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死刑とは


! この記事は、日本の法制度に関しての疑問について書かれており、死刑囚の人権を無視する意図はありません。


 「法務大臣は死刑のハンコを押したときだけニュースになる」という発言を受けて、それ以外でもニュースにしてあげるというおもてなしの心が見られた2022年でした。

 いまだに政治家の本音は、票と金が興味の中心なんだなぁと思ってしまった出来事ではありましたが、一方で、法務大臣の仕事ぶりを疑うような、未執行の死刑囚はたくさんいらっしゃいます。Wikipediaによると、2022年7月26日時点で収監中の死刑囚は106人。2022年に執行されたのは1人だけです。

 2011年に死刑が確定した死刑囚の人数が非常に多いのですが、これは、大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件の3名、大牟田4人殺害事件の4名と、複数人の死刑が確定した事件があったことが原因です。

死刑執行数(nippon.com編集部作成)


死刑確定年と人数(Wikipediaより集計)

 刑事訴訟法では、死刑確定後6カ月以内に執行するように定めています。本当に日本の死刑制度が正しく、死刑判決が公正なものであったとして、ここまで未執行が多いのはおかしいのではないかと思ってしまいます。重ねて言いますが、これはあくまで、日本の法制度が議論の余地のない、一点の曇りもない完璧なものであると仮定しての話です。

 最も古い方は、1970年に死刑が確定しているのですから、50年以上収監されているわけです。これでは、日本の法制度に問題があると考えざるを無いと思います。死刑を執行できない死刑判決とは何なのだということです。

再審請求

 死刑が執行できない一番の理由は、再審請求という制度があるからです。死刑執行されていない死刑囚のほとんどは、再審請求中か、再審請求の準備をしているということです。

 再審請求中には死刑執行できないという法律はありません。2017年に執行された西川正勝死刑囚は再審請求中だったのですが、「執行引き伸ばしを目的に繰り返される再審請求を考慮しない」という態度で執行されたのではないかと言われています。

大臣の信条

 その時時の法務大臣の信条にも左右されます。2005年から法務大臣を務めた杉浦正健氏は、彼の信条を理由に10ヶ月の在任期間中執行はしませんでした。

健康上の理由

 本人の病状が良くないため、死刑が執行されないという例もあります。ガンや老衰で病状が重くなっている場合、執行されないまま死亡するケースがあります。

死刑制度存廃の議論

 死刑制度を廃止すべきという議論は、以下の根拠が挙げられています。

  1. 野蛮であり残酷である

  2. 死刑の廃止は国際的潮流

  3. 憲法36条の「残虐な刑罰」に該当する

  4. 誤判の可能性がある

  5. 犯罪抑止効果になっていない

  6. 犯人は被害者・遺族に被害弁償し、生涯にわたって罪を償わせるべきだ

  7. 更生の可能性がある

 一方で、死刑制度を存続させる立場では、以下の理由が挙げられています。

  1. 殺人は自らの命で償うべきだ

  2. 極悪非道な犯人は死刑にするのが国民の一般的な法的確信だ

  3. 最高裁判所の判例上、死刑は合憲である

  4. 死刑以外の判決においても誤判はあってはならない

  5. 死刑制度の威嚇力は犯罪抑止に必要

  6. 被害者・遺族の心情は死刑を必要としている

  7. 凶悪な犯罪者の再犯防止のために死刑が必要

※法務省「死刑の在り方についての勉強会」の取りまとめ報告について - 資料4死刑制度の存廃に関する主な論拠, 2012-03-09

 一番の議論すべきところは、裁判の判決は絶対なのかというところだと思います。誰にでもミスはある、裁判官も人間であるということを認めるのか、裁判官は常に正しいとするのか。

 確かに、誤判の可能性が全くない事件もあるとは思いますが、判決時にそれがわかるのなら死刑判決を出していないでしょう。判決後に誤判かどうか決めるのは裁判を行うしかないわけですから、堂々巡りになってしまいます。

 また、死刑になりたいから犯罪を犯すという、抑止力どころか犯罪を誘発しているともいえる事例があることも見過ごせません。

死刑囚の日常

 死刑囚は個室です。入浴も一人で行います。また、自殺や病死しないよう気を配られています。とはいえ、面会はほぼ認められず、会話もなく過ごします。

 このような状態で人間としての心が壊れてしまわないかと心配してしまいます。また、再審で無罪が確定した場合、普通の生活に戻るのは難しいと思います。

犯罪者だけでないトータルケアを再考

 死刑制度を再考するとき、犯罪と裁判についての問題が取り上げられますが、収監中の生活を含めた死刑囚の扱いをトータルに検討することが必要だと思います。

 犯罪者の人権をどう考えるのか、死刑囚と他の犯罪者の扱いは。また、在留資格のない、あるいは失効した外国人の扱いは、正しく行われているのか。先入観や偏見などの人権侵害が行われていないか。見直すべき問題はあるはずです。

 元ナチ親衛隊のアドルフ・アイヒマンは、自覚なき殺戮者と呼ばれています。我々は、このような犯罪者とならないために、すべきことを考えましょう。


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