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UTMF2022を振り返る(レース編)

前回の続き。
例によって面白おかしくドラマチックにはせずに淡々と。あと「フォロワーの〇〇さんと会いました」的なのもバッサリ割愛。

・スタートまで


そもそも前日よく眠れなかったんだよね。前泊しないのをいいことに普通の人は水曜日に済ませる荷造りを木曜の晩までやってたし。日常の疲れが全然抜けてないので悪あがきでMSMの極楽湯で朝風呂して20分ぐらいうたた寝してから車でサポーターの家へ。
そこから運転変わってもらって途中ドリンクとか買い物しつつ富士山こどもの国に。サポーターが抗原検査受けに行ってる間に着替えとかテーピングとか。
上半身はドライレイヤー+ノースリーブ、下は短パン。
当初前半シューズはInov8のトレイルタロン290を予定してたけど天子山地迂回を受けてよりロード走れるa6のフジライト2に変更。ロードシューズへの変更も考えていたんだけど、サポーターさんに意見を求めたところ「トレイルシューズにしとくのが間違いない」だったので。
テーピングは足首に伸びない自作Xテープを1枚ずつ。両膝にニーダッシュ1枚。
荷物の最終仕分けが終わった頃に抗原検査クリアしたサポーターが駐車場に戻ってくる。プランAで進行、ヨシ!ウェアと食料・サプリほかサポートエリアに向けた最終ブリーフィングを行った。
だいたいの方針は愛鷹山や箱根でハイキングを兼ねた打ち合わせをしていたのでスムーズだった。
給油用のエネキーと買い物用のチャージ済みトイカも預けた。

しかし駐車場から荷物預け・スタートエリアまでが遠かった。
ドロップバッグは預けず、フィニッシュ地点用の荷物(サンダル、汗拭き、キリンラガー350ml)のみ。←意味不明なこだわりだったw
結構暑い中散々歩いてもうへとへとだったぜw

3時前には第1ウェーブスタートブロック後方へ。
そして開会式。

・スタートからU1富士宮

スタートマットをまたいだときはなんとなく泣きそうになった。なんなら目に涙浮かんでたかもしれない。
ここまで長かったからな。8年前まだフルマラソン数回走る経験はあったけど、たまたま近いからレジャーのつもりで西富士中学校でのエイドボランティアに参加してから長かったから。そこでチャレンジすることを決めてポイントを集めて濁流のSTYに参加してから5年半だからまあまあ長い。
KDR基調林道とロードだけど調子に乗って飛ばさない。KDRはもう両手ダランで腕振りさえせずに寝て進む。なにしろ寝不足だしな。
でも送電線区間はまあまあラギッドだった。難所を越えるのに若干の待ち時間はあったけれど、全然停滞というほどのこともなく。ウェーブスタート最高かよ。
ちなみにこの区間で嬉しかったのは8年来のマドンナMRIAYK様と前後して走れたことです本当にありがとうございました。

U1 in 17:46(2時間16分4秒)out17:49(2時間19分8秒)

エイドの滞留時間は人生の滞留時間。コーラ飲んでバナナ一本食べた。日没に備えてヘッドライトを取り出して装備した。

・U1富士宮からU2麓まで

今回問題の天子まるっと迂回して田貫湖畔からふもとっぱらに抜ける区間。
気づけば心拍150台のウルトラマラソンペースで走っている。
やや寒くなってきたので林道区間でザックおろしてウインドブレーカーを着用。その際にハンドライト落としてしまう。幸い200メートルぐらい戻ったら回収できた。
しかし。開催前ギリギリにポチったソフトフラスクの調子が悪い。吸っても中身出るときと出ないときとあるし。一度に吸える量もすごく少ない。こんなんずっと使ってたら脱水になると思った。やっぱりぶっつけ本番で投入してはいけない。

U2 in 20:37(5時間07分44秒)out20:50(5時間20分33秒)


YKSB

焼きそばと大福受け取ってマイカップにメダリスト一杯もらってサポートエリアに。「予定通りに進行してるよ」と。
予め決めてあったことだけをする。
・半袖に着替えとアームカバーの追加
・ソフトフラスクまるごと交換
だけを行なった。スタート時のソフトフラスクは今後使わないということで方針の変更も。

