刺青の社会
入れ墨は、比較的簡単に行うことができます。古くから、入れ墨が行われていたことが確認されています。
しかし、入れ墨を消すのは非常に困難です。皮膚の表面を削り取ったり、皮膚の切り取り、皮膚移植などが行われます。美容外科でのレーザーを使った色素分解を行う方法もあります。レーザー除去には死ぬほどの痛みが伴い、複数回行います。健康保険適用外であるため費用も高額になります。
ネットで「素早く、きれいにタトゥーを除去することができます」という美容整形外科の広告を見ることがありますが、個人差もあり、きれいに消えることはまずありません。
入れ墨の意味
入れ墨は、お守りや願い、誓いなど、宗教的、精神的な意味合いがあります。また、集団への帰属を示すために使われることもあります。ギャングやヤクザなどの犯罪組織では、入れ墨を入れることでメンバーシップを示しています。
一度入れると消すことが難しいという特徴があるため、追放者、奴隷、囚人などに犯罪者の印(Criminal Tatoos)として入れ墨を行うことは、日本だけではありません。
アメリカでの就職への影響
アメリカは、入れ墨には寛容だと思われるかもしれません。
Pew Research Centerが2006年に実施した調査では、アメリカでは4500万人が少なくとも1つの入れ墨をしており、年代で見ると18歳から25歳までの36%、26歳から40歳までの40%になります。
顧客対応のある仕事を行う場合、入れ墨やピアスを禁止している企業もあります。採用マネージャーが入れ墨のある人を雇用する可能性は低いと認識されていました。
雇用主が、年齢、性別、障害、出身国、性的指向によル差別を防ぐ法律がありますが、入れ墨やボディピアス、髪の色を理由に雇用しないことから保護する法律はありません。
マイアミ大学のMichael T. Frenchは、入れ墨が雇用に与える影響を調査しました。入れ墨をした従業員の賃金と年収は、入れ墨のない従業員の賃金と年収と同等か、場合によっては高い可能性があるとの結果がでました。
現在のアメリカ社会では、入れ墨は社会生活にほとんど問題を及ぼしません。それでも、入れ墨に対する差別はゼロではありません。
日本での入れ墨に対する制限
日本社会は、入れ墨に対して批判的で制限の多い国です。
まず、温泉、銭湯、プール、ジムなどの施設に入ることを断られます。ただし、小さなものであれば入れ墨を隠すシールを貼ったり、特殊なボディ・コンシーラーを塗る方法もあります。
また、バイトの採用や就職で不利になります。見えない場所の入れ墨で、面接でバレなくても、後で退職になるケースもあります。
日常生活でも、周りの目は否定的なことが少なくありません。友人や恋愛などの人間関係を築く際にも問題となります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/senshoshi/59/7/59_542/_pdf
タトゥーOKの温泉
小さい刺青の場合シールを張って隠せばOKという温泉もあります。また、非常に目立たないように作られたシールを貼って、特に断りなく入っている人もいるかと思います。
外国人観光客を呼び込もうという政策の中で、入れ墨をした外国人が温泉を楽しめないというのは、寂しいのではないでしょうか。
見た目の問題、つまり刺青が他のお客に恐怖感を与えるという問題が正論のように取り上げられていますが、もう一度考えてみれば、黒人は温泉を利用してはだめという理屈に近いのではないでしょうか。良かれと思って作った「外国人専用温泉」などというものは、明らかに人種差別なのです。
刺青を入れている人は反社会的勢力に参加されている方が多いからというのも、おかしな話です。反社会的勢力の方の入浴を禁止したいのであれば「反社会的勢力の方は入浴禁止」とすればいいのであって、入れ墨を入れている人を禁止するのは理屈がおかしいと言えないでしょうか。
私はもっと外国人に温泉を楽しんでもらいたいと、熱く思っているのです。
「入れ墨者」は、江戸時代に入れ墨の刑を受けた前科者を指します。
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