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映画『ラストマイル』が100倍楽しめる?物流業を配送会社社員がネタバレ無し解説!


8月23日から公開された、映画『ラストマイル』
映画をもっと楽しんでもらえるよう、舞台になっている物流業界について、解説してみました。

■「ラストマイル」とは

映画のタイトルにもなっている「ラストマイル」
こちらは物流用語で"お客様に荷物が到達するまでの物流の最後の接点"のことを指しています。

最後の配送が「ラストマイル」

「厳密にいうとこの映画は『ラストマイル』がメインの話ではない」とパンフレットにも書かれていましたが、ラストマイルで爆発が起こることから物語が始まることで名づけられているんでしょうね。

■「ラストマイル」にモデルはある?


私たちの身近にはあるけれどなかなか見えない物流業界。
そんな業界を舞台にした「ラストマイル」にモデルはいるのでしょうか?
公言はされていないですが、このnoteではデイリーファスト社はアマゾンジャパン、羊急便はヤマト運輸をモデルと仮定して進めていきます。

物語のメインは、大手ショッピングモールデイリーファスト社の関東ロジスティクスセンター。
刈谷刑事がなんども噛んでいた「ロジスティクス」とは、物流のこと。「ロジスティクスセンター」は、簡単に言うと「注文品の配送準備を行う倉庫」のことです。
具体的には、注文を受けた商品をピックアップして、箱に詰め、宅配伝票シールを貼って、お届けする手前までを行います。
未経験でもできる作業になるので、実際の倉庫、特にアマゾンのようなシステム化がしっかりできているセンターでは、スポット派遣社員の方がたくさん働いています。
デイリーファスト社でも何千人といる従業員の中で社員は数人だけといわれていましたね。

世間の風刺を皮肉ることで有名なアニメ「サウスパーク」でも、アマゾンの作業の現場のことがアニメにされていました。

ちなみに映画を見ていて気になったのですが、エレナや梨本が倉庫エリアに出るとき、必ず分厚いシルバーのベンチコートを着ていたと思いますが、倉庫エリアって、あのコートを着ないといけないくらい、外と変わらない寒い温度ってことなんでしょうね(過酷😱)
ま、あんな吹き抜けの倉庫、冷暖房効かないか(笑)

■西武蔵野管内だけの話?

映画の中では、西武蔵野にある関東ロジスティクスセンターからの出荷品に爆弾が入っていたということでセンター内、そして羊急便の関東局が大騒ぎになるのですが、本来通販といえば、全国から注文があり、全国に発送されるものではないのでしょうか?

アマゾンほどの大きなECモールのセンターになると、全国各地にロジスティクスセンターがあります。

関東だけでもこんな感じ

これは、商品の種類を似たものにして、ロジスティクスでの作業効率を上げるため(例えば、アパレルはAセンター、大型品はBセンターなど)、また、注文者から一番近いロジスティクスセンターから出荷・配送をすることで、短い距離=待つ時間を短くお届けすることが可能になるのです。

おそらく、西武蔵野の関東ロジスティクスセンターから出荷される商品は全て、羊急便の荒川区の羊集配センターに配送され、そこからラストマイル配送がなされているのだと思います。
だから、事件も集配センターの配達エリア内で起きていたということです。

■物流代行サービスとは?


物語の中盤以降「物流代行サービス」というのがキーワードとなります。
Amazonが楽天やその他のECモールと大きく違うところは、Amazonは、自身で商品を仕入れして販売しているということです。
しかし、それ以外に、個人の出品者がAmazon上で販売することも可能です。その出品者のことをAmazonでは『セラー』と言います(Amazonに販売・納品する業者は『ベンダー』)
セラーの商品は、「業務委託」という形で、ロジスティクスセンターに商品を預け、売れたら自動的に出荷・発送されるので、セラーは販売管理だけに注力することができます。
「ロジスティクス側が物流を代行でするサービス」⇛『物流代行サービス』ということです。

セラーが販売する商品は、Amazonの商品と同じでも構いません。ただ、商品は基本JANコードで管理されており、同じ商品だと、セラーのものなのかAmazonのものなのかがわからなくなるため、セラーの商品には、JANコードの上から独自コードのバーコードシールを貼るようになってます。
このしくみが、映画の中でキーになるんです!

■ブラックフライデーって何?


ブラックフライデーについては説明もいらないくらい浸透していると思います。通販業界では有名なセール期間ですね。
物流業界(特に配送業界)では、この近辺から大晦日まで怒涛の繁忙期が始まります。

現実世界で言うと、11月の中国サイトの「ダブルイレブン」。11月最終週のAmazonを中心としたブラックフライデー。12月初旬には楽天スーパーセールも始まります。
そして、お歳暮商戦、クリスマス商戦も便乗され、クリスマス後からはおせち料理配送があります。
この時期は、数が単純に増えるだけでなく、お歳暮は注文者と受取者が違うため不在率が上がったり、クリスマスやおせちは配送遅延が絶対に許されないので、業界全体がピリピリしています。
こんな時期に事件起こされて、羊急便の方々、ホントにご苦労さまでした💦

■おわりに


いかがたったでしょうか?
今回は、ネタバレ無し解説として、物流業界の話を中心に行いました。
この映画は、物流会社社員が見ても違和感のない、素晴らしい話でした。
ちなみに、映画を見た翌日に、会社の上司に
「センター長(エレナ)はね、『絶対に物流は止めない』っていうんです!」と説明したら
「そんな事件になったら、フツー止めるけどね」とのことでした(笑)


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