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福田フクスケ2017年の仕事まとめ

明けましておめでとうございます。新年早々ではありますが、2017年に俺が手がけた主な仕事を、自分自身の自己顕示欲を満たすためにまとめておきたいと思います。

俺は、ライターのくせに筆無精なせいで、ブログもやっていなければ自分の仕事をアーカイブすることもしていないのですが、本来は、「いい原稿ならどんだけ昔の仕事であろうが何回でもコスってほしい」と思っているMOTTAINAI精神の持ち主であり、雑誌やネットの記事が一回読まれて終わりになってしまうのはコスパ悪すぎだろと思っているフシがあります。

味がしている限りは何度もしがんでもらいたい、と言いますか、納豆を食べたあとパックに残った“粘り”だけでもう一口ご飯いけるだろ、と言いますか、とにかく「せっかく書いたんだからまだ読んでない人がいるのはもったいないので、こういう機会に読んでほしい」という思想の持ち主なんですね。だから、以下にアーカイブした福田の仕事で知らなかったものがあったら、ぜひ読んでいただき、おもしろいなと思ったらいつも何度でも、ネットの海にまた放流していただけたら幸いです。

では、時系列順にいきます。

【1月】

連載「ドラマ男子の言い分」
『スーパーサラリーマン左江内氏』定点観測(小学館「テレビPABLO」1〜3月連載)

第1話/責任回避の“さえない男”…でも実は意外と勝ち組じゃない!?
第2話/現代のヒーローは「解決」ではなく「調整」がお仕事
第3話/現実 VS 虚構のはざまを飛び越える“シン・ぱるる”が大暴走!?
第4話/男には「守り・受け身・サポート」で輝く道だってある!
第5話/グチを言うときが一番楽しそうな左江内の“奇妙な夫婦愛”
第6話/「稼いでやってる」ではなく「稼がせてもらってる」 小泉今日子がずばり指摘!専業主婦家庭の本質
第7話/賀来賢人がのびのび演じる新境地!? 調子に乗った“ウィケ杉”が大暴走!
第8話/永野芽郁もときめいた!? 仕方ないと受け入れる左江内の“受け身の生き方”
第9話/出世競争をモチベーションにできない、左江内の“働き方改革”とは?
最終話/“責任”は男を社会に繋ぎとめておくための鎖である

小学館のWEBメディア「テレビPABLO」で連載させてもらったテレビドラマの定点観測コラム。毎クール1本の連ドラを全話レビューするというもので、その1本目が『スーパーサラリーマン左江内氏』でした。正直、坂元裕二や宮藤官九郎の脚本作品のように深読みできる要素があんまりないドラマだったので、毎回かなり無理やり「男性学」的なアプローチに寄せて書きました。
でも、スーパースーツという「男らしさ」の鎧(=外からの理不尽な強制力)を与えられないと、「責任」を引き受ける決断力や主体性(=父性)を持てない…というのが男性の本質的な脆弱性なのではないか、という見立ては我ながらうまいこと言えたと思います(自画自賛)。

◎ちんぽが入らなかった男と女の知られざる事情 松尾スズキ×こだま(扶桑社「週刊SPA!」1/24売号エッジな人々掲載)

「週刊SPA!」でお世話になっていた編集者の担当書籍だったこともあって、'17年はこだまさんの『夫のちんぽが入らない』に関する取材や記事をいくつか担当させてもらいました。その中でも、敬愛する松尾スズキさんとこだまさんの対談を担当させてもらった思い入れ度の高い仕事。下記リンクから冒頭部分だけ読むことができます。
大ヒット話題作「夫のちんぽが入らない」の作者・こだまの素顔に松尾スズキが迫る!

【2月】

すべての人が“入らない”人生を生きている――話題の本の著者・こだまさんに聞く(WEBメディア「TOFUFU」掲載)

かなり前にこだまさんへの取材は済んでいたんですが、前から知っている仲だったので妙にまったりした取材になってしまい、おまけに俺がなかなか原稿を書かないでいる間に、他媒体での取材記事がすっかり出揃ってしまって。もう並大抵の記事じゃ目立たないぞと思って、インタビューを大きく逸脱した、半分書評みたいな不思議な記事になりました。でも、結果的に近年書いた原稿の中でもっとも力の入ったエモい文章になったと思います。こんな書き手のエゴとエモが前面に出た原稿を許してくれたこだまさんとTOFUFU編集部に感謝ですね。

