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ショートショート

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5秒で結末を迎える140字小説〜中編小説まで「ふふっ」「おおっ」「なるほど」「そう来たか」と思える作品をまとめています!
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#毎日投稿

『らしさ』ショートショート1

「最近のお前はさぁ、なんていうか、らしくないぞ。元気ないのか?ん?冗談言ったり、笑顔振りまいたりするのはどうした?営業成績にも出てるぞ。悩んでることがあるなら話してすっきりさせよう」 今までは達成できていた営業目標の未達が続き、部下の業績達成が上司の評価に繋がることもあって、上司が声をかけてきた。 「いえ、大丈夫です。今月は必ず達成してみせます」 「そうか。じゃあ、明日までに達成させるためのプロセスまとめて、形式は何でもいいから俺に提出してくれ」 「わかりました。明日

『落ちる』#ショートショート

「落ちて嬉しいものは恋ですかね」 キメ顔で語る。 甘い。パンケーキにハチミツとチョコレートソースをかけて、さらにキャラメルソースとイチゴソースをかけたくらい甘い。 恋は落ちれば落ちるほど辛くなることを知らぬとは。 私は受験も就活も恋も落ち続けたプロ。 テレビで恋について語る推しに沼る。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】落ちる、そして沼る。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショート #140字小説 #小説 ▽▼not

『暑かったら脱げばいい』#ショートショート

「今日は夏日なので上着はいらず半袖で過ごせそうですよ」 昔の天気予報はこんな感じだったらしい。 暑かったら脱げばいい。 今も変わらないといえば変わらないが、昔の人はきっと考えられないだろう。 「今日は夏日なので全裸で過ごせそうですよ」 地球温暖化が進み半袖すら着ない。 暑かったら脱げばいい。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】どこまで続く、温暖化。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショート #140字小説 #小説

『ラブソングつくってみた』#ショートショート

ラブソングを作る。 恋愛なんてしたことがないけれど。 知らないから、知るために曲を作ってみようと。 歌うのは好きだから。 「浮かばん」 経験がないものを生み出すのはこんなにも難しいのか。 半ば諦めてChatGPTに訊ねる。 【ラブソング 作詞】 秒で良い感じの歌詞が作られた。 AIのくせに愛を知るとは。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】AIを知る者。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショート #140字小説

『上司を呼んでくれないか』#ショートショート

「上司を呼んでくれないか」 神妙な面持ちでお客様が私に声をかけた。 さっきの接客に対するクレームか。 「すみません。私が上司です。何かありましたか?」 「じゃあ社長を呼んでくれないか」 激おこ案件か。 「社長も私で」 「え?そうなの?偉い人に良い接客だったと褒めたくて!」 ややこしい!のは私か。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】上司は、私です。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショート #140字小説 #小説

『ジェネレーションギャップ』#ショートショート

「面白い企画思いつきました!地図に向かってダーツを投げて、刺さったところに行くのはどうですか?」 テレビを観ない世代とのギャップか。 その企画、知ってる。 意気揚々と彼は続ける。 「第一街人発見!みたいな!」 だからそれ。 「えいっ!おっ冥王星!行ってきてちょーだい!みたいな!」 宇宙地図かよ! 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】日本列島ダ○ツの旅かと思いきや。銀河ダーツの旅。Z世代は銀河を目指す?ういういやいやいおーいえー♪(に聴こえる

『多様性』#ショートショート

「産休につきお休みを頂きます」 めでたい。 繁忙期だが仲間の祝い事を優先する社風。 「元気な子が産まれることを願っている」 後は任せろと送り出す。 男性の産休も認める多様性。 時は巡り。 「無事産まれました!」 「良かったな!」 「そしてすみません。また産休を取りたく」 多妻への多様性はまだない。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】受け入れられることは、心の余裕の表れ。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショー

『お母さんとお弁当』#ショートショート

「お母さんがいつもお弁当を作ってくれるの」 なんだか羨ましかった。 お弁当を毎日作ってもらえることも、母親がいることも。 早起きして作るのは大変そうだ。 私はお弁当を作ってもらったことがない。 母親はいない。 父親?はいるけれど。 父が作ったのは私。 「いってらっしゃい」 父は機械の私を送り出す。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】当たり前じゃないことを当たり前じゃない視点から。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショー

『好き嫌い』#ショートショート

ピーマンは好き。グリーンピースは嫌い。 オムライスを食べ終えた皿が緑一色になる日常。 お肉は好き。お魚は嫌い。 「ごちそうさまでした」 こちらをじっと見つめるししゃも達に向かって感謝を述べる。 彼は好き。彼の彼女は嫌い。 「さようなら」 天を見つめピクリとも動かなくなった彼女へ別れを告げた。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】ミステリー?やバッドエンドを書く機会がなかったので、練習の一本。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #

『世界三大美人』#ショートショート

「楊貴妃、クレオパトラ、あと一人は?」 「わたし」 「うるせぇ」 幼馴染との何気ない会話を思い出した。 間髪入れずに世界三大美人に並ぼうとした姿勢は認めてやろう。 小野小町が美人ではなかった説も考えると、実在する幼馴染のほうが……。 なんてことを思ったっけ。 世界三大美人と結ばれ、5年目の春。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】心の美人さ。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショート #140字小説 #小説 ▽▼n

『鳴かぬなら』#ショートショート

「鳴かぬなら焦らしてしまえ時鳥」 誰だよ。 3人の戦国武将の性格を表した句は知っている。 これは4人目。 聞いたことがない。 鳴くまで待とうっぽいのにどこかサディズム感がある。 「焦らして」に「しまえ」が付いているからだろうか。 性格というより性癖では。 そして知った。 3武将の1人の別の顔だったと。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】「鳴かぬなら晒してしまえ」も別の顔。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショー

『酒は飲んでも飲まれるな』#ショートショート

「酒は飲んでも飲まれるな」とは良くできた言葉で。 これまで何度、飲んでは飲まれてきたことか。 「うるさい!」と叫びたくなった日も。 「ばかっ」と口にして涙を流した日も。 「ダメだ」とくじけそうになった日も。 気を強く持つために。心を安定させるために。 力を借りてきた。 今日も溺れよう、養命酒。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】溺れるほど。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショート #140字小説 #小説 ▽▼n

『いってしまった』#ショートショート

「いったか」 一羽のハトが大空へ飛び立つ姿を見届けながら彼は呟いた。 「いったね」 彼の視線の先を追いながら私は彼に言葉を返す。 「まさかこんな日が来ると思ってなかった」 「私も」 雲一つない青空。 翳りが見られるのは私たち二人の関係性。 「あなた、いったわ。寝言でミクちゃんって女性の名前を」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】いった、いわない、いった。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショート #140字小説

『思い出、買います』#ショートショート

思い出、買います。 過去の記憶を買い取ってくれるらしい。 売った記憶は元には戻らない。 誰かに買われるとその人が経験したことになるようだ。 買取価格は様々。かけられた時間やお金、思い出により動かされる感情の幅や深さなどで算出される。 10年付き合った恋人との思い出は1000万円の査定。悩む。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 【あとがき】もしも、思い出を売れたなら。売りたい思い出、ありますか? 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 #ショートショ