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こんな「現場の声を聴く」なら、やらないほうがいい


福祉分野の法人の代表の方や施設長の方とお話をしていると、「現場の声を聴く」といった言葉を耳にすることがよくあります。

福祉の現場で働く方たちの声をしっかりと聴く、ということについては、もちろん私もとても大切なことだと思いますが、ときどき、「そういう捉え方なら、むしろやらないほうがいいのではないか」とモヤモヤしてしまうような「現場の声を聴く」もあります。



その1 考えることや決める責任から逃げるために、現場の声を聴いている

「現場からこういう声があがっているから」という理由で意思決定をする、というのは一見すると現場の人たちに寄り添った行動に見えるかもしれませんが、本当にそうでしょうか。

「そういった声がある」ということを受けて、そうした声があがってくる背景、構造を考えずして、あがってきた声にただ従う、というのは、自分で考えられない、もしくは決められないことを、現場側に押し付けている」行為のように思えます。



その2 大きい声や自分に都合のいい声だけを聴いている

「現場の声」と一言でいっても、いろいろな声があると思いますし、そもそも自ら声をあげられる人ばかりではないと思います。さらにいろいろな声がある、ということは、こちらにとってはあまり聴きたくないような声も含まれている可能性もあります。

そうしたことを考えずに、こちらまで聴こえてくる声や耳障りのいい声だけを聴いている。そんな「現場の声を聴く」は、実はけっこうあるのではないでしょうか。



その3 声を聴くだけで結局何も変わらない

「現場の声を聴く」ということ自体が目的になっていると、聴いた側は、「こうやって声を聴いてもらえたら、きっと現場の人もうれしいよね」なんて思ってしまうかもしれません。

しかし、中にはうれしいどころか「せっかく忙しい中時間を割いたのに」「勇気を出して声をあげたのに」といった、むしろマイナスな気持ちになっている人もいると思います。



声を聴くのは誰のためか?

これら3つに当てはまる「現場の声を聴く」が行われてしまっているときって、「誰のために声を聴くのか?」がおかしなことになっているのだと思います。

法人の代表、施設長といった立場ならではの悩みや苦労は当然あると思いますが、この「誰のため」がおかしなまま話を聴いても、期待とは違う方向に進んでしまうのではないでしょうか。

私自身もいろいろな福祉分野の法人・団体さんの伴走支援をしている中で、支援に携わる方たちの話を聴かせてもらう機会がありますが、これまでの自身を振り返ると、この3つについて「常に100%できていた」とは言えません。

だからこそ、私にとってこの3つは、現場の人たちに話を聴かせてもらうときに特に気をつけていることでもあります。

直接携わっているからこその話を聴ける機会は、すごく貴重な機会だと思います。そうした貴重な機会を無駄にしないためにも、話を聴かせてもらう自身の姿勢はこれでいいのか、ということはこれからも考え続けていきたいと思います。