U2麓からU3本栖湖まで


この区間なんかあったかな。あった。YMKNさんにパスされたわ。

U3 out 23:00(7時間30分02秒)

水飲んでトイレ行って身延饅頭3つぐらいポケットにつっこんでGOです。

U3本栖湖からU4精進湖まで


中ノ倉峠あたりでKBRKさんに追いつかれた。いくつか言いたいことをぶちかましたけど秘密❤
※2022/8/2追記
この時の模様がNHK・BSの「グレート・レース」に隠し撮りされて全国に垂れ流されていた件
周りで円盤焼ける人さがしたり、家族に再放送の予定をお知らせしたりしてプチ祭りなのだが、これはもしかして孔明の罠ではないのか。


だが徐々に調子が悪化してきた。
眠い。脚張ってきてる。天子周辺の林道で水たまりに突っ込んだ左足に水ぶくれが出来はじめている。

U4 in 1:41(10時間11分55秒) out 3:34(12時間4分27秒)


待 た せ た な !
ここのエイドの使い方は今後を決めるので。
サポーターエリアでザックを下ろしてサポーターにやること宣言。

・救護所でマメをなんとかする。
まずは救護所で、マメ出来てて痛いんすよなんとかしてクレメンス。
救護「テーピングでぐるぐるにしようか」
BNC「とにかくこの後痛くないようにしてください」
救護「えっ。何言っちゃってんのあと100km走ったら痛いに決まってんじゃんプゲラ」
BNC「デスヨネーwww」
結局水で洗ったあとにキネシオで拇指球部分をまるごと覆ってもらったんだけど、その後痛くなることはなかった。というかむしろフィニッシュ後にテープ剥がしたら治ってた。
いやマジ本当にありがとうございました。感謝しかありません。

・マッサージガンでハムとふくらはぎほぐす。
https://twitter.com/take_shiiit/status/1517548762922582016

・そしてバナナの夢を見ながら2時間寝る!
https://twitter.com/take_shiiit/status/1517552212787941376

マットと寝袋を預けてあったし、体育館まで行く気力がなかったので結局やや寒かったけどサポートエリアでそのまま寝たんだけど。これは今にして思えばあまり良くなかったかもしれない。大会の趣旨としてはサポートエリアは譲り合って使うものなので。
あとから見たら結局1時間半ぐらいしか寝てなかった模様。
しかしこの睡眠は2時間の回復効果があったはず。だってずっと「2時間寝たから大丈夫」と言いまくってたし。

後で聞いたけどエイド入ってきたときは足引きずってるわ生気ないわでこのレース中一番やばい状態だったらしいwww
結局ここでシューズの交換もした。Inov8のトレイルロックG280。
チップの付け替えもヘッデンの電池交換もサポーターにやってもらった。

U4精進湖からU5富士急ハイランドまで

「2時間」寝た割にはあかいけから鳴沢までの上りロード区間は全然走らない走れない。ガスってるしで半分寝たままちんたら歩く。
氷穴からトレイルに入る頃夜が白み始めてきてようやく目が覚めてくる。

足和田山のトレイル、試走してなかったんで今回はじめてだったけど本当にごきげんな山だった。
河口湖市街地のロードに出る頃にはすっかり元気になってまずまず走れるようになっていた。
これが復活か。

U5 in 7:30(16時間0分36秒) out 7:48(16時間18分58秒)

ハイランドエイドに入る直前のBNC選手(写真提供 RMT氏)

これいい写真だよね。年賀状に使いたいぐらい。

赤いきつね食べながらサポーターからこの先のコースのレクチャーを受けたり。
・忍野エイドまで途中の鐘山苑からのトレイル区間は意外と時間かかる。
・忍野から山中湖は本当にすぐ。
わかった。それからさ、土曜日の宿のチェックインは14時で予約してるけど、忍野通過の様子見て臨機応変に対応してね、あとごめん摂取す一本買ってきてexpoで売ってると思うから。せっかくだしトップのフィニッシュとKAIのスタートも見てってよ。次のエイドお稲荷さん食べたいからコンビニで買ってきてねよろしく。
じゃあ行ってくるぜ。(マッサージガンは使いました)

