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読書めも『笑うマトリョーシカ』早見 和真 (著)

私の読書メモをまとめてみました。実際に書かれている内容とは異なる部分があります。本に何が書かれているかを知るためには、やっぱり、自分でちゃんと読むことをお勧めします。

著者

 早見はやみ和真かずまささんは、1977年に神奈川県横浜市で生まれました。2008年に『ひゃくはち』でデビューしています。

 いずれの作品も、登場人物のリアルな描写や、秘められた感情が細かく描かれています。

ドラマ

 TBS系「金曜ドラマ」枠で放送中です。物語の中心となる清家一郎を演じる櫻井翔さんは、原作者の早見氏さんも清家という人物を書く際、櫻井をイメージしたというだけあって、ぴったりな役です。

 すごく面白いドラマだけど、どうもしっくりこない。清家という人物のディテールが櫻井翔のイメージが被さってきて損なわれている気がします。おまけに、ドラマの演出がサスペンス調なのも違和感があります。

 これは、原作を読むしかないと思いました。

小説

 ドラマでは、東都新聞文芸部の記者、道上が主人公となって話が進みます。全体的にドラマのほうは、サスペンス仕立てにするための演出が多すぎる気がします。一方、小説のほうは、清家一郎の語り、鈴木俊哉の語り、道上香苗の語りなど、様々な登場人物の視点から物語が語られていきます。語り手が変わるところで戸惑いますが、すっきりした構成になっていると思います。

 清家一郎は、政治家、それも官房長官を目指し、更に総理大臣になることを目標としています。彼の才能は、まるで中身がスカスカに見えるのに、ブレーンの与えた指示を完璧に、それ以上に演じ切ることができることです。

 鈴木俊哉は、高校時代にその才能を見抜き、清家を見事生徒会長にすることに成功します。そして、大学卒業後も清家のブレーンとして、彼を操ることに夢中になりますが、次第に清家の中に自分以外の人がいると感じるようになっていきます。

 「優秀な政治家というものは往々にして瞳に感情が宿っていない」。政治家という人間は、優秀なブレーンに操られ、舞台上でカリスマ性を発揮して演じることが大切なのか。政界という魑魅魍魎の世界で“ニセモノ”が”ホンモノ”を淘汰して出世していくのか。”ホンモノ”、”ニセモノ”とは何なのか。

 サスペンス要素はスパイス的に盛り込まれていますが、政治家として生きるとはどういうことか。様々な人の支えを糧に大きな目標に向かっていく人の生き方を考えさせてくれる物語でした。そして、清家一郎の物語は、ノンフィクションかもしれないと思わせる怖さがあります。

エリック・ヤン・ハヌッセン

 エリック・ヤン・ハヌッセン(Erik Jan Hanussen)は、本名はヘルマン・シュタインシュナイダー(Hermann Steinschneider)と言います。オーストリアの手品師で、とりわけ「透視能力者」として知られました。

 ハヌッセンはナチ党を支持しており、ユダヤ人であることは公然の秘密となっていました。彼は、アドルフ・ヒトラーのお抱えの予言者となり、ヒトラーの演説にボディ・ランゲージを指導しました。

 しかし、ナチ党の権力掌握後の1933年3月25日に突撃隊によって妻と共にベルリンで暗殺され、遺体は郊外のシュターンスドルフに捨てられました。暗殺の理由は、ヒトラーがハヌッセンに危機感を抱くようになったという説が一般的です。

 他にもゲッベルスとヘルマン・ゲーリングの権力争いに巻き込まれたという説、あるいはユダヤ人であることが政治的リスクとみなされ排除されたという説、ハヌッセンに対してかなりの負債を抱えていたへルドルフ伯爵が、負債の清算のために殺害を命じたという説もあります¹。


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