物価高のUSJの塀の中で、愛を噛みしめたこと
昨今、円安に喘ぐ日本ですが
海の外に出なくても、
USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)の中では
「ここは外国か!?」
「エントランスゲートは税関だったか!?」
と見紛うほどの物価高を経験できる。
ゲートを入ってすぐの
ハリウッドエリアには、
楽しげな音楽が流れ
きらびやかなお店が立ち並ぶ。
ポップコーンスタンドから香ばしい匂いが漂ってくる。
スタッフの皆さんが笑顔で
「いってらっしゃーい!」と手を振るのを見ると
グーッと気分が盛り上がる。
あちらでは
たくさんの風船を持っているスタッフが
子供たちに風船を渡している。
子供が「私も欲しい」というから
スタッフさんに近づいて
「ひとついただけますか?」と聞くと
「1,000円です」とのこと。
住宅展示場では、0円で配られる風船が
1,000円!
私は思わず方向転換した。
USJに行くことが決まってからというもの
駄菓子好きの娘は
「ハリーポッターのグミが欲しい」
とねだり続けていた。
ハリーポッターエリアに行くと
あった、あった!
百味ビーンズ。
ミミズ味、はなくそ味、腐った卵味などを含むゼリービーンズが
2,800円だった。
私は言った。
「コスモスで、桃味のグミ(173円)を買おう」
ところが夫は
いくら親バカとは言え
「ずっと約束していたから」と
なんと、鼻くそ味を含む2,800円のお菓子を
買ってあげたのだ。
今をときめくスーパーマリオエリア。
マリオショップの価格高騰もべらぼうだった。
小さなキーホルダー、1,800円
鉛筆4本セット、1,200円。
100均に売られているものとの違いは
マリオのプリントの有無ぐらいだ。
冗談みたいな値札を見ては
夫と笑い合った。
ところが息子は、
そこで、マリオ好きの友達へのお土産を買いたいと言う。
芋の子を洗うようなショップの中で
適当なものを一生懸命探していたが
1,200円を下るものは見つからない。
マリオの絵がついたシャープペンシルを握って
息子がいった。
「ぼくのおこずかいだと、破産しちゃうよ」
私は冴え渡る代替案を提示した。
「塀の外で、タコ焼きポッキーを買ったら?」
ところが夫は
「そのシャーペンでいいと?」と
息子からシャープペンを受け取り、レジに向かった。
言っておくが日頃夫は、経済観念がしっかりしている。
私より「渋ちん」とすら言えよう。
だから、ここでの買い物は、
買い物ではなく
夫の子供達への気持ち
だったのだと思う。
私は子供たちに
「お父さんにありがとうは?」と言ったけど、
むしろ私が夫に
「子供たちを愛してくれてありがとう」と言いたかった。
日も落ちて、遊び疲れ、もう帰ろうと出口に向かって歩いているとき
疲れて苛立ってきたのだろう。息子が言った。
「人が多くて疲れるし
アトラクションも出来ない。
だから大阪に来たくなかったんだ」
インドアでゲームマニアの息子は、
しばしば
外に出ることに対して消極的なコメントをする。
私が「またか」とうんざりしていると
夫が強めの口調で、息子に返した。
「その場に行って感じることは大事だよ。
バーチャルだけじゃダメよ」
息子は、お父さんの強い口調にいじけて
一人歩調を速め人ごみの中に消えて行った。
なんせ人が多いから、一度はぐれると面倒だ。
いずれ出口で会えるだろうエントランスで待ってみたが
息子の姿は見当たらない。
園内を探し回り、スタッフに訊いたりしていたところ
夫から、息子が見つかったとの電話があった。
エントランスの、私たちが待っていたのとは反対側にいたらしい。
見つかってホッと安堵したものの
息子の自分勝手な行動に、腹も立っていた。
迷子になって怖い思いをしたのも自業自得だ!
ゲートの外に出たころには、
辺りはすっかり暗くなっていて
疲れてお腹も空いていたから
何か食べようということになった。
夫が言った。
「今日の夕食は、もっち(息子)が食べたいものやろ」
夫は、何をさておき
迷子になって不安だった息子の気持ちを労うことを優先した。
その言葉を聴いて「愛だな」と思った。
素直に家族を愛おしく感じた。
私はシングルマザーだった頃があるから尚更思う。
家族がいること、
子供たちを一緒に育てることができる人がいることは、
ありがたいし、豊かだな。
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