◎ヴィオラになって高橋一生に弾かれたい!(マガジンハウス「GINZA」3月号ロマンスに気をつけろ!特集に掲載)

もともとは、恋愛が難しくなっている今、どうすれば恋愛は復権できるのかをおもしろおかしくギャグ混じりで書いてほしい…という依頼だったのですが、原稿の冒頭にほんのマクラとして書いた「高橋一生は、そのサイコパスのような冷たい目つきと、エイの裏側のような人懐っこい笑顔との間に、『心ここに在らずの空虚な色気』という行間を読ませる」というくだりがTwitterで話題になり、togetterでまとめ(下記リンク)も作られました。この一文だけがきっかけで3月の「女子SPA!」の原稿依頼にもつながったという意味では、燃費のいい仕事ですね。
高橋一生の人懐っこい笑顔が“エイの裏側”のようだと話題に

◎連載「ドラマのようには生きられない」Vol.2
女子会はやめなくていい!ドラマ版「東京タラレバ娘」は、アラサー女子の不幸を癒せるのか(ハースト婦人画報社「ELLE ONLINE」連載)

海外セレブのネタとかを扱うイメージの強い「ELLE ONLINE」で、海外感もセレブ感も微塵もない俺がドラマについて考察する連載です。『東京タラレバ娘』は、ただでさえ原作が脅迫ビジネスだと批判されて炎上気味だったのでどうなることかと思っていたのですが、ドラマ版はいい意味で全方位を敵に回さないよう「日和った」のが逆に功を奏した感があります。結局、原作もネット上の批判を取り込んだことで、あの穏当な結末に落ち着いた気がするんですよね。

◎僕がヤケクソで「100%富裕層向け映画」を撮ったワケ 山内ケンジ◉劇作家・映画監督(扶桑社「週刊SPA!」2/21売号掲載)

有名CMを数多く手がけてきたCMディレクターの大御所が、遅咲きで演劇を始めたらそっちも才能があって、岸田戯曲賞を最高齢で獲っちゃったという稀有な人。なんというか、もともと文化資本に恵まれていてお金に困っていないからこその「好きなことにこだわってのびのび才能を発揮できる感」がみなぎっていて、まさに「貧すれば鈍する」の逆をいくような人でした。下記リンクから冒頭部分だけ読めます。
奇才・山内ケンジが明かす「100%富裕層向け映画」を撮った本当の理由

◎『ロマンス暴風域』連載記念・鳥飼茜連続インタビュー企画(扶桑社「日刊SPA!」「女子SPA!」掲載)
日刊SPA!
・前編:「男はかわいい女の子ならばなんでもOK?」気鋭の漫画家・鳥飼茜が男の単純さを問う
・後編:「風俗は男性にとっての避難所」鳥飼茜が考える男女間のギャップとは
女子SPA!
・前編:なぜ男は風俗に行くのか。漫画家・鳥飼茜が考える
・後編:風俗に行く男は風俗嬢に共感している!? 漫画家・鳥飼茜が男目線で気づいたこと

鳥飼さんに取材するのは、WEBメディア「AM」で初めてお会いしたのをきっかけに、「週刊SPA!」の「エッジな人々」でのロングインタビューを経て、このときが3回目。『ロマンス暴風域』の宣伝を兼ねた記事で、1回の取材を「日刊SPA!」(男性向け)と「女子SPA!」(女性向け)に書き分けるという、ちょっとトリッキーなことをやってます。
男性は、決して自分を傷付けてこない保証のある女性を求めているという意味で「風俗は男の避難所だ」という鳥飼さんの見立てが秀逸。さらに、自分が受け入れがたいことの中にも共感できる部分を見つけたいから漫画を描いている、という鳥飼さんがかっこよすぎでした。

大喜利だけが生きていることを実感できる場所だった――“伝説のハガキ職人”ツチヤタカユキが戦い続けた“カイブツ”の正体(扶桑社「日刊SPA!」掲載)

大喜利に日常生活のすべてを捧げ、極限まで自分を追い込んで有名ハガキ職人になった末、某漫才コンビの座付き作家にまで登り詰めたツチヤタカユキ氏。純粋すぎるがゆえ狂気にも似たストイックさで周囲から孤立し、破滅的な生き方を選んでしまうその壮絶な半生を描いた私小説について取材しました。
こだまさんにしろツチヤさんにしろ、最近話題になったネット発の私小説に共通するのは、「そういう風にしか生きられなかった」人たちの物語だということ。「そのときはそうするしかなかった」の連続が人生なのだと、ひしひしと痛感します。

