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アルザス地方料理 その1

アルザスは美しい!!

さて、今回からフランス地方料理の本題に入っていきたいと思います。まずは私にとって、一番馴染み深いアルザス地方から。とにかく美しい風景と村々、コロンバージュ(木組み)の家々がおとぎ話のよう。ストラスブールの大聖堂は圧倒的な迫力、コルマールには宮崎駿監督の「ハウルの動く城」のモデルになった家があったり、運河が流れるその様は、観光する場所には事欠きません。「フランスの最も美しい村」にもリストアップされているリクヴィルやエギスハイムなどの美しい村々とワイン街道に広がるブドウ畑の景色は絶景です。しかも人々がのどかで親切。パリとは大違い。本当にアルザスはいいところです!!

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通りの角を曲がったときに眼に飛び込んでくる、ストラスブールの大聖堂は圧倒的迫力です!!

ストラスブールは古くから交易の地 

アルザス地方の中心都市、ストラスブールは古くから東西の交通の要所でした。そしてstras =道 bourg=城塞、市場の立つ街、という意味からも分かるように、交易の地として古くから栄えました。ライン川に船が往来し、街には運河が張り巡らされています。

実際にこの地にいたことがある私の記憶では、1989年当時はストラスブールの市バスの一つの路線はライン川、つまりフランスとドイツの国境を渡りキールという川向こうのドイツの街が行先でした。こんなに国境を身近に感じたことは、日本人である私には衝撃でした。国境にある地域であるがゆえに、ドイツとフランスの間に挟まれ、不幸な戦争に翻弄された歴史でもありました。そんな歴史があるからこそ、ブリュッセルと共に欧州議会の中心地であり、EUの大きな会議場も備えていると同時に、フランス軍の拠点でもあります。

アルザスを言い表す5つのC

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象徴的にアルザスを言い表す5つのCで始まる単語があります。Colombages=木骨造、木組みの家 Cigogne=コウノトリ Cathedrale=大聖堂 Coiffe=アルザス伝統衣装の女性の髪飾り そして Choucroute=シュークルート です。

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コウノトリはこの地方を象徴する鳥で、結構あちらこちらで巣を作っています。

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アルザスの伝統衣装で、女性が髪につけている大きなリボンのようなものがコワッフ。この地方の人たちは特に民族に誇りを持っていて、アルザス語(フランス語よりドイツ語の方言といった方が近いらしいです)もみんな普通に話すので、当然のようにドイツ語も話します。だからドイツからの観光者もとっても多いです。

図6

ようやく料理が出てきました!! シュークルート!!ドイツ語ではザワークラウト。そもそも酢っぱいキャベツのことですが、そこにシャルキュトリー(豚肉の加工品)やポテトなどを入れ煮込んだものです。何がすごいってそのシャルキュトリーの種類の豊富さとそれぞれの味わい深さと共に量の多さに驚きます。

酢漬けのキャベツというけども・・・

よく酢漬けのキャベツという人がいます。ですがシュークルートは実は酢漬けではありません。どちらかというと漬物で、ヨーロッパのガシガシに硬いキャベツを千切りにし乳酸発酵したものです。調理の過程でヴィネガーつまり酢酸を入れることはあり得ますが、キャベツの酸味自体は乳酸からくるものです。京都人の私からすると、京都大原の柴漬けや上賀茂のすぐき菜と同じ乳酸発酵です。個人的にはこのすぐき菜(ご存知でしょうか?)の酸味ととっても良く似ていると思います。以前は缶詰めのもの(熱処理しているのでふにゃふにゃで本場のものとは全然別物)しか手に入らず、日本で何度も作ろうと試みました。ですがことごとく失敗し、日本のキャベツと気候のせいにしてあきらめていたころ、現地のものと変わらない非加熱のものも手に入るようになり、日本でもおいしいシュークルートを食べることができるようになりました。

この酸味が様々なシャルキュトリーとの相性の良さがこの料理の肝。アルザスの白ワインとの相性も抜群で、これぞ地方料理の代表格といった感じです。

どんなシャルキュトリーを入れるの?

私がこの地の2つ星レストランで働いていた時にも、シュークルートは週に一度程度、まかないで出てきました。もともとハムやソーセージが大好きな私にとってはとてもハッピーな日でした!! 最初に食べて衝撃的だったのが真っ黒に燻製がかかった黒ベーコン。すごいインパクトと共に、豚肉のおいしさにも魅了されました。そして白ソーセージ。これはナイフを入れると脂や肉汁がはじけ飛ぶ感じで、濃厚なおいしさ。1本でかなりの満足感を得られました。                            

店のまかないでは、流石にそれほどシャルキュトリーの種類が多かったわけではありませんが、街のシュークルート専門店でシュークルート・ロワイヤルなどというメニューを食べたことがあります。これラーメンでいうところの ‟全部のせ” みたいなやつ。3名の若者で前菜にフォワグラのテリーヌとサラダを食べ(フォワグラもアルザスは有名)メインはこのシュークルート・ロワイヤルを3人でシェアしましたが、2/3ほど食べたところで満腹にてギブアップ。(因みにこの話は1999年のこと。2018年に行ったときは全体的に量が減っていると感じました)何分昔のことで記憶は定かではありませんが、アイスバイン(塩漬けにした豚すね肉)やストラスブール風ソーセージ(目が細かいフランクフルトタイプ)やあらびき系など様々のソーセージ各種、クヌーデルという肉団子、レバーケーゼ、各種ベーコン、等々。とにかくあの時の幸せ感は忘れられません。

次回は引き続きシュークルートの作り方から、アルザスの産物をはじめ、他の独特で多彩な地方料理を書いていきます。

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