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母とまーちゃんの事

赤色のクレヨンをティッシュに
ちょんちょんと色づけて
塗り絵の女の子の頬っペに
そのティッシュをぽんぽんと
軽く叩くように赤色を打っていく。
塗り絵の女の子の頬っペは、たちまち
ふわっと色味を帯びて、立ち上がってくる。

小学3年生の夏休み。
外遊びから帰ってくると
知らないおじさんと、
わたしと同じ年頃の女の子が2人いた。
「ママのお兄ちゃん、まーちゃん。」
母からそう紹介された。
女の子2人は
まーちゃんの娘ということだった。

母方の実家には何度も遊びに行った。
祖母と、未婚の叔父叔母がいた。
「fuーちゃん、こんにちは」
まーちゃんはこの辺のおじさんとは違って
ちょっと艶っぽくて格好良かった。
まーちゃんには会ったこともないし
従姉妹にあたるはずの女の子達の事も
これまで聞いたことがなかった。

母とまーちゃんと女の子達の間には
家族のような和やかな空気が漂っていて
わたしも何となくそのほんわりとした
空気の中に包まれていた。

“ティッシュぽんぽん”は
この時、まーちゃんが教えてくれたもの。

中学生になった頃、女の子2人のうち
お姉ちゃんの方が1人で、引っ越した
わたしの家を訪ねてきた。

それ以降、
まーちゃん達に会うことはなくなった。

それ以降、
わかったことがあった。

実家の祖母は母とまーちゃんの継母であること
まーちゃんは継母と上手くいっていないこと
まーちゃんは母の大好きなお兄ちゃんであること
まーちゃんは病気で大阪で亡くなったこと
娘2人は知り合いが引き取って育てるになったこと

わたしも、たった一度しか合ったことのない
まーちゃんが今でもずっと大好きだ。
あの時の高揚感は、今も、まだ、ずっと、
心の底流に残っている。
まーちゃんが大好きだ。

                  fumi










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