【3月】

高橋一生になぜ女性は萌え死ぬのか。その“魔性”の正体(扶桑社「女子SPA!」掲載)

あえてこれを俺の'17年のベストワークとさせていただきたいくらい、俺が本来書きたい方向性や文体にいちばん近い文章が書けた原稿です。「ネオえくぼ」とか「枯れショタ」とか「空虚デレ」とか、とにかく俺はこういうことだけを一生書いて暮らしていきたいんですよね、本当は(笑)。その割には、これ以降全然書けてないんですけど。タレント評みたいなのは定期的に書きたいので仕事ください。

幻冬舎『芸人式 新聞の読み方』(プチ鹿島・著)に編集協力

コラムニスト部門のベストワークを高橋一生コラムとすれば、こちらは書籍構成部門のベストワーク。といっても、プチ鹿島さんはご自身でメルマガなどに膨大な量の原稿を書いている方なので、俺の作業はそれを再構成するだけだったんですが。鹿島さんはこれ以降、時事芸人としてテレビに出演されることがグッと増えました。「情報は信用するのではなく利用する」「美談とヘイトは紙一重である」といった本書のテーゼは、今年になっていっそう必要とされる主張になりましたね。関われてよかった本です。以下のリンクから中身の試し読みができます。
「幻冬舎plus」の試し読み連載はこちらから

◎連載「ドラマのようには生きられない」 Vol.3
だから、そういうのを楽しむドラマなんです――「カルテット」は灰色のパセリたちへの賛歌である(ハースト婦人画報社「ELLE ONLINE」連載)

2017年のベストドラマといっても過言ではない『カルテット』の劇中に、これでもかと詰め込まれたイメージの連鎖や、ディテールの豊かさについて解説しました。Twitterで毎週更新していた感想ツイートの集大成のような内容で、このドラマに関してはこれで「書き切った」感があります。作品を超えた坂元裕二論みたいなものはいつか書きたいです。

◎湯山玲子×森林原人 セックス対談(扶桑社「女子SPA!」3〜4月掲載)
・Vol.1:セックスに愛情や承認を求めるな!世の中をもっと低く見積もろう
・Vol.2:友達とのワンナイトだってアリ!“愛情と性欲は別”を自覚せよ
・Vol.3:日本の男性の性欲はデリケートすぎる!悪いのはAV?
・Vol.4:セックスは、孤独を引き受けて生きていくためのツールです

こちらは、対談部門のベストワークですね(しつこい)。湯山さんは一歩間違うと女性の自己責任論やシバキアゲになりかねないことをときどき言うんですけど、それでもある種の本質を突いているとは思います。特に、「恋愛やセックスに承認を求めすぎるな」「自分を低く見積もるのではなく、世界を低く見積もれ」「恋愛には、女が進んで男尊女卑にハマっていくような罠が仕掛けられている」といった指摘は、なんだかんだ慧眼だと思いました。

【4月】

◎桐谷ヨウ(ファーレンハイト)×福田フクスケ×川崎貴子対談(WEBメディア「ninoyaブログ」掲載)
・第1回:男性はなぜ結婚にコミットしてくれない?男が感じる“責任”と“負担”とは
・第2回:男性を結婚から遠ざける“モテたい”という呪いと“35歳ピーク説”という幻想
・第3回:恋愛は“男女の社交術”にすぎない? 結婚には人として向き合う“自己開示”が必要
・第4回:男にとっても女にとっても理想の結婚相手は、“頼り上手”で“甘え上手”な“屈託のない人”
・第5回:“自分の壁”を越えてゆけ! 結婚の最大のメリットは人生の“共同経営者”ができること

ninoyaブログやキャリ婚というマッチングサイトを運営する川崎貴子さんからのお誘いで、「男が結婚の決断を鈍る理由」について桐谷ヨウ(ファーレンハイト)さんと対談させてもらいました。写真を撮られるとわかってたのに羽生善治なみの寝グセ名人になってる俺の頭に注目してください。
こういう「男の本音座談会」的な記事ってたいがい炎上しがちで、この記事でも「責任が重い」「まだモテたい」「頼ると依存するは違う」「男は屈託のない女の子が好き」とかさんざん勝手なことは言ってるんですけど、そこまで反感を買わなかったのは俺と桐谷さんの優れたバランス感覚(笑)、そしてなにより川崎さんのフォロー力のおかげだと思います。
あと、「人は結局、外部要因に強制されないと自分の限界を超えられないのではないか」という問題については、「主体性や自由意志こそ大切」という風潮の昨今だからこそ、ずっと考えていきたいテーマですね。

