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たまにはクルマの話でも。

あまり書かない話をしよう。クルマの話だ。

大学を卒業してメガネ屋さんに就職したとき、ぼくはまっさきに軽自動車を買った。クルマが好きだったわけではない(だったら軽自動車にしていないだろう)。ただ、カーローンでも組んでみずからを縛らなければ、すぐに退職しちゃう自信があったのだ。せめてクルマのローンを払い終わるまでは、辞めずにいよう。がんばってみよう。そんな決意のあらわれとして、ぼくはスバルのヴィヴィオ・ビストロという軽自動車を購入した。

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このクルマを手放してから約10年後、フィアット500を購入し、そのまた10年後くらいに現在の mini へと乗り換えることになるのだけれど、なんだかぼくのクルマの好みは一貫しているような気がする。


■ 魔法のコインパーキング。

緊急事態宣言が出されて以降、どうやっても自宅で原稿を書くことのできないぼくは、クルマ通勤する機会が増えた。やってみると意外にたのしいもので、いまでもけっこうな頻度でクルマ通勤している。駐車先は当然コインパーキングだ。終日停めているとそれなりの金額に達するけれど、終電を逃してタクシーで帰宅するよりは安い。まあ、もうちょっとのあいだはクルマと電車の両方を使っていこう。

ある日、仕事を終えて会社近くのコインパーキングに向かった。いつものように清算すると、いつもとまったく違う料金が表示された。13時間くらい停めていたのに電光パネルには「1400円」と表示されている。機械の故障だろうか。あの、駐車スペース4番は、コンピュータの不具合かなにかによって上限1400円までしかカウントできないのだろうか。そんなコンピュータ社会の落とし穴が、おれのコインパーキングに出現してしまったのか。よーし、明日からは毎日4番に停めてやる。駐車料金を、浮かせまくってやる。

帰宅後、家の人にそれを伝えた。すると、なにを大騒ぎしているのだ、という冷静なトーンで言われた。それはあなたの隣、3番だか5番だかに停めていた人が、間違って4番ぶんの料金を一度清算してしまったのだ。そこから再び駐車料金がカウントされ、結果1400円になったのだ。魔法でもなんでもない人為的ミスなのだ。

おれはなんと阿呆助なのだろう。コンピュータ社会の落とし穴など、存在しなかったのである。


■ 屈辱のエンジンオイル。

昨夜、クルマで帰宅している途中、はじめて耳にする警告音が鳴った。「エンジンオイルが最低レベルに達しています。いますぐエンジンオイルを補充してください」。カーナビゲーションシステムの画面には、そんな警告文が表示されている。おいおいおい。このクルマ、先月車検に出したばかりだぞ。そこそこの料金、支払ったばかりだぞ。

しかも困ったことに、ぼくはエンジンオイルの補充とか交換とか、そのへんのカーリテラシーが小学生レベルに近い。時間もまったく深夜で、かろうじて知っているいくつかの24時間営業ガソリンスタンドに立ち寄るも、当然ながらスタッフはいない。ああ、どうしたらいいんだろう。とりあえずそのまま帰宅して、「エンジンオイル 低下」「エンジンオイル 漏れ」、あるいは「エンジンオイルとは?」などのキーワードで検索しまくった。

今朝から車検に出したディーラーに電話して、保険会社につながれて、いろいろあった挙げ句にクルマはレッカー移動され、代車をあてがわれ、たぶんいまごろ点検・修理がなされている。なんだかもう、くたくただ。

そして思った。これが彼女と一緒に海辺をドライブ、みたいな場面じゃなくてよかったなあ、と。いまどきクルマなんて流行らないとはぼくも思うけれど、とはいえクルマのトラブルに弱い男は、かっこわるいものだ。昨夜から今朝方にかけてのぼくは、とんでもなくかっこわるかった。