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ネタバレ注意「劇場版 ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉」感想

現実のダービーにダービーをぶつける勇気



新時代の扉が公開された5月24日の二日後がまさかの現実のダービーの開催日
映画にはどうしても興行収入という評価基準があり、この興行収入が後の映画館の席数や入場特典等に繋がるようです。

競馬に詳しくない人に説明すると、多くの人が知っているであろう「天皇賞」や「有馬記念」等を開催しているのが中央競馬で、その開催日は土日祝日になります。しかも競馬に携わる人たちにとって一年の始まりと終わりであるといっても過言ではない「日本ダービー」はこの競馬界にとって最大のイベントになります。

そんな日本ダービーと競馬を題材にしたウマ娘の映画の公開日をぶつけるということは、初週の興行収入の減少を招きかねない、実際観に行かなかった人も結構いたんじゃないかと思います。

それでも、あえてこの2つのイベントを同じタイミングにしたウマ娘は、それだけ現実の競馬をリスペクトしているという事だと思いますし、映画のクオリティにも自信がないとできない事です。

正直個人的に心配してましたが、とても素晴らしい映画でした。
なんなら日本ダービーに行ってからまた映画を観たくなりました。
まだ映画自体は1回しか観れてませんが、初見で映画を観て感じたことをここでまとめておこうと思います。

全てにおいて劇場版クオリティ

これはあくまで個人的な意見ですが、映画を映画館で観るときは映画館で観て良かった!と思う体験が大切だと思っています。
その点で言えば、新時代の扉は正しく映画館で観るべき映画だと強くお勧めしたいです。

音響について


凄いです。序盤のレース「ホープフルステークス」で主人公ジャングルポケット(以下ジャンポケ)と同期のライバルであるアグネスタキオン(以下タキオン)のレースが描かれるのですが、その中で文字通りタキオンのキックバックが飛んできてジャンポケが泥を塗られます。そのキックバックの音がリアルで、泥が飛んできたかと思ってビックリしました。4DXで観たらどうなるんだ…
それ以外にも、ウマ娘は時速70kmで走るという設定でレースが展開しているのですが、これまでのアニメではそこまでの速度はレース全体で感じなかった部分が新時代の扉では作画含め、その速度を感じるような音響になっていると感じました。
劇中曲についても、この前まで映画館で公開されていた「ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP」はゲーム寄りでしたが、新時代の扉では劇場向けになっていると思いました。

作画について

ちょっと言葉が合っているかわかりませんが、動静がはっきりした作画になっていたと感じました。
静の部分については、美術がこれまでの映像作品と比較して美しいと感じる部分が多くなっていたと思います。特にジャンポケとフジキセキの会話に多く登場する柳の作画やタキオンが普段過ごしている旧理科室、競馬場辺りにこれまでの映像作品との違いを感じました。
その対となるウマ娘の作画の動きもビックリしました。崩しというべきか、例えばデレデレになるジャンポケが印象的ですが、それ以外にもレース中、特に2000年有馬記念のテイエムオペラオーは若干劇画風に、タキオン等のウマ娘の固有結界的な演出など、これまで積み上げてきた映像作品からは敢えて外したような作画が凄いすごかったです。

アプリ版と映像作品との違い、そして劇場版

これまでアニメウマ娘が1期から3期、YouTubeと劇場でウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP(RTTT)、そしてスマートフォンアプリとしてウマ娘が既に配信されています。
その全てに共通する因子がIF(もしも)で、この部分をどう描くかというのがウマ娘を楽しむ醍醐味の一つではないでしょうか
アプリ版のウマ娘の良い所であり、悪い所でもあると私が思っているのが、「頓挫の描写」です。それは怪我であり、敗北で、アプリやっているときはそうなって欲しくないという思いでプレイしますが、その一方で映像作品ではそれをどう描くのかが楽しみの一つです
アニメ版では更に、全く関係ない競馬のレースや出来事の点と点を繋ぐストーリーを作り出すという良さがあるんじゃないかなと思っています。言うまでもないですが、2期のトウカイテイオーとツインターボ等ですね。

