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だれもが自由で平等でいられる社会を目指して #おうちでプライド 【対談】福山哲郎×松中権 4月25日

例年行われていた東京レインボープライドが、新型コロナウイルスの影響で中止になり、今年はSNSを中心に #おうちでプライド が盛り上がりを見せています。今回は、ゲイアクティビストの松中権さん(ごんちゃん)をお迎えし、コロナ禍で、LGBTQの方々がどのような状況にあるのかについてのお話も伺いました。

※対談の様子はこちらからご覧いただけます。

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本来の自分自身に自信をもって生きていく

福山:まずは、現状についてご説明をお願いします。それから、世界や日本では、このレインボープライドのパレードに歴史がありますが、詳しくない人もいると思うので、その歴史を説明してください。

松中:まず、パレードについて。パレードは51年前に始まりました。ニューヨークの「ストーンウォール・イン」というバーがLGBTQの人たちが集まる場所になっていましたが、差別や偏見が酷く、警察も嫌がらせをしていた。警察に対して堪忍袋の緒が切れて、「自分たちがここに生きていることを伝えよう」と夜に歩き始めた。それが、パレードのスタートです。ニューヨークから始まり、世界中で行われるようになりました。プライドというのは「自分のことにプライドを持とう」ということから来ていて、LGBTQには大事な言葉です。これまでは本来の自分を隠していつわりの姿で生活をしているというのが当時のLGBTQの人たちで、「自分にプライドを持とう」となっていった。そして、そのうちパレード自体をプライドとも呼ぶようになりました。

福山:最初からパレードをプライドとは呼んでいなかった?

松中:最初は、パレードとかマーチとか呼んでいました。でも、最近ではニューヨークプライドとか、アムステルダムプライドとか、東京レインボープライドとか、パレード自体がプライドと呼ばれるようになりました。応援してくれる「アライ」(LGBTQを支援する人)の方も一緒になって世の中に情報発信していく、そういうようなことも大きく「プライド」と言うようになりました。26年前にスタートした日本のプライドですが、今年はコロナでキャンセルになってしまいました。でも、ぜひLGBTQのことを考えていただきたく、今年はオンラインでやろうということで、「#おうちでプライド」という企画を東京レインボープライドの皆さんが立ち上げました。おうちでも、仕事場でも、みんなでGW中、性の多様性、LGBTQのことを考えましょうという企画がスタートしました。

コロナによって浮き彫りになるLGBTQの人たちの不安と問題

福山Marrige For All JapanでLGBTQの方々への緊急アンケートもされたと聞いています。どんな問題が現場で起こっているかなど紹介いただけますか。

松中:Marrige For All Japanは、日本で同性婚=結婚の自由をすべての人に、ということで活動している社団法人です。4月6日からインターネットで緊急アンケートを開始し、200人以上が回答してくれました。当事者やまわりの家族、友人なども含めてアンケート調査を行いました。コロナ拡大において、同性同士の結婚が認められていないために困っていることが具体的にあるかというのが最初の質問です。これに対しては、入院・緊急・万一の時に連絡がとれるかの不安を抱えているというのが一番多かった。同性カップルは日本では結婚ができないので、パートナーが病院で緊急で運ばれると、ずっと一緒に暮らしていても赤の他人として扱われるのではないかという不安があります。あとは、パートナーが感染したときに自分は濃厚接触者となる。でも、まわりにカミングアウトをしていない人も多いのです。そうすると、強制的にセクシュアリティのことが家族・友人など世の中に知られてしまうのではないかという不安もあります。

福山:一点目の、入院等で家族扱いしてもらえるかどうかという不安。これは、これまでも病気や入院の時に課題としてあったことです。ただ、濃厚接触を追う、感染経路を追う、という問題が出てきたことで、今までとは違った形の問題になってますね。

松中緊急時にこそ見えてくる課題もあります。次の質問は、当事者として抱えている不安や困難はないかという質問でした。カミングアウトが1番にあがってきました。他の人のカミングアウトを強制してしまうのではないかという話もありました。濃厚接触者の問題で、誰と接触したか伝えないといけなくなるとアウティングを起こしてしまう不安があると。「アウティング」というのは望まない形でセクシュアリティをカミングアウトすることですが、アウティングで、まわりをまきこんで起きてしまうのではないかという心配があります。

福山:アウティングのリスクが今までより高まるということですね。

松中:そうです。もちろんみなさん命を守らなければいけないので伝えなければいけない情報です。ただLGBTQのプライバシーの話にも関わる。緊急時にはそうしたことがないがしろにされてしまう可能性があります。さらに、LGBTQに対する誤解や差別がうまれるのではないかという不安もあります。かつてHIV/AIDSの時に「ゲイの癌だ」という言動もあり、差別的なことが助長されました。緊急時にはマイノリティに対する差別や人権侵害が起きやすい。今回もそうなるんじゃないかという不安があるのです。