◎今、新聞をどう読むか? プチ鹿島×石戸諭(幻冬舎「幻冬舎plus」掲載)
・第1回:新聞が弱体化したから“文春砲”が目立つようになった!?
・第2回:『東スポ』の実力を見くびってはいけない
・第3回:社会問題を白か黒かで判断できるなら誰も苦労はしない
・最終回:時間と手間をかけて作られた新聞を今度もどんどん利用しよう

プチ鹿島さんの『芸人式 新聞の読み方』のプロモ企画として、元毎日新聞記者で現BuzzFeed Japan記者の石戸諭さんと対談した記事。右派も左派も、何かにつけて白か黒かで切り捨てようとする昨今だからこそ、「怒りながら疑うのではなく、半信半疑を楽しもう」という鹿島さんのスタンスが重要になってくるとしみじみ思います。

◎人類は恐竜のように絶滅の道をたどるのか? 小林快次◉恐竜学者(扶桑社「週刊SPA!」4/18売号エッジな人々掲載)

夏休みこども科学電話相談の「恐竜先生」としても知られる小林快次さんへのインタビュー。ある生態系の中でのぼりつめた強者は、かえって環境変動には弱い(だから多様性は重要)、とか、種にも寿命があって、人間もそろそろなんじゃないか、といった話が興味深かったですね。下記リンクから冒頭部分だけ読めます。
鳥は恐竜だ! 日本で初めて「恐竜の博士号」を取得した男が語る“恐竜研究の常識”今と昔

◎50歳で再ブレイクの真相 斉藤由貴◉女優(扶桑社「週刊SPA!」4/25売号エッジな人々掲載)

このときはまだ、斉藤由貴があんなことになるとは知るよしもありませんでした…。夫婦円満のコツとか聞いてる場合じゃなかった。下記リンクから冒頭部分だけ読めます。
斉藤由貴が“50歳で再ブレイク”した真相「父の一言がきっかけでした」

【5月】

◎連載「ドラマ男子の言い分」
『あなたのことはそれほど』定点観測(小学館「テレビPABLO」4〜6月連載)

・第1回:『逃げ恥』『カルテット』を超えられるか――“正しい恋愛”って本当にあるの?
・第2回:天然モテ男・有島光軌は“好きの搾取”ジャンキー!?――優しさと誠意のなさは両立できる
・第3回:キラキラ変換する“少女漫画脳”――幸せよりドラマ性を求めてしまう美都の「恋愛エンタメ体質」
・第4回:「東出昌大の演技×涼太の狂気」の奇跡のマリアージュを見よ!――綺麗ごとばかりの“正しい夫”は息苦しい!?
・第5回:“幸せ探し”が覆い隠す黒い感情――涼太はなぜ“お天道様”にこだわるのか?
・第6回:母親譲りだった麗華の「帰る港」戦略――わがままを言えない有島と麗華の暴走が怖い!?
・第7回:美都と麗華は「似た者同士」――結婚相手は“なりたい自分”になるための道具!?
・第8回:麗華を羨みながら嫉妬する“モラハラ夫”に耐える隣人・皆美の闇――誰かの“正しさ”が別の誰かを追いつめるジレンマ
・第9回:美都だけが思いっきり「人間してる」!?――正しい規範と正しくない欲望に引き裂かれる自縄自縛の男と女
・最終回:『あなたのことはそれほど』は無理して結婚にコミットする不毛さをあぶり出した――最終回で視聴者の心に何を残したのか?