映画の冒頭で、ジャンポケは初めてトゥインクルシリーズで走るウマ娘を見て、そのウマ娘の走りに惚れ、トゥインクルシリーズに進むという決断をします。そのジャンポケが惚れたウマ娘こそ現実では幻の三冠馬と呼ばれているフジキセキです。この辺りのジャンポケとフジキセキの関係性は私が語るまでもないとは思いますが、ここに私が見たのはアニメ一期のサイレンススズカとスペシャルウィークで、ここを敢えて焼き直しするという演出にグッときました。

このフジキセキ、現実の競走馬は4戦4勝で怪我によって引退し種牡馬入りしてしまったのですが、その勝ちっぷりから幻の3冠ファンの間から呼ばれています。
新時代の扉のフジキセキも4戦4勝した後、怪我をしてしまって、その後走るのを辞めてしまっていました。

そのフジキセキが復帰を決めるのがジャンポケが勝利した日本ダービーで、その決意を走りによって示し、不調だったジャンポケを導くという演出が最高でしたね。
フジキセキはアプリ版で持っていましたが、3冠路線かマイル路線かを問われる場面がアプリストーリーにあります。育成難易度からマイル路線を選んでいましたが、3冠路線しか選べなくなるぐらいには素晴らしいキャラです。

そのフジキセキと対になる存在が、タキオンなのですが、競走馬アグネスタキオンも4戦4勝で怪我によって引退、種牡馬入りします。しかもアグネスタキオンは父サンデーサイレンスで、フジキセキと同父になります。アグネスタキオンは3冠確実視されていて、恐らくここまで確実視されていたのは2000年以降なら、このアグネスタキオンと7冠馬ディープインパクトぐらいだったのではないでしょうか?

新時代の扉のタキオンも4戦4勝で、無期限レース休止を宣言し、「プランB」に主軸を移します。その最後のレースである皐月賞、その前のレースの弥生賞で、あまりの走りの凄さに、ジャンポケとダンツフレーム、マンハッタンカフェに強い残光を残すことになります。特にジャンポケはタキオンのレースで不調になってしまいました。

このプランB自体は実は、マンハッタンカフェ(以下カフェ)のアプリストーリーで登場します。プランAはアグネスタキオンのストーリーで登場します。このプランの詳細な内容はアプリでプレイしていなくても映画の内容は理解できるようになっていましたが、アプリをやっていればより深まると思います。
個人的な解釈では、最後の同期4人のレースは2002年有馬記念です。

で、このタキオンもジャンポケの走りによって、再び自分の脚で走ることを決意します。

こういう角度からのカットあったよねと思って撮った写真

このジャンポケとフジキセキ、タキオンの一見簡単に見えて、複雑な関係性を、現実の競馬を踏まえて再構成し、IFも描いた部分がこれまでのメディアミックスの集大成のように感じれて良かったです。

走るとは、ウマ娘とは


ここがしっかりしていたからこそ、この映画の芯がずれなかったと思います。

アグネスタキオン…可能性のその先へ。到達するのは誰でも良いって思っていたけど、それが自分じゃないと満足できないことに気付いた
カフェ…レース中、目の前に現れるお友達より速く走りたい。
ジャンポケ…最強になりたい。世代最強を決める日本ダービー、日本最強を決めるに値するジャパンカップを勝つ。
ダンツフレーム…走るからには勝利を(記憶曖昧ですが)

タキオンとカフェ、ジャンポケは走る理由が明確で、勝利の先を見ているのが印象的で、これだけだと感情移入できない部分もありますが、ダンツフレームは才能あふれる同期たちに引けを覚えながらも勝利を目指す姿に感情移入しやすいという対比が良かったと思います。

アニメ一期ではサイレンススズカが先頭の景色を見るために、2期ではトウカイテイオーが奇跡を見せるために走ったように、勝利の先を見据えたわかりやすい演出があったからこそ熱いストーリーに感じました。

最後に

大分文章量が多くなってしまったので、ここまでにしたいと思います。
また映画を観に行ってから、今度はそれぞれのウマ娘について書ければと考えています。
滅茶苦茶面白かったので、映画是非観に行ってください!

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