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たべものエッセイ 3

「かんたんメシ」

 世の中にはかんたんメシがあるという(今、作ったんだけど)。
 かんたんメシとは文字通り簡単なご飯のことである。かんたんメシの筆頭にげられるのは「玉子かけごはん」である。「納豆かけごはん」もそうである。
 かんたんメシは、一人暮らしがよく似合う。しかも男性がよく似合う。そして朝がよく似合う。つまり一人暮らしの男性の朝ごはんが一番似合う。
 時間のない朝に、ご飯に何かをかけてそれをっ込んで「いってきまーす!」と言って出掛けてゆくのだ。
 我が家にも伝統のかんたんメシがある。「バター•お醤油•味の素」というのがそれである。父がそう呼んでいた。アツアツのご飯にバターを投入し、味の素を振りかけ、それに醤油を2回しほど掛け、よく混ぜて食べるのである。今でも時々それを食べる。
 父が発明したかんたんメシは我が家に受け継がれたが、それを息子であるワタクシが発展させた。「発展させた」といっても、この「バター•お醤油•味の素」を焼き海苔で巻いて食べるだけである。これがとても美味しい。ぜひともこの「バター•お醤油・味の素•海苔」を全日本国民に試して戴きたいと、声を大にして言っておく。

「バター•お醤油・味の素•海苔」を全日本国民に試して戴きたい!

 さらにこれにはもう1つのバージョンがある。姉がやっていた方法が、内容的に「バター•お醤油・味の素」を発展させたものだったのである。姉がやっていたのは、「玉子かけご飯にバターを入れる」というものである。これは潜在的に「バター•お醤油・味の素」に玉子を入れたものである。こちらも非常に美味しい。ちなみに、「バター•お醤油・味の素」は、他のバージョンも含めて、「最初に温かいご飯にバターを落として溶かす」というのが作り方のコツである。
 どうも我が家はバターの使用頻度が高かったらしい。かんたんメシの代表格のひとつ、「味噌汁ぶっかけご飯(通称:ねこまんま)」にもバターを落として食べていた。こちらもかなりオススメである。
 ちなみに「ねこまんま」と呼ばれるものは大きく分けて「汁かけ系」と「かつお節系」がある。
 いずれにしても「ねこまんま」が、かんたんメシ部族に入ることは間違いない。この「かつお節かけご飯」は、醤油をたらして上に海苔を乗せた形でお弁当のご飯部分を占めていることもある。つまり、このテのお弁当は「かんたんメシのおかず付き」という豪華なものなのである。
 そして、先ほどから出て来ている海苔。この海苔もまた、かんたんメシを代表するものである。海苔を醤油にちょいと浸して、ホカホカのご飯を巻いて食べる、というのは作る過程も食事の所作に入っているワケで、究極のかんたんメシということが出来る。つまり、作りながら食べちゃう、というツマミ食い状態である。
 そしてこの海苔とゆーヤツを消化出来るのは世界広しといえど日本人だけなのだそうである。海苔の成分であるポルフィランは通常、人間の体内では消化出来ない。日本人の腸内にのみ存在するゾベリア•ガラクタニボランとゆー、日本人をバカにしたような名前のバクテリアが海苔を消化出来るのだという。外国の人が海苔を見て食欲がわかないのは、黒い色のせいだとよく言われる。それだったら何でイカスミ料理やブラックオリーブがあるんじゃい! とギモンに思っていたのだが、消化出来ないことを本能的に察知しているからではないだろうか?
 ともあれ、日本のかんたんメシは、外国人にとってかんたんに消化出来ないメシだったりするのである。

                  ―END―
 

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