2フードバンク

#VizforSocialGood Viz作成ふりかえり

はじめまして。fukurou_ryといいます。

私は10年ほど国立大学で経理を担当していて、大学の財務諸表などをつくる仕事をしていたのですが、1年前に異動となって、データ分析を担当することとなりました。

異動とともに以前から関心のあったTableauを導入したのですが、初年度はほとんどデータ整備に費やすことになって、なかなか分析や可視化に取り組めなかったので、これからそちら方面のTableauスキルをしっかり向上させていきたいと考えています。

そんな折、先日、Viz for Social Good の Japan Food Bank プロジェクトに参加して、与えられたデータをもとに、TableauでVizを作成・公開しました。

このような経験は初めてで、とても勉強になったので、何をどのようにやったか、反省を含めて振り返りの記事をまとめておくことにしました。

1.コンテキストを理解する

まず初めにやったことは、いわゆるコンテキスト(文脈・背景)の理解にあたることで、以下3つの作業です。

①依頼の理解
まずはプロジェクトの依頼を理解することからです。

上記ページに基づき、このプロジェクトの要点を次のとおりまとめました。

依頼者     全国フードバンク推進協議会
依頼者の仕事  国内における食品ロスの削減、子どもの貧困問題の解決
背景・課題   貧困問題が未だ重篤な社会問題として認識されていない
ターゲット   一般市民、企業関係者
ゴール     フードバンクへの寄付、ボランティア参加

②定義の理解
次に、プロジェクト上、わからない言葉がないか確認します。
今回は「フードバンク」「食品ロス」「貧困」の定義がはっきりとわからなかったので、確認しておくことにしました。

フードバンク
安全に食べられるのに包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で、流通に出すことができない食品を企業などから寄贈していただき、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動(全国フードバンク推進協議会
食品ロス(フードロス)
まだ食べられるのに廃棄される食品(消費者庁

なお、「貧困」については調べてみると様々な定義があるようですが、今回与えられたデータ(戸室健作 (2016) 「都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討」)上は、「最低生活費以下の収入しか得ていない」こととされていたので、この定義で理解することとしました。

③依頼の詳細化
①で依頼の要点をまとめましたが、「ターゲット」と「ゴール」が少し広いように感じたので、絞ることにしました。

まず「ターゲット」については、①でまとめた要点によると、貧困問題に関する認知は広がっているものの重篤さが認識されていないという背景・課題があったので、「社会課題に関心や一定の認知はあるものの、具体的にはまだ知らない」という「一般の方」を据えることにしました。

次に「ゴール」については、もちろん最終的には寄付やボランティア参加を喚起したいところですが、上記のとおり認識が深まっていない段階では、いきなりは難しいと考え、今回のVizとしては、ターゲットが「問題に対する認識を深め、フードバンクのWebページへアクセスすること」をゴールとすることにしました。

2.ストーリーを決める

プロジェクトの背景、ターゲット、ゴールを整理できたところで、次に、ストーリーを検討しました。

ストーリーテリングについては本当に勉強不足で、設定→対立→解決という流れがあるらしいという理解くらいだったのですが、冗長とならぬよう今回は「緊張→解決」という流れをつくることにして、「緊張」ページとして貧困問題と食品ロスについて、「解決」ページとしてフードバンク活動について、それぞれVizを作成して、2枚構成とすることにしました。

また、このストーリーを通じて伝えたいメッセージを、次のとおり端的にまとめておきました。

食品ロスを有効活用できれば、子どもたちの貧困問題の一部の解決につながるので、ぜひフードバンク活動に参加し、協力してください。

3.使用するデータを決める

ここまでで、なぜ(背景・課題)、誰に(ターゲット)、何を(ゴール)、どういう流れ(ストーリー)で伝えるか、だいたい整理できたので、次にこれらを説得的に伝えるため、どのデータを使用するか検討しました。

貧困問題に関するデータ
プロジェクトからは、日本における貧困の様々な統計データが与えられたのですが、ターゲットを「社会課題に関心や一定の認知はあるものの、具体的にはまだ知らない」という「一般の方」としたので、たくさんの数値を見せてしまうとかえって認識が深まらないと考え、シンプルに直近の貧困率だけを見せることにしました。