U5富士急ハイランドからU6忍野まで


エイドでひっつかんだジャムパン食べながら歩道橋渡ると共同代表のFKDRKさんがグータッチで選手を送り出していた。ここでも言いたいことをガツンと言ってやったぜ秘密だけど。
なんか気温上がってきて暑い感じがあるけどロード区間しっかり走って忍草山へ。

見たかったんだろ、この富士山。

ここでは誘導のボランティアさんが写真撮ってくれた。「朝から何百人撮ったかわかんない」ってw。色々注文つけたけど本当にいい写真撮れたよ。ありがとう。

U6 in 10:53(19時間23分05秒) out 11:02(19時間32分00秒)

全然調子いいので忍野エイドで長居する理由がない。コーラ飲んでタッチアンドゴー。

美脚の無駄遣い(写真提供Mobo氏)

U6忍野からU7河口湖きらら

暑さを感じるようになってきたのでエイド出るときに手ぬぐいを濡らしてサンバイザーに引っ掛けて二等兵スタイルにしたんだけどあっという間に乾いたわw。まあでも首の後ろを日差しから守れるしいいや。大平山も平尾山も控えめに言って最高よな。天候に恵まれないことの多いUTMFでこれってまあまあすごいわ。

そこでずっと富士山と山中湖見ていたい気持ちもわかる。

平尾山から山中湖村市街地に降り始めると、頭の中はコンビニのことで一杯になった。このレース中で唯一立ち寄りを許されている平野のセブンイレブン。その時何を食べたくなるのか、レース前ちょこちょこ考えていたんだけど。正解はアイスでした。
がーりがーりくんがーりがーりくんがーりがーりーくーん!(なお本当はクーリッシュが良かったんだけど売ってなかった)

振り返ってみればこのレース中ただの一度も気持ち悪いとか吐きたいとか食欲ないとかなかったので、胃腸の強さには自信が持てました。ただしおならはめっちゃ出た。トレイルの上りでおならするときは後ろの人に大変気を使いました。「ごめんおならするよ!」ていちいち宣言したから許してくれよ。

U7 in 12:59(21時間29分36秒) out 13:22( 21時間52分30秒)

最終サポート地点。エイドの豚汁とコンビニのお稲荷さんをチャージ。「復活したよ」サポーターに言う。忍野の通過も予想より早かったし尻上がりに調子が上がっている。なんなら宿のチェックイン時間より前に山中湖ついてしまったわけで。「このまま押して行けば土曜日のうちにフィニッシュできちゃうよね」マジかでもそうしたいな。
マッサージガンでケツハムふくらはぎを念入りに。ちなみに前腿には全然疲れはないよ。KDRで踏ん張ったりしないから。
でもここからが本当のUTMF。

走れるとこアピールしてと言われて(写真提供サポーターAKMT氏)

U7山中湖きららからU8二十曲峠

きらら出るときにくれいじーかろ選手にパスされた。いいもの見れました。
たぶんランナーとしてジャンルが違うんだろうけど、フレッシュな時のKDRならワンチャンあるかな。
そしてこっからが本当のUTMFです。
こっからが本当のUTMFです。
(大事なことだから二度言いました。)
明神山の上りとかはまあ無になって脚だけ前に出せば進むんだけどさ。
御正体山の上りとかもうただの登山だよなこれ。中止になった去年のレース前に試走してクソ捻挫して松葉杖になったから知ってんだけどさ。
ここから徐々にKAIの選手たちが増えてくる。「KAIの選手来てるから譲ってあげて!」とかUTMFの選手に声かけたりしてな。なるべくお互い気持ちよくレース楽しみたいですからねー。楽しみたいですからねー。

石割山でKAIのまあまあ速い選手が後ろから「すいませーん」と来るからとりあえず譲ったんだけどさ。そこで火がついたよ。だってKDRマジでヘタクソなんだもん。

をう、ヲレはクダリバンチョー。(スラムダンクは偉大である)

ヲラヲラ煽っちゃいましたぁ❤

U8 out 17:03(25時間33分12秒)

