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個人的な藤の名所

山で藤を見かけると苦しくなります。
巻き付かれている木に感情移入してしまうからです。

藤はツル植物。
ドライフラワーリース台の材料として、その色と太さから一番好きなツルなのですが、
他の木にツルを巻き付けて咲いているのを見ると、少し複雑な気持ちになってしまいます。
巻きつかれている方の木は痛んで、そのうち死んでしまうからです。

設計をご依頼いただいているお庭にも藤がありました。
「何かしておくことはありますか?」と持ち主様に聞かれた時
一番に「木に巻きついている藤を外してください」をお願いしました。

藤棚は安心して見ることができます。
人が管理している藤は、ただただ美しいと思うばかりです。
その棚も人が管理しなくなれば暴れてひどい有様になります。

「藤は人が管理してこその美しさ」
そう考えていた私にとって、驚くべき場所がありました。

木に巻きついているわけではなく、廃墟に巻きついているのです。
建物は4階建てでしょうか。
非常階段らしき手すりにも巻きついています。

この建物に人がたくさん集まっていた時代を私は知っています。
その頃は当然、藤は巻きついていませんでした。

人が管理していない野放しの藤。
藤の特性から考えて、巻きついてのびている時こそ美しいのだと気づきました。

私にとって唯一無二の藤の名所です。

こちらの建物もいずれは取り壊されるのでしょう。
立て直されるとしても藤は剝がされると思います。

今のうちにどんどん暴れて大きくなればいい。

毎春この藤を見るたびに応援したくなるのです。

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