世間的にもそこそこ話題になったドラマについて、「自分で主体的にコントロールできているうちは恋愛じゃない」と考えてしまう美都のときめき至上主義の恋愛体質や、“優しい”がゆえにモテスキルを心なく繰り出すことができる有島の天然ヤリチンぶり、自分のネガティブな感情の扱い方を知らず、お天道様(世間の目)しか判断基準を持てない涼太、母親と同じ“弱い女”になりたくないあまり、自分の醜い感情にフタをしてきた麗華…など、登場人物の分析を通して、今の俺が持ちうる恋愛論をぶちこみながら書きました。ドラマは見ていいなかったけど、この連載を読んでドラマにも興味を持った、という方が何人かいらして、もっと評価されてもいい仕事だと思います(自画自賛)。
ドラマを全話レビューするのは大変だったんですけどやりがいはあって、ぜひ続けたかったんですが、俺が連絡を怠っていたら7月期、10月期とスルーされて、結局「テレビPABLO」が11月でサイトの更新自体をやめてしまうという残念な展開に…。全話レビュー、どこかでやらせてほしいです。

【6月】

◎連載「ドラマのようには生きられない」 Vol.4
私たちはなぜ不倫を許せないのか――「あなたのことはそれほど」は不倫ドラマを楽しむ視聴者をメタ批判する(ハースト婦人画報社「ELLE ONLINE」連載)

「テレビPABLO」で毎週さんざん書いた『あなそれ』について、こちらでもダメ押しのように書きました。このドラマは、単に不倫報道ブームの時流に乗っかったものではなく、①「誰かの“正しさ”は、別の誰かの弱さを追いつめる“強さ”になってしまう」という意地の悪い現実を描いてみせた ②不倫という“絶対悪”を“正しさ”の安全圏から叩きのめすことの快楽をメタ的に批判してみせた ③視聴者からの好感度ゼロの美都が、実はもっとも自分の快・不快に忠実で自己肯定感の高い“人間らしい”人物だった という3点において秀逸だった…ということを書いています。
当初はこの連載、月2回更新の予定だったんですが、私がちっとも書かないので1クールに1回になってしまい、業を煮やしたのか7月期からは編集の方からも連絡がこなくなってしまって今に至ります。すぐにでも再開する気はあるので連絡お待ちしています。…っていうか俺から連絡します、ごめんなさい!

【7月】

◎舞台『ベター・ハーフ(再演)』上演パンフレットの取材・原稿を担当

'15年の初演時も担当させていただいた鴻上尚史作・演出の舞台の上演パンフレットを、今回も続投させていただきました。プロデュースしているニッポン放送の担当者が、俺の小中学校時代の同級生だったっていうめちゃくちゃプライベートな縁故でもらった仕事なんですけど、風間俊介、松井玲奈、中村 中、片桐仁という錚々たる出演者にインタビューできる貴重な機会でした。

◎「人生のはじまり」って、いつだった? かっぴー/燃え殻対談(WEBメディア「cakes」掲載)
・第1回:トンカツを食べていても、ブタ側の気持ちを想像しちゃう自分
・第2回:自分を俯瞰から冷笑してくる“客観カメラ”との戦い
・第3回:「 俺の人生、意味あるかもしれない」と思えた瞬間

ネット発で作家になったお2人の対談をまとめました。お2人に共通しているのは、「まだ何者にもなれなかった自分」をめぐる物語を描いていることですが、創作についての自己肯定感というか、自分が表現活動をすることへのスタンスが本当に対照的でおもしろかった。今はネットがあるせいで「まだ何者でもない」の「まだ」と思っていられる年齢がどんどん高齢化していて、実際ネットのおかげでかっぴーさんや燃え殻さんは遅咲きできたわけですが、世の中のたいていの人は「もう何者にもなれない」のに「まだ」だと信じたまま年を取って終わっていくわけで、それはすごくネットがもたらしたぬるい地獄だなあと感じます。

◎恋も性も生活も……すべてを一人に求める結婚生活には無理がある!? こだま×渡辺ペコ対談(扶桑社「週刊SPA!」7/25売号カルチャーフェス掲載)

婚外恋愛を許可して、夫婦公認不倫をすることにした夫婦の物語『1122』を連載中の漫画家・渡辺ペコさんと、こだまさんとの対談です。「恋愛やセックスを基盤としない夫婦関係があってもいいのでは?」というのは、湯山玲子さん×森林原人さんの対談でもテーマになった、近年のホットトピック。ただ、夫に秘密にしている執筆活動がもはやアイデンティティのひとつになっているこだまさんが、「婚外恋愛とやっていることは同じ」と語っていたのが印象的でした。これって恋愛やセックスに限らず、「夫婦間で共有できない秘密の領域があるとき、それを外注するのはどこまで許されるのか」という普遍的な問題なのかもしれないと思いました。この記事は「女子SPA!」に全文掲載されており、下記リンクから読めます。
愛も性も、すべてを一人に求める結婚には無理がある【こだま×渡辺ペコ】

