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福祉の支援を振り返ることが難しいのはなぜか

ここ最近私が担当させてもらう研修やワークショップは、支援に必要な知識やスキルを伝えるのではなく、「ご自身の支援を振り返る」ことが目的のものが増えています。

「よりよい支援のためには、日々の支援を振り返ることも必要である」ということに異を唱える人は少ないと思いますが、ただ実際に適切な振り返りができているか、と言われるとなかなか難しいのではないでしょうか。

その理由としては、「体制も限られている中では日々のやりくりだけでも精いっぱいで、振り返りをしている余裕なんてとてもない」というのが1つあると思いますが、私はこれとは別の理由の影響も大きいと思っています。

それは、振り返ることで「見たくなかったものに目を向けることになるかもしれない」ということです。

福祉の現場での支援は状況判断の連続です。そのときにはとっさにそういう対応をしたけれど、あとで冷静になれば「もっとこうすればよかった」ということがわかる、なんてことは珍しくないと思います。だからこそ振り返ることでそれに気づくことが大切なわけですが、やり方を間違えるととてもきつい行為になってしまいます。


2つの「陥りやすい振り返り」

私自身もこれまでいくつかの現場で支援に携わってきましたし、現在はフリーとしていろいろな法人さんと一緒に仕事をしてきましたが、「支援を振り返る」ということについて、私は「陥りやすい振り返り」が2つあると思っています。

1つは
自分の支援を正当化する振り返り

もう1つは
自分を責めるばかりの振り返り

です。私自身も実際にこうした振り返りをしていたときもありました。


「自分の支援を正当化する振り返り」とは、そのときの支援に改善の余地があったかどうか考えることを避け、「あのときはああするしかなかった」というように結論付けるための振り返りで、「自分を責めるばかりの振り返り」は、自分ができていなかった点ばかりに注目してしまう振り返りです。

こうした振り返りって結構「あるある」なのではないでしょうか。


そして、こうした振り返りをしてしまう方は、いいかげんな姿勢で支援をしているのかというとそうではなく、むしろまじめに支援に臨んでいる方ほど多いような気がします。

福祉の支援のやりがいも責任の重さも痛感しているからこそ、「もっと改善の余地があった」と受け入れることはこれまでの自身の支援を否定することにつながるような気がしてしまい、受け入れることが難しい。

支援の責任の重さを理解しているからこそ、「あの方がいまこういう状態になってしまったのは、自分のあのときのあの対応が原因だ」と、自分の行為ばかりに注目し、強く自分を責めてしまう。


もちろん福祉の仕事は責任の重い仕事だと思いますし、「正解の支援はこれ」と答え合わせをすることも難しい以上、日々の支援を振り返り、改善を重ねていくことは大切なことだと思っています。ただ、責任の重い仕事だからこそ前述のような振り返りに陥ってしまいやすいということは、十分に気をつけないといけないと思います。


いま行われている「支援の振り返り」は、「自分の支援を正当化する振り返り」や「自分を責めるばかりの振り返り」になっていないか、ぜひ「支援の振り返り方」を振り返ってみていただければと思います。