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【読書記録】限りある時間の使い方/オリバー・バークマン

 久しぶりにnoteを書くことができました。12月を気忙しく過ごし、少しだけ本を読む余裕ができた年末年始に読んだこの本の内容が今年の自分にとって大切になりそうなので、今年の抱負も含めて記録に残しておきたいと思います。

生産性の罠

 この本はタイトルからタイムパフォーマンスについてのHow to 本なのかな?という印象を受けますが、その逆で、「効率を上げれば上げるほどますます忙しくなる」という「生産性の罠」を指摘しています。そして、時間と戦っても勝ち目はないことを自覚し、有限性のある「今」を生きることを強く主張しています。

時間をコントロールしようと思うと、時間のなさにいっそうストレスを感じる。人間であることの制約から逃れようと思うと、人生は一層空虚で、不満だらけになる。このままではどこにも辿り着けない。
それならば制約に逆らうかわりに制約を味方につけたらどうだろう?
自分には限界がある。その事実を直視して受け入れれば、人生はもっと生産的で、楽しいものになるはずだ。もちろん、不安が完全になくなるわけではない。限界を受け入れる能力にも限界はある。だとしても、これだけは自信を持っていえる。
現実を直視することは、ほかの何よりも効果的な時間管理術だ。
オリバー・バークマン:「限りある時間の使い方」

 時間は目に見えるものではなく、完全に人間から分離したものでもない。私たち自身が時間の一部でもある。そんな「時間」を人間がコントロールしようなんて、そもそもおこがましい。そんな筆者の主張から、自分の見失っていたものについて気付かされました。

 私は昨年末、「時間に追われている」という意識が本当に強く、家事、育児、仕事(週2だけですが)と並行し、年末の提出に向けて大学院の修士論文の追い込みをしていました。
 忙しいと分かっているのに、職場で勧められた研修を断れなかったり、子供たちの予定や親同士の付き合いも全部こなさなくてはと焦ったり、どこかで「この隙間時間にできるかも」と思い、タスクをどんどん増やしてしまう日々。毎日やることリストにチェックをつけて、時間単位でやることを詰め込んで、なんとか計画通りに進めようとしました。でも、子どもが熱を出したり、自分も体調を崩したり、精神的にダメージを受ける出来事が降りかかってきたりなど、計画通りにはいきません。その結果、修士論文を自分の納得いくところまで突き詰めて提出することができず、限界を感じて、ショックでしばらく放心状態になってしまいました。
 そんな時にこの本を読み、自分が時間をコントロールしようと間違った思い込みでいたことに気付かされました。
 これからは、「何もかもはできない」と自分の限界を受け入れて、意識的に選択をしていきたいと強く思っています。大きな時間の流れの中で、抗うことをせずに。

「今」を大切に生きる

時間をうまく使おうとすればするほど、今日や明日という日は、理想的な未来に辿り着くための単なる通過点になってしまう(そんな未来は実際には永遠にやってこないのだけれど)。
<中略>
実際、人生のあらゆる瞬間はある意味で「最後の瞬間」だ。時は訪れては去っていき、僕達の残り時間はどんどん少なくなる。この貴重な瞬間を、いつか先の時点のための踏み台としてぞんざいに扱うなんて、あまりにも愚かな行為ではないか。
オリバー・バークマン:「限りある時間の使い方」

 まさしく昨年の私は、先のことばかり考えて、本当に「今」を大切にできていなかったなと思います。今年は、もっと「今」この瞬間に意識を集中させて、有限ある時間を大切に生きていきたいです。すぐに頭がゴチャゴチャしてしまうので、マインドフルネスとかヨガとか、心を穏やかに、空っぽにする時間やトレーニングも必要かもしれません。

 私はこの本を読んで、自分の行動や時間管理の具体的な方法を180度変えるということではなく、「時間」についてもっと抽象的で哲学的な、自分の心の深い部分に響くような示唆を得た感覚がありました。自分の限界を知って、今を大切に生きていくという視点があることで、例え同じ時間を生きていたとしても、自分がそれを選んだという意識や大切にしたいものについて確固たるものを持っていれば、以前の自分とは違う時間を生きているのではないかと思うのです。
 それため、巻末の付録の具体的な方法論の部分は必要であったのか疑問でした。個人レベル、ミクロレベルにまで内容を落とし込んでしまうと、せっかくのこの本のメッセージが薄れてしまう気がしました。ビジネス書だからそれを求める読者が多いという理由もあるのかもしれませんが、そこは自分自身が考えて行動していく部分なのにな…という違和感が少しだけ残りました。
 今私は、昔読んだ五木寛之さんの「大河の一滴」を読み返したくなっています。根底に流れるものに共通性を感じていて、なんだか新しい気付きが得られそうな気がします。

 タイムリーに朝日新聞でもこの本を取り上げて、特集が組まれており興味深いです。最近はいつもこの連載を楽しみに新聞を広げています。オンライン版でも一部読めるようです。本の内容と合わせて、今年からの自分の時間との付き合い方を改めて考えていきたいと思います。


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