【8月】

◎なぜ銭湯のペンキ絵は9割が富士山なのか? 田中みずき◉銭湯ペンキ絵師(扶桑社「週刊SPA!」8/1売号エッジな人々掲載)

日本にいまや3人しかいないという、銭湯のペンキ絵を専門に描く絵師さんにインタビューしました。実際に銭湯での作業風景を見学させてもらったんですが、半日程度でサクサク描いていくのが普通らしく、みるみる絵が塗り替わっていく様子を見るのが圧巻でした。下記リンクから冒頭部分だけ読めます。
銭湯の背景画を描けるのは日本に3人しかいない…最年少の銭湯ペンキ絵師・田中みずきさんを直撃

◎ボクたちはみんな「人生に意味はある」と肯定されたかった――新人作家・燃え殻の“エモい文体”が必要とされる理由(扶桑社「日刊SPA!」掲載)

かっぴーさんとの対談に続いて、燃え殻さんに取材するのはこれが2度目でした。こだまさんにしろ、ツチヤタカユキさんにしろ、あるいは爪切男さんにしろ、得てして冷笑的なものが好まれるネット空間で、なぜネット発の私小説はどれも独特のエモさがあるのだろう、というかねてからの疑問について地の文で考察してみました。
今の時代、書き手も含めて、いったん「物語」というフィルターを通さないと自分の実人生を肯定できないんだろうなと思います。そういう意味では、何かと揶揄されがちな「インスタ映え」とかも、「実人生より“物語”の中で幸せでありたい」という願いの表れであって、そういう人たちのことをあんまり笑えないな、と思ったりもするのです。

【9月】

◎70歳になったら、オネエちゃんにまるっきり興味がなくなった 北野武◉映画監督(扶桑社「週刊SPA!」9/26売号エッジな人々掲載)

出版業界に関わって10年の俺ですが、取材していてトップクラスに緊張しました。大御所だから…というよりも、やっぱり本人から漂ってくる無言の圧やオーラみたいな凄みがはんぱなくて、「お前がいちばんアウトレイジだよ!」と心の中で思ってました。お笑いモードのときに会っていたらまた違ったのかもしれませんが、完全に監督モードだったので。
東京オリンピックの開会式の演出についての話題で、「宮本亜門と織田裕二が仲良く手を繋いで入ってくればいいんだよ」という発言を原稿にそのまま生かしてみたのですが、事務所チェックで当然カットされました。下記リンクから冒頭部分だけ読めます。
“世界のキタノ”が明かす人気シリーズ完結の裏話「ほとぼりが冷めたら『アウトレイジ リボーン』とかいって復活させようかな(笑)」

【10月】

◎太田出版『QuickJapan』134号の特集「新しい漫画家。鳥飼茜」に参加

本人インタビューとキーワード解説、それから著名人のコメント取りで参加しました。ご本人に取材するのはもう4度目なので、取材時のトーンというかテンションが「ご存知フクスケです」みたいな感じでややまったりしてしまい、ちょっと反省しています。
インタビュアーが取材相手に慣れていたり、全面的にコミットしたほうが良いインタビューになるかというとそうとも限らなくて、あえて「わかってない」人がズレたことをぶつけたほうが相手の想定外の引き出しが開いたりするんですよね。だからインタビューは難しい。でも、できあがった原稿はちゃんと鳥飼さんファンの痒いところに手が届く感じになったと思います(自画自賛)。

◎扶桑社「週刊SPA!」10/24売号にて、特集「急増する[新型依存症]が危ない」の編集を担当

10月から「週刊SPA!」の業務委託編集者になり、初めて手がけた特集です。以前、漫画家の田房永子さんの『キレる私をやめたい』というコミックエッセイを読んで、「やめたいのにやめられない」悪癖や悪習慣は、その人の過去の抑圧からくる認知の歪みに原因があって、精神医学的なアプローチで解釈できるのでは…みたいな話にすごく興味を持ったんですよ。で、時折しも斉藤章佳さんという方が『男が痴漢になる理由』という画期的な本を出されて、「痴漢は性欲由来の性癖ではなく、認知の歪みが引き起こす依存症だ」と書かれていたのに感銘を受けたので、そのお2人に取材しました。最終的にはいかにもSPA!っぽいセンセーションを煽る感じの内容にはなったんですけど、個人的にはすごく自分らしいデビュー戦を飾れたのではと思ってます。

