【肩の痛み】投球障害に特徴的な肩の「運動機能障害」《3選》

野球やバレーボール、やり投げといった腕をふり上げる「オーバヘッドスポーツ」に特徴的な肩の運動機能障害が3つあります。

これらの運動機能障害によって肩甲上腕関節にかかる「機械的振動(メカニカルストレス)」が増し、痛みや組織損傷につながります。

投球障害に対応するには、これらの運動機能障害を発見し、改善する必要があります。

オーバーヘッドスポーツに特徴的な肩の運動機能障害を3つとりあげ、その原因と影響をご紹介します。


挙上位での肩関節内旋可動域の制限

肩の「第2肢位」や「第3肢位」における内旋可動域に制限が生じます。制限因子には以下のような肩後下方組織の問題があげられます。

・棘下筋、小円筋などの後方筋群の緊張亢進
・後下方関節包および関節包靱帯の伸長性低下

肩後下方組織の問題により肩甲上腕関節の可動性が低下。外転制限による「肘下がり」の原因に。

また関節窩に対する上腕骨頭の運動軸にブレが生じ、ボールリリースからフォロースルー期にかけて上腕骨頭の後方すべりこみが阻害され、痛みにつながります。

外旋可動域の過度な拡大

投球動作のコッキング期から加速期にかけて肩は最大外旋位をとり、トータル145°にもなります。これは肩甲上腕関節の外旋に加え、胸椎伸展および肩甲骨後傾によって成されます。

胸椎や肩甲骨の運動機能障害によって肩甲上腕関節にかかる負担の比率が上昇。くり返される過度な外旋運動によって肩甲上腕関節前下方組織の不安定性や損傷を招きます。

コッキング期から加速期にかけて上腕骨頭の“スリップ現象(skid slip)”が生じます。微細な機械的ストレスが蓄積することで組織損傷を生じ、痛みにつながります。

腱板筋の相対的な筋力低下

構造的に不安定な肩甲上腕関節はそのまわりをとりまく筋群によって安定性やパフォーマンスがもたらされます。

まずより深層にある筋群(innner muscles=腱板)が上腕骨頭を関節窩にひきつけ安定化。動作の支点をつくります。その上でより表層の大きな筋群(outer muscles)がはたらき、目的の関節運動やパフォーマンスが発揮されます。

肩のスポーツ障害を訴える者のほとんどで相対的なinner musclesである腱板の筋力弱化がみとめられます。“相対的な”とは、腱板そのものの機能が低下している場合と、腱板に対してouter musclesが過剰にはたらいている場合とがあります。

腱板機能の障害により、肩運動時の骨頭求心位保持が困難に。肩甲上腕関節で微細な機械的ストレスが生じ、痛みや組織損傷を招きます。とくに肩最大外旋位における外旋位を保持できるかどうかは重要なポイントです。

まとめ

オーバーヘッドスポーツに特徴的な肩の運動機能障害を3つとりあげました。
これらの運動機能障害によって肩甲上腕関節の運動軸がブレ、微細なメカニカルストレスが発生。メカニカルストレスが蓄積することで症状や組織損傷につながります。

投球再開にあたり、運動運動障害が解消されていることを確認しましょう。また投球再開後の予防としてもチェックしていきましょう。競技動作を休んだことで症状が消えたとしても、運動機能が残ったままでは再発のリスクが高まります。

痛みや違和感といった症状、組織損傷の病態は、運動機能障害をかかえたままプレーを続け肩関節に負担をかけ続けた「結果」です。投球障害からの復帰、再発予防のためにその「原因」を見つけ、改善していきましょう。

参考書籍

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