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「遠い女 ラテンアメリカ短篇集」 フリオ・コルタサル 他

木村榮一・井上義一・入谷芳孝 訳  文学の冒険  国書刊行会

読みかけの棚から
読みかけポイント:これも昔読み通したものの再読。再読はだいたい半分くらいまで。

夕食会 アルフォンソ・レイエス
「流砂」より オクタビオ・パス
チャック・モール カルロス・フェンテス
分身 フリオ・ラモン・リベイロ
遠い女 フリオ・コルタサル
乗合バス フリオ・コルタサル
偏頭痛 フリオ・コルタサル
キルケ フリオ・コルタサル
天国の門 フリオ・コルタサル
未来の王について アドルフォ・ビオイ=カサーレス
航海者たち マヌエル・ムヒカ=ライネス

夢の変容、文学の変容 木村榮一


ムヒカ=ライネス「航海者たち」


「ボマルツォ公の回想」読んでいるので、ムヒカ=ライネスの他の作品気になった。「ラテンアメリカ怪談集」にある「吸血鬼」(だっけ?)は1年ちょい前に読んだばかりなので、「遠い女」収録の「航海者たち」を読む…
(読んだのは昨夜)

「航海者たち」はだいたい三部構成、はじめに主人公ロブロとポルトガル人、イタリア人、アンダルシア人の三人組と五十人の狂人…という面々で航海に出かけるまで。続いて航海記(嵐、毛むくじゃらの女王に率いられた原住民、知恵の泉と若さの泉…飲み過ぎて子供から赤ん坊になってしまう)、そして最後に聡明な子供達の帰還と彼らの共同体そして国王との戦いへと。
「ボマルツォ公の回想」と共通する点もちらほら。中世からルネサンス期の雰囲気、魔術のテーマ、幻想というかSFというかの要素。この作品での諧謔味は、「ボマルツォ公の回想」でも微かにだが随所に見られる。
もっと翻訳されれば、結構需要(自分含め)ありそうな気がする…この人。
(2021 01/25)

リベイロ「分身」

昨夜はリベイロ「分身」を。
この作家ももっと需要ありそう、というか日本で人気出そうだけど(「ラテンアメリカ怪談集」にも他作品有り)。
「分身」は、まあお見事というか、コンパクトな中に非常によくできた作品というか…
なぜか、画家らしい語り手はロンドンで生活。分身は地球の堆積点にいるという、どこからか聞いた話を確かめようとオーストラリアへ向かう(ロンドンの堆積点ってそこでいいのだっけ?)。
そこでお気に入りの娘と共同生活云々をして別れて、ロンドンに戻ってみれば、なんだか何者かがその部屋で生活していたような…そこで作成途中だった絵を見てみれば、絵は完成していて、ただオーストラリアで見た黄色い蝶が羽ばたいていた…というお話。
…こういう話、何杯でもおかわりできる(笑)
(2021 01/28)

レイエス「夕食会」とパス「流砂」


ラテンアメリカ短編集「遠い女」から、アルフォンソ・レイエス「夕食会」と、オクタビオ・パス「流砂」より。
この短編集自身はたぶん2007年頃に読んでいるのだけど、ムヒカ=ライネス記念?で、もう一度…どこまで読む?

レイエスは「幻想真っ只中」!という直前で切り、語り手が入れ替わっているようないないようなという手法が見事。
一方、ここでのパスは、意外にも?心理的考察を見せる。

 目を開いた時から、自分のいるべき場所は今、ここではなく、自分のいないところ、いや、これまで行ったことのない場所だということはわかっていた。
(p32)


こういう状態はなんらかの症状のさきがけみたいなものだったような。で、その「自分のいるべき場所」に自分が行けば、「自分が行ったことのない場所」ではなくなるから、無いものねだりなんだよね。
今日はこの文がある「急ぎ」まで。
(2021 02/12)

「遠い女」(書名)から、コルタサル「遠い女」(表題作)

 その後、自分の中に閉じ込もって苦しみに耐える。自分にこう言う。「私は今、凍てついた橋を渡っているけど、破れた靴の中に雪が入ってくる」実際にそう感じているわけじゃないけど、そうだということははっきりわかっている。
(p80)


ブダペストに自分の分身がいると夢想する娘の日記形式の短編。実際に4月にブダペストを訪れ、橋の上で分身と出会った時…
(ここからはネタばれになるので、自粛…)
(いつもネタバレ気にしてないのになぜ…)
(2021 03/29)

コルタサル「乗合バス」

昨日だったか、その前だったか、コルタサル「乗合バス」を読んだ。
乗合バスの奇妙な花を持った乗客、車掌と運転手、皆焦点人物である乗り合わせた女性と、後から乗ってきた若者をじっと見ている。他の乗客は皆降りていき、最終的に目的地で飛び降りた?女性と若者…広場の花屋で花を買い、これで二人も花持ち(?)になった…墓地との関わりも示唆されていて、他の乗客は実は死者なのではと感じる。

解釈1、死者の世界を垣間見たものの、現世界に降り立つことに成功…この場合の二人の花は生の象徴。
解釈2、現世界には戻ることはなく、死者の仲間入り。この場合の花は死の象徴。
果たして…
(2021 04/27)

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