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【2021年版】イップスを公言してるプロ野球選手がイップスをどう思っているのか③

今回が最後です。

この記事では
・イップスは治らないと思う理由
・イップスの研究は進んでいる
・最後のまとめ
について書いてあります。

前回までの記事はこちらです。

イップスは治らないと思う理由

イップスに悩んでる人や周りにイップスに悩む選手がいる人なら「イップスはどうやって治すの?」という疑問をもって当然だと思います。

ネットで調べてみると、イップスを治し方に関する情報が出てくるので、実際に試した人もいるかもしれません。

ただ僕はこう思ってます。
「イップスが治ることはない」

そう思う1番の理由は、僕が今でもイップスに悩むことがあるからです。
イップスを公言したあともプロ野球選手としてプレーを続け、1軍で結果を残すことができた期間も少しはあるので、周りから「もうイップス治ったでしょ」とよく言われます。
どう思われてるかは知りませんが、僕の中では確実にイップスは存在してるんです。

2年前(2019年)のシーズン途中、僕は腰椎の椎間板ヘルニアになりました。
練習中に高いバウンドのゴロを捕ろうとして腰を反ったことが怪我の要因です。
リハビリから復帰したあともヘルニアを発症したときと同じ「腰を反る動き」に対する不安が消えませんでした。

・投げるとき
・ジャンプするとき
・ベースカバーに入るとき
など、たとえ試合中であってもスムーズに動けないことは結構あります。

よく聞く「うまく投げれるか不安」によるイップスではありませんが、僕のなかでは腰を反る動きもイップスの1つだと考えています。
「もともと無意識でできた動きが、何らかの原因でできなくなる不安症の一種」がイップスの定義ですからね。

じゃあなんでイップスを持ちながらそれなりのプレーができるかというと、考え方を変えたからだと僕は思ってます。
「イップスを克服しよう」から「イップスとうまく付き合おう」と思うようになってからプレーが変わっていきました

今は「イップスが出るのは仕方ないけど、うまく付き合ってアウトに繋がるプレーをしよう」と心掛けています。

新しい不安や大きな不安を感じたとき、不安症としてイップスになってしまうのは自然なことでしょう。

でも今の僕はたとえイップスになっても昔ほど乱れない自信があります。
知識や技術である程度カバーできると思っているからです。

・不安に押し潰されそうになったらどうするか
・フォームをどこでチェックするのか
・痛みが出たらどう対処するのか

僕はイップスになったことでたくさんの人や本に教わりました。
また新しいトラブルや不安に出会ったときは、知識を得ながら「どのようにカバーすればいいのか」を考える日々を送っています。

おかげで初めてイップスに悩んだときより、ものごとを前向きにとらえて行動できるようになりました。
成長を実感しています。

イップスをカバーするために得た知識や技術は、僕にとって宝物です。

イップスの研究は進んでる

さいごにイップスの研究が進んでいるという明るい話で締めようと思います。

先日、大学時代からお世話になっている石原心(いしはらしん)さんからLINEが来ました。

「イップスの共同研究で論文が発表されたんだけど、イップス界で大きな一歩になるよ!」

石原さんはトレーナーをしながらイップス研究に努め、イップスに関する本を出版されたり、イップス研究や改善サポートを行うチームをつくったりされてる方です。
僕はイップスで悩んでいたとき、石原さんにも相談しました。

論文は石原さんや広島大学大学院医系科学研究科の渡邊龍憲助教授たち研究グループが発表したものでした。
個人の経験でしか語れなかったイップスに医学的な根拠がつけられるようになったんです。

これまで「自分はイップスだ」や「彼はイップスに違いない」みたいな判断しかできませんでした。
イップス体験談を語り合って解決策を探すレベルだったのかもしれません。

だから
・イップスなのに見逃してしまう
・イップスじゃないのに間違った指導をしてしまう
・イップスがどれだけ改善できたか判断できない
・イップスの正しい対処法が検討できない
という問題があったそうです。

今回の研究によって、脳活動をみることでイップスかどうかの判断ができる可能性があるかもしれません。

イップスを発症しているアスリートでは、動作開始時に特徴的な脳活動がみられる

ことを明らかにしたからです。

たとえばボールを投げるときにイップスを発症する人は、動作をしようとする直前から脳に特徴的な信号がみられます。

もし投げ方を改善できたとして、本人が「もうイップスは治ったよ」って思ったとしても、ボールを投げようとする瞬間に同じ脳活動が見られたら「ボールは投げれるようになってきたけどイップスに特徴的な脳波はまだ出てるね」ってことになるでしょう。

今の時点で、僕は「イップスは治らない」と思ってますが、脳活動でイップスかどうかを判断できるならイップスを治す方法が見つかる日も遠くないかもしれません

イップス研究がこれから更に進むと思うと、ワクワクします。

さいごに

3記事に渡って僕のイップスに対する思いを書いてきましたが、いかがでしたか?

ここまでイップスについて深く考え、整理したことがないので僕にとっても貴重な経験になりました。
やってみて良かったです。

サクッとまとめます。

●イップスとはどんな状態なのか?
イップスは「もともと無意識でできた動きが、何らかの原因でできなくなる不安症の一種」です。結構あいまいなところがあり、イップスかどうか判断するのは難しいと思います。

●イップスはそんなにネガティブじゃないと思う理由
理由① ほとんどの人がイップス持ちだから
不安は誰でも感じます。だからほとんどの人が小さなイップス持ちだと考えてみてください。

理由②たくさんの気づきを得られるから
イップスになったことで気づけることもたくさんあります。僕はむしろイップスに感謝することもあるくらいです。

●イップスは治らない
今の僕でも軽いイップス症状が出ることがあります。「イップスは必ず治る」って言ってる人がいると不信感を抱きがちです。

●イップスの研究は進んでいる
イップスかどうかを脳活動で判定できるようになりそうです。イップスの医学的な対処法が見つかるかもしれません。

今回の記事を通して僕からお伝えしたいのは、イップスは身近にいるけど怖いものじゃないよってことです。

イップス(不安)が悪いのではありません。
付き合い方次第だと僕は思っています。

僕もまだまだなところがたくさんあるので、こうやって発信しながら成長していきたいですね。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。
引き続きよろしくお願いします。

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