「たんぽぽ殺し デーブリーン短編集成」 アルフレート・デーブリーン
粂田文・山本浩司 訳 河出書房新社
三鷹水中書店で購入。
第一短編集「たんぽぽ殺し」は1912年、第二短編集「ローベンシュタイン人のボヘミア大移住」は1917年刊行。
第一短編集「たんぽぽ殺し」
冒頭の「帆走」を三鷹連雀公園で読む。現代の「さまよえるオランダ人」?ブラジル人らしいけど。
(2020 11/08)
2編目。「踊り子とカラダ」を。
踊りが上手いけど、ちょっと?傲慢な女の子が、病気になって自分の身体を他人のように憎しみを持って捉える。
この作品も医者でもあったデーブリーンの実体験と、同情がまるでない冷めた毒、それに文体実験が加わる。
(2020 12/05)
今日は「アストラリア」。カルト宗教にかぶれた小男の話。
(2021 01/31)
久しぶりに進める。「死神の助手」と「ドア違い」。
どちらも人が死に(前者なんて町中六百人死んでしまう)、陰惨かつ不可解(特に後者…何が引き起こされたのかわからない)、なのに落とされてしまう。愛の不可能性?
前者はニューヨーク郊外(南北戦争前)の葬儀屋と、その百年前に死んだ少女の生き返り死神の話。別に枕元に死神がいたわけではない…でもこの話も少女の筋と葬儀屋の筋がどこで絡まったのか不明。
後者は旧ユーゴ辺り?の辺境に配属された大尉がいきなり町のとある家に押し込む話。「キスメト」(運命)というのが掛け声らしいが。タイトルに「ドア違い」とあるし、何かの間違いか断絶があるみたい。この断絶を味わえないとこの短編集は楽しめないかも。
困った短編集である(笑)…
(2021 07/03)
「たんぽぽ殺し」
本の表題作であり、第一短編集の表題作でもある「たんぽぽ殺し」。この短編集の今まで読んだものだと「アストラリア」辺りに近い、ささいなことから狂気が芽生える話。散歩中、たんぽぽの茎?が杖に絡まったことから杖でたんぽぽの花を殴りつける。ここから始まったどこをどう巡っているのか、改悛と欺瞞と征服欲みたいのが入り混じったものが彼の中を駆け巡る。
(2021 07/04)
「青ひげ公」
昨夜久しぶりに、夜寝る直前に「青ひげ公」を読んだ。デーブリーンの故郷のような北の海の町と荒野、荒野に城を建てた男と、次々死んでいく付き合った女達。コミュニケーション不可能性というデーブリーンお馴染みのテーマだけど、最初の頃は戸惑ったこともあったが、慣れてくるとその味もそれで楽しめてくる。
(2021 10/26)
「第三の男」
昨夜の分、これも男女の理解不可能性…というか、この男がなんでそう行き止まりばかり目指すのかが全くわからない…でも、ここまで重ねられるとクセになりそう。医者でもあるデーブリーンはそういうのをたくさん見てきたのだろう。
行き止まりに突っ込む人なら、周りにも多く見受けられるし…
(2021 10/27)
「うぬぼれ男の手記」
昨夜の分。
この(第一)短編集のテーマを、ここでは一番明確に出している。
続いて今日の昼「修道女と死神」(逆かも)を読んで、やっと第一短編集分を読み終えた。と言っても、あと2/3残っているのだけれど。この話はこれまでのよりまた短く、「死」というものを描いて切り取ったカリカチュア的な作品。
(2021 10/30)
第二短編集「ローベンシュタイン人のボヘミア大移住」
昨夜の寝がけから、第二短編集「ローベンシュタイン人のボヘミア大移住」に入る。最初の「ドレスデン=ブカレスト線」は今までより御伽噺とか神話とかそういう外枠なく直接的に語る。内容は同じく男女の愛の不可能性。母娘と騙そうとする男。母が喪に服していて、娘が婚約直前というのもなんか意図があるのだろう。
(そもそも、ブカレストとドレスデンを結ぶ列車があったのか…)
(2021 11/01)
昨晩は「秘密裁判」。宿屋の男がワイン泥棒?に対抗するため、ワインに毒を入れて殺した。と、その裁判。
(2021 11/08)
