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大学生発 福島キャリア新発見② 株式会社ふたば 穂積香奈さん

記事:安藤 禎基(福島大学2年)・沖沢優希子(東北学院大学1年)

取材日:2021年12月10日

『福島で歩み続ける』

今回、取材をさせていただいたのは株式会社ふたばの穂積香奈さん。穂積さんは福島県二本松市の出身で、幼少期から「川」を身近に感じていたそうで、福島大学に進学後は河川環境の研究をされていました。「福島の復興に関わる仕事がしたい」という思いから「株式会社ふたば」で社会人としてのキャリアをスタートされてから4年。現在、穂積さんはどのようなことを感じながら今のお仕事をされているのか伺いました。そして、穂積さんのお話から福島でのキャリアについて考えていきます。

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株式会社ふたばとの出会い

穂積さんが福島への思いを強く持ったきっかけは、2011年の東日本大震災直後にありました。福島県内でも、内陸部の二本松は比較的被害が小さく、当時、高校生だった穂積さんは、沿岸部での出来事は自分と遠い場所で起きていることだと感じていました。そんな中、原発事故で浪江町から二本松市に避難された方から実際に避難してきた経験について聞く機会があったそうです。自身が経験しなかった津波や放射線による避難の経験談から、沿岸部の出来事は他人事でなく自分事で、「福島のなかですごいことが起きているのだ」と痛感したそうです。この原体験から「自分も何か福島のために貢献していきたい」という思いを強くした穂積さんは、大学への進学も福島県内ということにこだわり、福島大学の理工学群に進学し、河川環境について研究をされていました。そして、就職を考え始めた大学3年生のときに研究室の先輩のつながりから株式会社ふたばと出会いました。「福島の復興への関与のほかにも、いろいろなことを経験したい」という思いを持っていた穂積さんは、株式会社ふたばの復興への考え方や新たなまちづくりへの取り組みはもちろん、地域の測量からペルーのマチュピチュ遺跡調査など海外の事業まで幅広く手掛けている姿に共感し、株式会社ふたばへの入社を決意しました。

出遅れた分は努力で詰められる

株式会社ふたばは穂積さんが大学で専攻していた分野とは違う、建設コンサルタントの会社。土木や建設分野の出身の方たちに比べるとスタートは出遅れていたと穂積さんは語ります。まずは入社までに少しでも差を埋めようと大学在学中に専門資格の勉強を進めました。入社してからも次々と新しいことを覚える必要がありましたが、「入ったからには新しいことを覚える、出遅れた分は自分が頑張れば取り戻せる」という思いから、穂積さんは折れることなく、懸命に仕事に取り組んだそうです。また、穂積さんはわからないことはそのままにせずに先輩に聞くことも大切だったとおっしゃっていました。「分からないことを恥ずかしいと思わず、貪欲に学ぶ」というような姿勢で、わからないことをそのままにせず、一歩一歩確実に仕事に取り組んできたといいます。

まちづくり事業

海外事業

移り変わる被災地の姿と共に

現在、穂積さんが関わっている仕事の一つに、株式会社ふたばの本社の所在地である富岡町の新たなまちづくり事業があります。震災と原発事故の影響で大きな被害を受けた富岡町は、住民の方たちとともに、新たな町をつくっていく時期を迎えています。自分たちの町をもっとこうしてほしい、こんなものがあったら、と住民の方からは多くの要望が行政に寄せられます。しかし行政側にも、年内の計画や予算があり、住民の要望にすぐに応えることができない場合があります。そんな時、住民の思いと行政の動きを繋ぐ役目を担っているのが株式会社ふたばです。新たなまちづくりを協働していく中で、会議のファシリテートや資料の作成などを通して、住民と行政の架け橋としてサポートしています。株式会社ふたばには、富岡の住民の思いを実現するために、共に解決策を検討し、町を良い方向へと押し進めようとする強い思いがあると感じました。
穂積さんが株式会社ふたばの一員として富岡町に関わり始めたときには、住民の皆さんとの間にどうしても距離を感じてしまっていたそうです。しかし、住民のみなさんの思いに真摯に向き合い、何度も直接会ってお話を聞くことで、一歩ずつ地域になじみ、住民の方から気軽に声をかけてもらえたり、仕事ぶりを認めてもらえたりするようになっていった穂積さん。個人的に地域の催しにも参加し、単なる「仕事の付き合い」を超えて、地域の輪の中に入ることができたといいます。

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人材の化学反応の中での成長

まちづくり事業のほかにも、様々な事業を展開する株式会社ふたば。穂積さんのように新卒で入社する方だけでなく、毎年、行政や他企業の経験を経て入社する方も少なくないといいます。社内の人材が多様であることにより、新たな人脈や価値観が生まれ、ときに化学反応のように新たな事業に繋がることもあるそうで、そんな環境の中で仕事をすることは非常に刺激と学びが大きいと穂積さんは語ります。また、新しいことにも積極的に取り組んでいく会社の雰囲気があるからこそ、若手であっても自分の意見を伝えるなど、先輩社員に対し、発言のしやすい環境が株式会社ふたばにはあるといいます。発言の機会が多かったり、ベテランとチームを組んで仕事をしたりと、若手が経験を積んでいく機会が多いそうで、そのことが穂積さんのような人材の育成に繋がっているのだと感じました。

すべての経験は自分の糧となる

今回、穂積さんは学生時代についても話してくれました。大学時代の穂積さんは、まさに「バイト人間」というほどアルバイトに打ち込んだといいます。さらに、アルバイト以外にも大学祭の実行委員として、大学祭の計画や準備を進める活動を行っていたそうです。アルバイトや委員会から先輩・後輩という縦のつながりを持った経験は、社会人になってから様々な方とコミュニケーションをとるうえでの基礎になったと穂積さんは話します。また、高校時代の部活や大学での研究に熱心に打ち込んだ経験は、今大切にしている「自分の仕事に責任をもって最後までやりきる」という思いに繋がっているそうです。
大学生活の時間は限られており、それは決して長いものではありません。一方で、その期間は自分の学びたい事、やりたいことに全力でチャレンジできる期間でもあります。その期間を、全力で好きな分野の研究やサークルへの参加に取り組むなど、自分のために活用することや、様々な分野に興味を持ち、失敗を恐れずに一歩踏み出す勇気を持つことの重要性を穂積さんは伝えてくれました。自分の「こうしたい」という気持ちに素直になって、全力で取り組んでみよう、残り三年となる私自身の大学生活を前に穂積さんの話を聞き、そう感じました。

ふくしまという場所

大学を卒業したら、生まれ育った福島に戻り、地域のために働く。私は大学に行くまで、それが当たり前のように感じていました。しかし、実際に進学し、見える世界が広がったことで「なぜ、自分は福島にこだわっているのだろうか」という疑問が湧きあがっていました。今回の取材で、若い人材の成長を支える株式会社ふたばとそこで自らの信念をもって前進し続ける穂積さんを知り、自分はまだ福島のほんの一部しか知らなかったのだということに気付きました。穂積さんが取り組まれている仕事のお話は大学生である私にとって非常にワクワクするものばかりでした。今後も、穂積さんのように変化していく福島に向き合い続ける人たちの思いを聞くことで、自分の知らない福島の姿を発見していきたいと思います。

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株式会社ふたば

「新しい東北」官民連携推進協議会

発行責任者:一般社団法人 あすびと福島 代表理事 半谷栄寿

事務局長:同社団 國分隆成