その人を育て上げたすべてのものたちへ


補足として:
最近考えていたことと、ルックバックとその感想などを読んで考えたこと。
恋人とあまり良くない別れ方をしたのと世間の状況で、精神滅茶苦茶な一年を過ごしていた時、
突如お笑いの世界に激ハマりしてなんとか人生に復活した私の話です。


「幸せ!」と思える瞬間を迎えた時に、
「これまでの人生で私は何一つ間違えなかった」と思うようにしている。
自分への期待値が高すぎて自己肯定感が低く、さらに記憶力が無駄な部分にも発揮される私は、放っておくと物心ついてから現在までの辛かったこと悲しかったこと悔しかったこと恥ずかしかったことを思い出して、自分のすべてを否定してしまう。
だから「幸せ!」と思えることがあった時や、好きな人やものとの出会いに際し、その時点までの自分の選択すべてをいったん肯定してあげる。ずっと前のある朝、玄関を出る時に左足から踏み出した、その選択すらも、違っていたら私は今ここにいないかもしれない。何かを話す話さない、誰かと会う会わないなんて選択ならなおのことだ。

だから好きな人の経験したことや、考えてきたこと、考えていることを聞くのが好きなのかもしれない。
どんなことであっても、そのものたちが、私が目にしているその人を作り上げて、今ここに立たせてくれているのだと思うから。

私がとても好きな漫画に、萩尾望都先生の『アメリカン・パイ』という作品がある。
主人公の台詞の、

「愛の本にバイブルに 神さまにロックにダンス
 なにが魂を救えるかわからんです」

という部分が最近ずっと頭の中を巡っていた。
「なにが魂を救えるかわからない」というのは本当で、私はひどく傷つけられた後、これまで殆ど接点がなかった「お笑い」「芸人」に救われた。
そして今までの自分を省みて、誰かが愛して大事にしているものを、それが何であろうと否定しないようになりたい、と思った。

その一方で、作品や表現が心に残すものより、現実で付けられた傷の方がずっと重くて醜くて癒えないものだということを
どうしたら飲み込んで生きられるだろうと思った。
精緻に描き上げられた作品を読んで、"感動"して、その波が引いたあとで、過去も現実も何一つ変わらないことに気づく。
でもその波は、誰かの傷を少しだけ舐めたかもしれない。足を一歩進める手助けになったかもしれない。裸足の足を刺しただけとしても。
その足が私のものじゃなかっただけ。

ただ、引き返せないこと、誰かに傷を残したこと、終わってしまったことが終わったままであることは変えられない。

私はずっと、災害や事件や事故やそのほかの酷いこと、それによって傷つけられた人を自分の糧にすることに抵抗してきた。
人の傷や、時として死であるそれらが、他人の糧になるために発生したことにされてはいけないから。

だけど、目の前の舞台で私を笑顔にしてくれるあの人にも
二度と消えない傷や、畏れや、過ちみたいな、生きてきた中で逃れられなかったものがきっとあって、
そしてそれらを抱えているからこそ、私は今のその人を見つけられた。
私には、その人を育て上げたすべてのものたちを肯定して、舞台に立ち続けてくれることを尊ぶしかできない。
そのこと自体が、相手と私とを決定的に隔絶させると知っていたとしても。

米津玄師『カムパネルラ』の歌詞に、

光を受け止めて 跳ね返り輝くクリスタル
君がつけた傷も 輝きのその一つ

という一節がある。

歌詞本来の文脈とは外れるかもしれないけれど、
言葉の意味の連なりを追って、私が見せてもらっている煌めきの正体に思いを馳せると、それでもやっぱり生きることは悪くないのかもしれないと少しだけ思う。束の間。
だけど私もやっぱり、彼らを人生ごと消費しているという罪悪感は、いつも薄く飲み込めないままにある。
坂口安吾『青鬼の褌を洗う女』の「人間侮蔑」ということばが時折過ぎる。そんな言葉を連想すること自体が、私が傲慢である証拠なのかもしれないけれど。

先日のライブで、「ノスタルジック」と京極さんが言ったのに対して、「ノスタルジック? エモいみたいな?」ってしゅんさんが返して、私はこの人の世界の飲み込み方というか、整理の仕方がとても好きなんだよなと改めて思った。
そして単純に面白すぎる。絶対にいつも笑わせてくれる。
9番街レトロって私にとって本当に面白くて、こんな面白いコンビを知れたラッキー計り知れないなって思う。
好きな理由は本当にシンプルなんだよね。

私をもう一度掬い上げてくれたのは9番街レトロだし、
回復しようと思えるところまで運んでくれたのはおこたしゃべり。
それだけが変わらず、私にとっての事実としてあるから、
彼らのこれからの人生はせめて、出来るだけ痛いことや苦しいことの少いようにと祈っている。

でもそんな悲愴な気持ちで応援するのなんて重いだけだから、
これからもただ笑っていたいね。たくさん笑わせてくれよな!
色々言ったけど今の私は大きな笑い声と、いくつライブに行っても疲れない体力が欲しいです。
目指せポップなファン🙋‍♀️愛してナンが悪い!?の精神だ🙋‍♀️
私はいつだって真剣なんだよ🙋‍♀️



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?