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「春の祭典」 アレホ・カルペンティエール

柳原孝敦 訳  文学の冒険  国書刊行会

カルペンティェール流地球の歩き方


「春の祭典」。2日目の昨日は、「楽園の犬」のコロンとは反対に、楽園(キューバ)を追放されたエンリケが、メキシコを経てパリへ。
メキシコでは、リベラの壁画芸術に戸惑いつつも「三角定規の鋭角の重なり」とメキシコの山々を表現し、パリでは、「何と言っても、この街は無人の=バルコニー=都市だ」と。とにかくバルコニーが続いている、とこれまたページを埋めつくすバルコニーの言葉の繋がり…
エンリケはカルペンティェールの分身とも言える存在で、カルペンティェールと言えば音楽と建築のプロフェッショナルであるから、こうした部分などは、一文字一文字を音符か煉瓦に置き換えれば曲か家がひとりでに出来てしまう、ような錯覚さえも覚える。
(2008 12/05)

「春の祭典」はワイマールでゲーテとシラーの町のすぐそばで強制収容所がある。そこでの南米人2人の会話。強制収容所の近くの街では「収容所好景気」と呼べるものが起きている、と。一方、カルペンティェール分身?のエンリケは恋人のアダが逮捕されたことを知る…
(2008 12/06)

バレリーナと兵士


ロシア人バレリーナのベラと、その恋人始めスペイン内戦の志願兵達の会話。兵士は常に姿勢を低くして弾に当たらないようにする。バレリーナは自分の身体を高く華麗に見せる。ここでお互いの中に違いがあるのは、その違いなのか…その違いはまた、哲学・思想・芸術に対する考え方や姿勢にまで及んでいるのか?
20世紀総括、みたいな作品。
(2008 12/09)

インターナショナアアル


舞台は戦乱のヨーロッパからエンリケの故郷キューバへ。所用でニューヨークに来たエンリケは、高級キャバレーのショーでインターナショナルが歌われるのを聴く。時はスターリングラード攻防戦の最中で、ロシアに対する関心も高かった…しかし、スペイン内戦に参加したエンリケにとっては侮辱?に聞こえるのだった…
(2008 12/12)

「春の祭典」は金曜日に読み終え、ついでに復習?として、ストラヴィンスキーの「春の祭典」も聴き、事なきを得た(謎)…
(2008 12/22)

フェンテス「脱皮」と読み比べて少し

「春の祭典」とは歴史的視点(ナチスとか)もあるのだが、それより作者の分身の要素が濃い主人公(「脱皮」の場合は主人公達)が、作家であると同時に建築家であるところに共通点が見出だせる。作品の構造の骨組が見える(見えそう)ところ、いや、もう少し深く考えて建築家思考ともいうべき何か(何だろう)がありそうだ。何か… 
(2009 02/23)

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