デーブリーンの短編集成から「戦争、戦争!」を昨日と今日に分けて読んでいる。筋もわかるようで飛んでいるような作風。今までの短編の中で、一番「ベルリンアレクサンダー広場」の書き方に似ている、と思った。というか、ここでの文体実験が、後に「ベルリンアレクサンダー広場」に結実したのか、とも。
でも、あと4、5ページくらい残っている…
(2021 11/11)
「戦争、戦争!」の残りから。テンション高い語り口の合間にこういうの入っているとはっとする。しかも「思わざるをえない」だし…
(2021 11/12)
「助任司祭」…20ページちょっとの作品なのに、何故か一昨日からの3日かけて読む。寝がけに読もうとして、眠気に耐えられなくなって翌日回し(昨晩の場合)…
ここ以外にも、この作品には何か息を吸うことに関する執着した表現が何箇所かある。特に引用したかった文が見つからない…
助任司祭が女たちに翻弄されているのとみるのか、助任司祭が女たちによって解放されているとみるのか。これら短編読んでから「ベルリンアレクサンダー広場」を読めば順番としてはよかったのにね。あの作品にもすれ違うばかりの男女がよく出てきていたと思うし。
(2021 11/16)
「夢遊病の女」(昨晩読んだ分)
これも幻想的というか安映画的?というか、自分が生まれた時の(母が通りすがり?の男に乗られて)満月を、それを見ると夢遊病化してしまう…デーブリーンは医者として、そういう患者をよく見てきたのだろうか。
(2021 11/22)
今日は「天国の恩寵について」と「ヒンツェルとおてんばレーネ」。
前者はベルリン郊外の貧しい老夫婦と、ヒモとその女的な人々の話。後者はおとぎ話チックにやっつけようと思った相手に逆に籠絡されてしまう話。
前者冒頭。物語全体の語り口とはちょっと趣が異なる。
(2021 11/23)
「巨人ヴェンツェル」を読む。ドイツのだいだらぼっちみたいな話。でも、町の人間たちにばかにされて捕まえられ、最終的には石化してしまう。
(2021 11/25)
「クロコダイル」
クロコダイルになった少女ユーリアの物語。
「姿勢を立て直す」のと「背筋を伸ばす」というのは、表現変えただけで同じことをやっているのでは、と思う。
このあと、クロコダイルのユーリアの歩き方でも似たような表現が(確か)出てきた。読んだところぺらぺらめくっていたけど、見つからない…
そういえば、ユーリアの父の「海の貴族」も「窓枠抱えたように歩く」とか表現されてたっけ。
この短編集全体を取り巻く相互理解不可能性。
ユーリアはクロコダイルの子を死産したと言って、村外れの赤毛の男の家に戻る。
(2021 11/26)
昨日は「リットホーフの幽霊」と「伯爵になった下男」を読み、それから今日「ローベンシュタイン人のボヘミア大移住」を途中(p339)まで。
ボヘミアの中の小国を領有しようとするのはナチスのズデーデン地方の併合を、その中の話し合いで「ボヘミアは遠いからその間も占領してしまえ」というのはダンツッヒ回廊を思い出させる。とそんなこんなの政治的揶揄もあるのだが、書いてある中身は相変わらず馬鹿馬鹿しい記述。この記述の中の何パーセントくらいは当時のドイツの雰囲気を醸し出しているとするならば…
(2021 11/30)
上記中編読み終わり。鍛冶屋の実演を教えてくれる予定だったよそ者に一泡ふかされたり、床屋が稼ぎを入れるのに使っていた煙道?からお金が無くなり空が見えたり、雷を捕まえられると煙突に上りそこから汚物を落として捕まえた雷としててんとう虫を見せたり、隣のボヘミア人の村に攻撃を仕掛けたら返り討ちにあったりとか、そういう日本でいうと笑い話っぽいネタが散々繰り広げられる。
でも、最後には隣村とも仲良くなって、ローベンシュタイン人の性質は埋没してしまう…
いろんな意味でなかなか難物だったこの短編集成。笑い話とか破滅に進む話とかを文体含めてただ楽しめればそれでいいのだけれどね…
(2021 12/01)