泣き止め腹の虫よ

こんばんは。織宮だよ。
今僕はとてつもない窮地に立たされている。
そう。おなかが空いたのだ。

事の発端は些細なことであった。
我が家の夕飯は17時半と決められており、食後から6時間以上だった現在、ちょうどお腹の中のものを消化し終わり空腹感を感じ始めているところであった。
しかし、そんなところで欲に負けるような心弱き青年ではないのである。僕は懸命にもこの空腹感をぐっとこらえ、翌日の朝食を気持ちよく食べるようにする。そうやって今まで乗り切ってきた。
けど、今夜は少し違った。
夜寝る前に動画を見る習慣がある僕は、いつものように布団に寝転がりながらスマートフォンを取り出す。そして、目当ての動画のサムネイルをタップした瞬間であった。
黄金色に輝くフライドチキンを頬張る男の映像、カリッという食欲をそそる揚げ物をかじる音。
そう。ケンタッキーの広告に遭遇してしまったのである。
迂闊だった。午前1時のケンタッキーはあまりにも危険すぎる。しかし僕はそのリスクも顧みず、Youtubeという広告がひしめき合う魔境へと足を踏み入れてしまった。この数年の中で最大の失敗だと言えるだろう。

一度こうなってしまったものは仕方がない。この空腹感を引っ提げて無理やり眠りにつくのは無理に近い。だとしてもこの時間に食事をするのは抵抗感がある。そこで、少量の食事でどうにか空腹感を誤魔化せないか、という問いに向き合うことにした。金曜日の夜にやることじゃあないが。

・いかのあたりめ
真っ先に思い浮かんだのがこいつだった。1本食べるのに、何十回何百回と噛む必要がある。こいつなら満腹中枢を刺激して、僕を空腹感から救ってくれるに違いない!
しかしこの案は真っ先にボツになった。
あたりめは、消化に悪いのである。

・炭酸水
我が家では強炭酸水を常備する習慣がある。僕がよく飲んだり、父がお酒を飲むのに使ったりするからである。こいつなら消化のこととか考えなくてもいいのでは?僕はうきうきしながら冷蔵庫を開けた。
入っていたのは、飲みかけの炭酸が抜けた炭酸水が1本のみ。
僕は悲しくなってそっと冷蔵庫を閉じた。

・キシリトールのガム
そういえば、父がこの前キシリトールのガムを購入していた。僕はお菓子をあまり買わないので、ガムを食べたことは恐らく人生の中で指で数えられる程しかないが、こいつなら消化のことを考えなくてもいい。
そうして僕はキシリトールのガムを意気揚々と口に運んだ。そして、ものすごく後悔した。
僕はミントがとてもとても苦手なのである。

もうどうしたらいいって言うんだ。好物の2つは封印され、口内はガムのミント香料に侵食されている。
どうにかしてこの空腹感を誤魔化さねば。
そうやって思考を巡らせているうちに、気づけば僕は眠りについていた。

怠惰な隣人の駄書き 2022 9/24

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