◎扶桑社「週刊SPA!」10/31売号にて、カルチャーフェス「EXILE総出演の『ハイロー』は40代こそ絶対ハマる&ササる!」の編集を担当

ふじょしやオタクの界隈で「ハイローがヤバい!」という噂はかねがね聞いていたので、金田淳子さんとロマン優光さんにその魅力を語ってもらう対談を企画しました。実際の対談の現場では、まさにハイローフリーク同士のバチバチした感じもあり、劇中の細部を検討するマニアックなトークが繰り広げられていたのですが、誌面ではその100分の1しか原稿化できなくて残念でした。本当はマニアックな部分も含めて「日刊SPA!」に完全版を掲載したかったんですけど、俺がまだ慣れない編集の仕事にいっぱいいっぱいで、映画公開に間に合わせられずお蔵入りしてしまったのが非常にもったいなくて、お2人にも申し訳ないです。

【11月】

◎みんな売れちゃって、気軽におつかいも頼めない(笑) 松尾スズキインタビュー(マガジンハウス「an・an」11/29売号WHO'S HOT?掲載)

今年、仕事で松尾さんと関わらせてもらったのは、こだまさんとの対談に次いでこれが2度目。年末の「松尾会」(歴代担当編集者が集まって松尾さんの誕生日を祝う会)参加者なのに、めちゃくちゃ接点が少なかったので、2018年はもう少し大きい仕事で関われるようにがんばります。

【12月】

◎男女逆転で見えてくる「女が年下男子を飼いたくなるとき」ペヤンヌマキ×安藤玉恵(扶桑社「女子SPA!」掲載)

演劇ユニット「ブス会」を主宰するペヤンヌマキさんと、彼女と旧知の女優・安藤玉恵さんとの対談です。谷崎潤一郎の『痴人の愛』を男女逆転させるという秀逸な企画公演の上演にちなんで、「中年女性が若いイケメンを飼う」という欲望について話していただきました。10代の美少年をかわいいと愛でるペヤンヌさんと、その気持ちが「まったくわからない」という安藤さんの対比がおもしろかったですね。

◎扶桑社「週刊SPA!」12/12売号にて、特集「12月は[低収入男×非イケメン]が美女と付き合える!」の編集を担当

「美女はふだん、ごく少数のハイスペ男性に独占されているが、クリスマスや年末年始になると本命だけが選別されるので、市場には余った美女があぶれる。彼女たちには“高収入×イケメンは不誠実”というバイアスがかかっているため、12月は“低収入×非イケメン”にとってむしろチャンス」という要旨の、藤沢数希氏の理論をもとにした特集です。俺のふだんの芸風とあまりにもかけ離れているので、個人アカウントではいっさい宣伝・告知をしませんでした。そうです、俺はずるい男です。

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その他、「テレビPABLO」では鈴木おさむやバカリズム、井上由美子、玉山鉄二&佐々木希のインタビューをしたり、「週刊SPA!」では特集の記事原稿をたくさん書いたりしているのですが、キリがないのでここでは割愛しました。

一見してわかるように、'17年は上半期と下半期の仕事量の差がえげつないですね。理由は先述したように、10月から「週刊SPA!」で業務委託の編集者になって、裏方の仕事が増えたからなんですけど、それにしては7〜9月の仕事量の少なさが説明できない。本当は「テレビPABLO」も「ELLE ONLINE」も下半期ちゃんと書かなきゃいけなかったし、高橋一生コラム的なのも第2弾、第3弾…と続けて書くべきだったんですけど、持ち前の「催促されないとやらない」という悪癖のせいで、いずれもフェードアウトみたいになってしまったのは本当に自分のダメなところというか、「これだから書き手としていつまでも鳴かず飛ばずなんだよという弱点をもろに露呈した感じのまとめエントリになってしまいました。

'18年は、引き続きSPA!の編集を通して、おもしろいクリエイターの方をディレクションする編集者としての醍醐味も味わってみたいなと思いつつ、自分が書き手となる仕事もちゃんと続けますので、みなさま引き続きよろしくお願い致します。あと、Twitterで全然つぶやいてないのもいいかげんどうにかします。

下半期の仕事がスカスカなのは、決して猫を飼い始めたせいではありません!

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