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スーツおじさんと、お花

なんでもない些細なことだけど、
数年間、ずーっと心に残ってる光景がある。

朝、通勤ラッシュの時間。

脇目も振らず、オフィス目掛けて
せかせかと行進していくスーツ姿の人々。

わたしも波に乗って、
とりあえず早足で歩いてく。

ふと。

数メートル前方を歩いている、
スーツの、40代くらいの
おじさんが止まった…(!?)

行進から脱線して、
携帯を取り出して、
腰をかがめて。

道の脇に咲いていた、
花の写真を撮っているようだ。

おお。

なんとも、
胸を打たれてしまった。

行動パターンをインプットされた機械の如く
一直線に行進していく人々とは対照的に、

この方は、
「あ、綺麗だなあ、素敵だなあ」
「奥さんに見せよっかなあ」

そう感じた一人の人間として、
そんな気持ちのままに、
まっすぐ行動したようだ。

(今の時代、日本でそれをするのが、
どんなに難しく、尊いことか...!)


(大変、失礼ながら)
スーツを来た40代〜くらいのおじさんって

「いい歳こいた男が何やってるんだ、
と思われたら恥ずかしい」
「完璧に見えるようにしないと」

みたいな考えに縛られやすい
イメージがあった。
だから、きっと自分の望みや
感情を表すのが苦手なんだろうな、
みたいな。

でも、完全に偏見だったようだ。
おじさん、かっこいいな〜、と
思わされてしまった。

自分の生きたい人生を選んで生きるって、
何か大がかりなことをするというより、
毎日の生活の中で、

自分がいいな、と感じたこと、
素敵だなと思ったこと、
楽しいなと思ったこと、
嫌だなと思ったこと、
辛いと思ったこと、

それを素直に感じて、
表してみることから
始まるんじゃあないか。

それって勇気がいることもあるんだけど、
こういうおじさんみたいな人がいると、
その勇気、もらうなあ。


顔も覚えてないし、
名前ももちろん知らないけど。

多分、何十年経っても、
このおじさんのことは
胸に残ってるに違いない。


ありがとうございます、
おじさん。

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