クソみたいなNBRをいくつもこえて二重曲がり。
あとから聞いたらKAIの選手何人も脱水熱中症でやられてここでリタイアしたっていう話なんだけど、適当にお菓子ひっつかんで杓子山アタックだ。

U8二十曲峠からU9富士吉田

杓子山の岩場を登る途中で日が暮れた。
この岩場の登りで雨が降っていたら本当にやばかったと思う。だってそんなスキルないもん。これ2019に雪の中登った選手いんの?頭おかしくない?
弱い人間なので他者を貶めることで無駄にポジティブになることにして自分を騙しながら登った。「ここが幻覚じゃない本当の杓子山頂ですか?」とか言ってスタッフさんのウケを狙う。
闇の中ライトを頼りに下る杓子山は本当にテクニカルだった。ロープをつかみ、木の枝を掴みながら滑るサーフェスと滑らないサーフェスを選んで前を行く選手を何十人もパスするのは完全にテトリスだ。たぶんこれゾーンに入ってた。

でもそこまでだった。
杓子からの下りで脳のバッテリーを使い切った。トレイルを下りきって林道に出た途端全く走れなくなった。道端に座ってカフェイン入のジェルを飲み込んで脳をだましながら明見湖に向かうので精一杯だった。

U9 in 20:38(29時間08分23秒) out 22:08 (30時間38分43秒)

「富士吉田で1時間ぐらい仮眠していきます」サポーターにDMを打ったんだけど。送信ボタンさえ押し忘れるほど電圧下がってた。スマホのタイマーセットして仮眠テントで1時間。エイドのうどんを一杯食べてから熱い紅茶を飲んだ。
行こう。続ける理由ならたくさん積み上げた。止める理由は一つもないからな。

U9富士吉田からフィニッシュ富士急ハイランド

富士吉田の市街地を抜けて霜山へ。

霜山は展望もなにも望めない、ただただ登らせるばっかりのまずまずのクソ山だ。通過が真夜中でよかったわ。明るい時間に通ったら「なんでこんなことやってんだろ」になりそう。
ようやく登りきって「あとは下りだけ!」とかスタッフさんに声かけられるんだけどさ。完全にトレランレースあるあるだよね。やっぱり上り返しあんじゃないかよ。登るたびに文句言って下りでは奇声をあげてぶっ飛ばした。
天井山の最後のトレイルを抜けて、富士急の踏切が見えたときはスタッフさんに軽口を叩いたよ「もう終わり?あと100マイルぐらい走ってもいいぜ?」ごめんなさいウソつきました。
前後の選手との間隔を気にしながらコニファーフォレストに入る。どうやらこれならまずまずのゴールができそうだ。
ゴールの作法って人によって違うと思うけど。ヲレはまあまあ貪欲に走って終わりたいんだよ。でも他の選手が写真に写るのに邪魔にならないようにはしたいんだ。

フィニッシュ1:11(33時間41分47秒)


オッサンの写真掲げてフィニッシュするオッサンの動画をキャプってツイートするヒマなオッサンおったわ(感謝)。え。こんな遅い時間にゴールテープあんの?FKDRKさんグータッチしてくれんの?
フィニッシュしたらサポーターだけでなく知っている顔が何人も待ち構えていてくれた。

目から汗がこぼれてないか確認してから顔をあげよう(写真提供GroundRoofさん)

3年ぶり開催のUTMF。
濁流のSTYからは5年半が経った。
いつか走ろうとチャレンジしようと決めてからは8年かかった。まさかそんなに時間かかるとは思わなかったよね。

色々な経験をしたし沢山の人と会ったし。走れるのに機会がないときも深刻な怪我をして走れないときもあったけれど。無駄な経験は今思えば一つもしなかった。
8年前はUTMFフィニッシュしたとき自分が何を感じるのかなんて考えもしなかった。UTMF完走してもヲレという人間はなにも変わらない。一昼夜と一晩かけて98マイルを走ったことで変わることなんて一つもないけれど。たぶん8年かけて自分を少しずつ変えたんだとおもう。
チャレンジしたときには想像さえしなかったフィニッシュだったから。


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