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「本の都市リヨン」 宮下志朗

晶文社

姉妹編?に「読書の首都パリ」もある。こちらはみすず書房。


「無為民」・農民 囲い込み

16世紀に入り、「無為」で生きる人への排除の動きが強まってくる。不作、穀物価格の上昇により、都市下層住民や周辺の農民までも都市に押し掛け暴動を起こす。これらの人を貧民救済活動で支えながら、徐々に「福祉」という制度化となり、「無為民」(乞食など)のうち働ける人々や、周辺農民などを囲い込み、新たな労働力として見て行く。この初期の時代に、エラスムスやトマス・モアやラブレーなど「ユマニスト」達の展開があったわけだ。 
(2011 04/11) 

三度のメシが一番大事 


「本の都市リヨン」は、ルネサンスから近代へというダイナミックな流れも感じさせる大施物会の話題から、印刷業者での労使対立の話題へ。1520年代の戦時縮小体制から、1530年代になると出版業界は活況となるが、「時代の流れ」により、職人達への待遇が変わってくる。組合活動の禁止、親方が提供していた食事を給与制にする(給与制では、以前のように休日分は出ない)、給与が安く組合に参加できない徒弟を多く入れる…など。

そこで職人達の秘密結社組合である「大食らい団」は1539年にストライキを決行…と、こういう話。 結果どうなったかというと、やはりこれも「時代の流れ」なのか、ほぼ印刷業者側の主張が通る。唯一職人側が守り通したのが三食の食事…うーむ、さすがは「大食らい団」。 

しかし、この記事で何度も鍵括弧付きで言ったような「時代の流れ」…って、ほんとに不可避なモノなのだろうか? 何かの言い訳、或いは適当にその言葉でごまかされているだけなのでは…職人と徒弟の関係など、どうしても現在の派遣とか契約とかの労働契約を思い出したり。徒弟はあくまで修行期間内のことなのに… 
(2011 04/12) 

ラブレーとティル・オイレンシュピーゲル


「本の都市リヨン」で最盛期16世紀中頃の出版業界紹介で、冬に山から降りてきて書籍・小間物行商をする人々とか、リヨンではトランプの印刷が盛んだったとかいろいろ面白かった。 
で、標題はその中の木版の挿絵について。ドイツの中世文学の代表作「ティル・オイレンシュピーゲル」とフランス・ルネサンスの代表作であるラブレーの作品に同じ挿絵が使われていたという話。当時はまだまだ貴重な印刷物。こういう回し製造が成り立っていたと思われるが、さすがに現在では…
(2011 04/13) 

3日に1日は休み?


リヨン・ルネサンスの祝祭。カーニバル論では奪冠・倒錯というキーワードで語られるが、この当時16世紀中頃にはだいたい3日に1日は祝日か日曜で休みだったという。なんだかガス抜き多過ぎな気も。奇妙な平衡感覚の上に成り立っていたのか。この時代の国は… 

そこから話題はアンリ2世の戴冠による入市式の祝祭の描写になる。この時代の宮廷というものは、半分移動性。各地を転々として過ごす。市に入る国王側も迎える市側もそれから庶民もそれぞれの思惑でもって祝祭に参加する。そこから海槍試合やテニス前身のゲームや、それからアンリ2世の愛妾とつながるディアーヌのイメージとか入市式終了後病いとインフレがやってくる…とかいろいろ。 
次に国王がリヨンにやってくる16世紀後半には宗教戦争とかで祝祭どころではなかったらしい。 

アンリ2世について2つの補足。
その1は、この人の治世を舞台とした小説が「クレーヴの奥方」であるということ。
その2は、馬上槍試合かなんかでお亡くなりになる王様であるということ。
(2011 04/14) 

宗教改革とリヨン

「本の都市リヨン」読み終え。最後は、ペストの流行、そこで献身的に働くイエズス会神父(それに比べて改革派側はあまりそういう人が出なかった)、改革派の2年間のリヨン占拠、そして宗教戦争・・・これを取りまとめたのがあのアンリ4世になるわけだけど(「ナントの勅令」)、一部の改革派はフロリダに新天地求めたらしいけど、スペイン軍に敗れてしまったらしい・・・ 
(2011 04/18)

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