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たべものエッセイ 4

「目玉焼き問題」

 目玉焼きには様々な問題がある。
 大きく分けると3つの問題がある。
①焼き方の問題
②食べ方の問題
③味つけの問題
 これらは各人に必ず一家言いっかげんあってとても他人が踏み込めるモノではない。モノではないが、あえて踏み込んでみる。
 まず①焼き方の問題。これは主に黄身の固さ周辺の問題である。黄身はつぶしたら流れるくらいが良いのか、半熟が良いのか、固形が良いのか。さらに目玉焼きをひっくり返してしまうターンオーバーなるものが存在する。映画『家族ゲーム』では、主人公の父親役の伊丹十三いたみじゅうぞうさんが、その妻役の由紀さおりさんが作った目玉焼きについて文句を言うのだ。いつもは黄身がほとんど生の状態で出て来る目玉焼きが、その日はたまたま固形で出て来た。最初に黄身に口をつけてチュッと吸うのを楽しみにしていた伊丹さんが、いざ黄身に口をつけて吸おうとすると、黄身が固形で吸えない。そこで妻役の由紀さおりさんに向かって言うセリフが印象的である。
「これじゃチュウチュウ出来ないじゃないか!」
 これは②の食べ方の問題にも及んでいる。伊丹十三さんふんするところの父親は、まず黄身から行くのだ。生の黄身に口をつけて吸うという食べ方を披露ひろうしている。
 そう、②の食べ方の問題というのは、つまるところ「いつ黄身に手をつけるか」という問題なのである。そしてそれは、黄身が生に近ければ近いほど、それに手をつけるタイミングの重要性が増すのである。以降、黄身を生で食べる前提で話を進めたい。
 筆者としては、最初に黄身を潰してしまうのは避けたいところである。また、黄身周辺の白身を全て食べてから最後に黄身を食べる、いわゆる“ラストダンスは黄身に”型も、何だか貧乏くさい。やはり、最初は白身を味わいつつ、中盤から終盤に移行するどこかで黄身に手をつけるのが上策と思われる。
 さて、最後に③の「味つけの問題」だが、これは実に多くのパターンが存在する。
 代表的なものだけでも塩、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズなど広範囲にわたる調味料が選択されている。
 筆者の場合は、他の食べ物……主に炭水化物系の、いわゆる“主食”との組み合わせによって調味を変えている。
 例えば相手がトーストだと、これに合わせる調味料は塩であり、生の食パンであればマヨネーズだったりする。また、主食が白米であれば醤油にお呼びが掛かるといった具合だ。
 ソースやケチャップは、味に変化が欲しい場合である。もしくは目玉焼きがハンバーグの上などに乗っている状況においては、ケチャップやソースのパワーは遺憾なく発揮されるのである。
 このように、目玉焼きのバリエーションは基本的なものだけでも①火の通し方(黄身が生、半熟、固い、その他ターンオーバー)が4種類。②食べ方(黄身を潰すタイミングが序盤、中盤、終盤)の3種類。③味つけ(基本的なものだけでも塩、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ)の5種類。ということで4✕3✕5=60となり、カンタンに考えただけでも60通りの食べ方になる。
 これは毎朝目玉焼きを違うバリエーションで食べたとしたら、コンプリートするのにおよそ2ヶ月が掛かる計算である。
 どなたかチャレンジしてみませんか?

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