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福祉の支援を振り返るときに注目したいこと

支援を求めている方たちが直面している課題はそれぞれ違いますし、「これが正解の支援」と答えが明確に示されるわけではない以上、日々の支援を振り返る、という行為はとても重要だと思います。
しかし、その「振り返る」ことって、実際はなかなか難しいのではないか、ということを前回書きました。

福祉の支援を振り返ることが難しいのはなぜか

今回はその続きで、では振り返りを行うときにはどんなことを気をつけるといいのか、ということについて、書いてみたいと思います。

そのときの言動だけでなく、価値観にも注目する

日々の支援を振り返るというとき、

「あのとき、あのようなことを言ってよかったのか?」
「とっさにあのような行動をとってしまったけれど、まずかったんじゃないか」

というように、そのときの言動ばかりに注目して振り返りをしてしまいがちですが、そういった言動はもしかするとその方の価値観に基づいたものかもしれません。

価値観とは、「それぞれの人が持つ、いい・悪いを判断する基準」なんて説明ができるかと思いますが、「こうあるべきだ」「こうでなければならない」といった表現で考えるとご自身の価値観に気付けるかもしれません。

私は、日々の支援を振り返るときにはそのときの発言や行動だけでなく、ご自身の価値観も含めて振り返ることが大切だと思っています。

というのも、この価値観って、ご自身で自覚している価値観もあれば、ご自身では気づいていない価値観もあったりします。ただ、気づいていない価値観であっても、そうした価値観に基づいた発言や行動をしているときはありますから、ご自身の価値観についての理解があまりない中で、そのときの発言や行動ばかりを振り返ったとしても、また同じような状況になれば同じようなことをしてしまうと思うんです。

それを避けるためにも、振り返りを行うときには

「そのときのご自身の発言や行動はどんな価値観によるものだったのか」「そのとき頭の中に、どんな「こうあるべきだ」「こうでなければならない」があったから、あのような発言や行動をしたのか」

といったところも含めることが大切だと思います。

価値観も含めて振り返ることで、「自分を全否定」を避けられる

私自身、価値観まで含めた振り返りをすることによって、そのときの状況により向き合えるようになった実感があります。

そのときの発言や行動だけに注目し、それが適切だったかどうかだけを考えていたときは、「ああいうときに適切な支援ができない自分には、福祉の仕事は向いていない」というように自分の全部を否定してしまう、ということもよくありましたが、価値観まで含めて振り返ることを心がけてからは、「あのときは、自分のこの価値観がに基づいて、こう判断したから、あのような行動をしたのか」というように、そのときの状況をより的確に捉えられるようになった気がします。

そうして状況をより的確に捉えられるようになったことで、「自分の全部がダメ」ではなく、「この部分が原因だったんだ」という振り返りができるようになり、少しずつですが改善がしていけたと思っています。

あとは、こうした振り返りは、自分以外の人の支援の振り返りをサポートするときにも大切なことだと思います。例えば後輩職員の方が適切でないと思われる支援をしていたとき、その行為だけを見て指摘するのではなく、その後輩の方の価値観に基づいた行動だったのかもしれない、と考えて、それを後輩と一緒に確認してみる、といったことができれば、より改善につながりそうですよね。


そもそも人は固有の価値観を持っていて、そうした価値観はこれまでその方がしてきた経験の影響を受けています。ということは、今後いろいろな経験を積んでいく中で、いまの価値観も今後変わっていく可能性があります。実際私自身も、福祉の仕事に就いたばかりのときの価値観と現在の価値観を比べてみると、変わっていないところもあれば、大きく変わったところもあります。それはこの間でいろんな方の支援をしてきたという経験も大いに影響していると思います。

だからこそ、そのときの言動だけでなく、そのときに影響を与えたかもしれない価値観も含めて振り返る、ということを、継続していくことが大切だと思います。そうした振り返りを続けていくことでご自身の価値観についての理解が深まっていけば、支援のときにも、その支援を振り返るときにも、行動の変化がきっと実感できるようになると思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは。