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快適について考えてみる。

「快適」とはなにか。私達はどんな時に快適である、と感じるのだろうか。まあ、人によって感じ方は様々であろうが、ここはひとつ逆説的に、快適について論ずる前にまずは「不快」について考えたいと思う。

先日、とある都市のとあるホテルに宿泊した。いや、正確にいえば宿泊したのではなく、宿泊しようしたが、あまりに不快で眠ることができず、夜中の3時にチェックアウトしてしまった時のオハナシ。

予約の際に、そのホテルから電話口で「うちのホテルはトイレ、シャワー共同です」「部屋は1フロアをパーテーションで区切っているだけです」とあらかじめ、通常のシティホテルではなくどちらかといえばユースホステルやカプセルホテルのような類の宿泊施設であると親切に忠告された。私としては、その日は遅くまで飲み会があり、多分ホテルに着くのは午前1時を過ぎる事が予想できていたので、ただシャワーを浴びて寝るだけだし、ユースホステルなどの宿泊施設は割によく利用していたので(海外一人旅では良く泊まっていた)宿泊にはなんの抵抗もなかった。なにぶんこちらのホテル、駅からは近いし価格も通常のシティホテルと比べて幾分かは安い、また次の日は早朝にはチェックアウトしなければいけないので、とりあえず寝れればなんでもいいやという安易な考えで予約したのであった。

ホテルをチェックインする際にもフロントの方は親切丁寧に「トイレ、シャワーは共同です」とか「ワンフロアをパーテーションで仕切った部屋です」とかその他諸々ホテルの特徴を説明して頂いたのである程度の内容は把握できた。そしてカードキーを受け取りエレベーターで部屋のフロアに向かったのであった。

説明を受けた通り、部屋はフロアをパーテーションで仕切っただけ、各部屋の入口はドアでなくアコーディオンカーテンになっていた(このこともすでに説明を受けている)。確かに建具を造作しない分コストはかなり抑えられるが、鍵がかけられないのでセキュリテー性は皆無である。まあ、相部屋と思えば、、とそこは割り切ることに。部屋の中はベット(十分清潔)と壁にテレビ。まあ、特に問題はない。明日も早いし、早々に寝ようとシャワーを浴びてベットの中で寝る体制には入った。のだが、、

暑い、、部屋の空調が無性に暑い、、ワンフロアをすべてエアコンでコントロールされているため各部屋の温度を調整することができない。皆さん、外気が暖房で暑い中ベットの中で寝れますか?私は暖房つけた部屋でベットで寝ることがどうしてもできないのです。仕方ないのでアコーディオンカーテンを少し開けて空気が多少流れる様にして寝ることに。

すると今度は、向かい側の部屋(部屋というよりこうなったらブースのようなもの)に宿泊する客が入ってきて、なにやらゴソゴソゴソゴソと荷物の整理を始めるではありませんか。寝ようとしても隣のブースからゴソゴソゴソゴソ、ガサゴソガサゴソ、これでは寝れるわけがない。それがなんと30分以上続いて、その荷物整理がやっと終わったと思ったら今度は間髪入れずに大音量のイビキが始まってしまって、ほんとトホホである。私はこの状況でもなんとか寝ようとベットに入りスマホにイヤフォンを繋いで静かな曲を聞き神経を寝ることだけに集中した。

しかし、イビキが煩い事と空調が暑い事とアコーディオンカーテンが若干開いているので共用部の光がブースの中に入って眩しい事とセキュリテー上安心できない事が合わさって全く眠ることが出来ず、時刻は夜中の2時を回ってしまったのだ。私はそれでも眠ることに神経を集中した。地震や水害などで被災した人たちが体育館などの避難場所で、ダンボールで仕切りを作り眠れない夜を過ごしている事を想像した。つらいだろうなぁと、特にお年寄りや病気の方は厳しいだろうなぁと思った。それに比べたらこの状況はまだ全然ましだろうと思った。そしてまた「眠ることだけ」に意識を集中した。

しかし、どう頑張っても眠れない。その空間は私にとってまさに不快であった。そして不快度指数が100%に達したとき、ついに私はこのホテルを出ることを決断したのである。それは時刻が3時を回ったときであった。

ホテルを出て寒空の中どこに行くあてもなく静まり返った町を歩いた。人気のない駅前の商店街のような通りをひとり寂しく歩いた。バーのような店は開いていたが酒を飲むきにはなれない。多分探せば24時間営業のファミレスのようなものはあるだろうがコーヒーも飲みたくない。時刻は3時半。今からホテルを探す選択肢はあるが、明日は7時にチェックアウトしなければいけないので、たった3時間の宿泊に1万円近くの宿泊料金はもったいない。しかもこの時間にチェックインできるホテルなどあるのだろうか。

などと考えながら夜の町をトボトボとなんのあてもなく歩いていたのだが、埒が明かないので目の前のシティホテルに入っていってフロントで空き部屋があるか聞いてみた。期待はしていなかったが、1室だけ空き部屋があるらしい、しかもこの時間でのチェックインであれば宿泊料は半額の6千円とのこと。捨てる神あれば、拾う神ありだ。ただ喫煙OKの部屋であるとの事だが、そのくらいは全く問題ない。多少タバコのニオイが気になっても多分すぐになれるだろう。私は早速チェックインした。

なぜ私がこんな真夜中の時間に部屋を探してここにたどり着いたのか、フロントの方に理由を説明すると「そのホテルの宿泊客が寝れなくてウチに来る事よくありますよ」とのこと、、「えっ、良くあるんですか?」「はい、良くあります」。だろうなぁ〜と思った。

部屋に入ると、タバコのニオイは全く気にならない。いたって普通のシティホテルの1室である。部屋の中はヒヤリの冷たく、電気を消せば真っ暗で、隣部屋の音はなにも聞こえない。私はベットに入り、目を閉じた。睡魔が一気に襲ってきた、そして眠りに落ちながらしみじみ思った。あああなんて快適なんだろう、、と。

おしまい








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