福山:差別や偏見は、ひとりひとりの寄り添う気持ち、想像力の問題だと思っています。危機の時にこそ、社会が理解をしなきゃいけないってつくづく思う。苦しさや生きづらさみたいなことに社会全体として寄り添っていかなきゃいけない。

松中:ありがとうございます。LGBTQの中にも特に声があげられない方々がいます。ユースとか、カミングアウトをしていない人、彼らは困っているということが伝えづらい。ユース世代だとどうしてもカミングアウトをしていない子が多くて、学校や家庭に自分の居場所がありません。LGBTQに差別的な感情を持つ親御さんも多く、そうするとステイホームもしづらい。そういう子たちへのサポートもコミュニティ・社会としても大切だと思います。若い世代はどうしても世界が狭く、サポートが得られにくく声があげづらい傾向にあります。

こんなときだからこそ、相手を思いやり共感することが大切

松中政府や公的機関にどういうことを求めるかという質問に対する答えには、一番目に生活保障とか資金援助が来ています。そして、同じくらいに、同性婚の実現や婚姻平等法の法制化をしてほしいという声があります。例えば新宿2丁目という場所が、世界でも有数のLGBTQの方々が過ごしやすい場所になっています。飲み屋も多く、小さなお店も多いので、事業者が苦しんで、お店を閉じなきゃいけない状況になっています。そういうところをどのようにサポートしていけるかという話があります。そこに来ていたお客さんもおうちや職場で自分の事を出せないけど、そこなら自分を出せる。救われる場所、居場所がなくならないようにということで、「セーブザ2丁目」という動きも始まっています。

福山:こういう危機の時だからこそ、同性婚の実現化や婚姻の平等の法制化という思いがより強くなるんですね。

松中:いい話もあります。同性同士で子育てをしているカップルも増えています。ただ、その場合には、結婚できないので、どちらかの子どもではあるがパートナーにとっては法的には赤の他人扱いになってしまってたりもします。そうなると、休校のために仕事を休めるのかとか、コロナに対する各種制度を家族として使えるのかという話が出てくる。それについてMarrige For All Japanが問い合わせしたところ、法的な子どもじゃなくても、子どもを育てているということがわかれば助成金を受給できるということでした。

福山:それらの給付や対応等については、差別と区別がないような状況で制度を作らなきゃいけませんね 。

松中:本当にそうです。無戸籍の子どもでも払おうという話も出てきていて、抜け落ちてしまう人が出てきた時に、そういうケースをひとつひとつ拾ってくれるという動きがあるのはありがたいです。

福山:10万円の給付は、一括給付にするとスピードは早いけれども、それではお金が届かない人がいて、多様な家族のあり方があることがわかりました。DVの方に関しては総務省や自治体が努力をしてもらえることになりました。声をあげてもらいながら一つ一つ寄り添えるしくみを作っていかないとと僕らも考えています。一方で、街では差別やヘイトが行われている現実がある。例えば医療従事者に対する差別や、そこで働いてる看護師さんのお子さんに対する差別とか、非常に残念で悲しくて、なんとか一緒に闘っていきたいと思っています。そういうことについては、どうですか。

松中:みんなこういう状況では、ほんとに自分のことで精一杯ってなる。でも、ちょっとだけでもいいから、自分が見えていないところで苦しんでいる人がいないかを想像することが大事だと思います。LGBTQに関しても身近にいるけれども見えていないことがある。そういう時に想像力が助けになります。こういう時だから思いやりや想像力が大切です。

同性婚で不幸になる人はいない

福山:世界では同性婚がほぼ当たり前になってきています。私も外務副大臣として外交している時に、「あの大臣はLGBTQですよ」って紹介されたり、パートナーを紹介されたり、何度もそういう場面がありました。世界中がこういう状況だからこそ、日本の現状を変えていくような動きを作りたいです。

松中:本当に。遅れている遅れていないという話ではなく、基本的な人権の話です。みんなが平等に持つべき権利の話。

福山:実現したいですね、はやく。

松中:本当に、したいですね。たくさんの方々が幸せになるだけで、不幸になる人はいない。なんで幸せになることをみんなで手をつないで進めていけないかともどかしく思います。ピンチはチャンス。今年の東京レインボープライドチームのテーマである「Your happiness is my happiness.」ということで、コロナがきっかけで他の人の幸せを考えられるような動きがうまれたらいいなと思います。こういうタイミングだからこそ、同性婚のことなどを「それはおいといて」とはせずに考えてほしい。

福山:今日は、ありがとうございました。みんなで、LGBTQのことや、差別のない社会のことを考えて、多様性について理解が深まるような、「おうちでプライド」がそんな1日になればいいと思います。


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