ただ「○○%」という表現だとなかなか実感がわかないと思ったので、「○世帯に1つ」という言い換えも添えることにしました。

また、貧困問題の重篤さを伝えるために、貧困率が大きく上昇してきているというトレンドも併せて見せることにしました。

食品ロスに関するデータ
こちらも貧困問題と同じ理由で、たくさんの数値を見せるのではなく、端的にその総量だけを見せることにしました。

同じく「○○万トン」という単位ではイメージしにくいので、1日あたりのロス量がご飯何杯分に相当するかという言い換えも添えることにしました。
(なお、オリジナルの農林水産省の資料では、「国民1人1日あたりでご飯1杯分」という表現になっていたのですが、ご飯1杯分だと「そんなもんか」と感じるような気がしたので、1日あたりの総量として「ご飯1億3千万杯分」と表現することにしました。)

また、食品ロスの発生要因のトップが一般家庭であるという事実に意外性を感じたので、発生要因別の食品ロス量については、併せてデータを見せることにしました。

フードバンクに関するデータ
何を見せるべきか悩んだのが、フードバンクに関するデータでした。
事前にたてたストーリー上、ここは「解決」のページとなるので、「フードバンクは問題を解決できる」ということを示す実績データを用いたいと考えました。

ここで、プロジェクトから与えられたデータにフードバンク活動による寄贈実績データがあって、集計すると「1年強の期間で、飲料水・食品その他が約7,000寄贈された」という結果になったのですが、これが具体的にどのくらいの量なのか、実感としてイメージをもつことができませんでした。

また、同じくプロジェクトからフードバンクによるアンケートデータも提供されていたのですが、サンプルサイズが170程度であったため、フードバンクの実績として利用するには少ないのでは・・と個人的には感じてしまいました。

このように各データに対して自分自身が腹落ちできなかったため、結果的にいずれも利用できず、フードバンクに関するVizは、フードバンクによる問題の「解決」を示すのではなく、フードバンクそのものの紹介を行い、各団体Webページへのアクセスを提供するVizとすることにしました。

このあたり、与えられたデータの数値をもう少し深く理解できたら、より説得力のあるVizを作成できたと思うので、統計的な知識や数値計算など自分の基礎能力に関して、課題を感じました・・。

4.レイアウトを決める

使用するデータと見せ方も決まったので、Vizのレイアウトを考えます。
シンプルな表現で2枚構成にすることはここまでで決まっているので、レイアウトはすぐに決まりました。

5.Vizをつくる

事前準備がようやく整ったので、Vizを作成します。ここまでで多分8~10時間はかかっていると思います。やっとTableauを触ることができます。
(実際には、「3.データを決める」、「4.レイアウトを決めるステップ」でも、イメージを掴むためにTableauにデータを接続して、試行錯誤はしています。)

今回は本当にシンプルなVizなので、テクニカルな要素について特に書くことがないのですが、まだ習熟が足りない私には、ダッシュボード間の遷移リンクや、日本地図にハイパーリンクを設定する方法など、いちいちつまずいてしまって、なかなかこのステップでも時間がかかりました。

最後、Vizがまとまったら、改めて表示している数値がデータソースと整合しているか検証を行って、完成としました。

完成

以上のステップを経て完成したVizがこちらです。

まとめ

以上が今回のプロジェクトでViz作成のために行ったことの全部になります。

1.依頼を理解する(誰が、なぜ、何を伝えたいのか)
2.ストーリーを決める(どういう流れで伝えるのか)
3.データを決める(どうやって伝えるのか)
4.レイアウトを決める
5.Vizをつくる

なお、6/2現在、Twitterのアナリティクスによると、私のVizへのアクセスは12となっているので、本当に精進あるのみだなと思います。

課題はたくさんあるのですが、何といってもTableauのスキル不足を痛感しました。
構想段階で「こういう風に見せたい」と考えても、いざ実現しようとするとそれができない、あるいはとても時間がかかる。
まずはWorkout Wednesdayなどで、基礎力強化をはかりたいと思います。
呼吸をするようにTableauを使えるようになりたい・・。

自分のVizが完成してからは、他のボランティアの方々のVizを見ていて、とても勉強になりました。
私は疑問なく横長のVizを作成したのですが、他の方々を見ていると縦長の構成が結構多くて、目から鱗でした。
シンプルで絶妙な情報量のViz、メッセージが明確でデザイン性の高いVizなどなど十人十色で、今度はこうしたお気に入りのVizの解剖にも取り組んでみたいなと思います。

他の方々のVizはTwitterのハッシュタグから見れるので、ぜひご覧になってみてください。


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