく客観的に見た、控えめに見積もった数字」なのだそうだ。

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プレッシャーをかけるつもりはない、と彼は言う。