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【元気が出る小説】社長(僕≠僕)の部下 第1話 (夢をかなえるゾウ風小説)

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あらすじ、大きいミスで挫折していた園田君だったが、社長は(未来の主人公)それを寛大に許した。

そして、打って変わって、約20年前の社長の前に、園田君が現れ、半年でも早く社長になれるよう主人公を優しく指導することになった?

今回は、社長と園田君の馴れ初めの話である。

個人的に凄く好きでテンション上がる話なので楽しんでもらえたら嬉しいです。


-社長の部下視点-


時間はほどなくして、大の大失敗から数日後、特別応接間にて

「ソノダ君、君にお願いしようと思っていることがあるんだけど、あの言葉って今でも真実かい?」
「あの言葉って……?」
『ズズッ』
隣にいる着ぐるみは、茶を飲むふりを茶をテーブルに置いてから言った。
「旦那、面接の時のことですよ」
「面接……? えーと……少しお待ちください」
 そういって必死に考える、ついでに関連がありそうなことも考える。
 沢山の募集の中僕を採用してくれた社長、何かに惹かれたからだろうか?
 面接で偽りを言ったつもりは一切ない、それは紛れもない事実だ。
 なんせ、僕は嘘を言えないのだから。人にされて嫌なことを可能な範囲でしないように心掛けているというか癖になっているというか
 それでも価値観の違いで争いは生まれるだろうが、ある程度中身を知った人なら誠意は伝わるだろう。
「お言葉になったら大変恐縮ですが、当時でも今でも嘘を言ったつもりはないのですが、自分なんかにお役に立てることがありますか?」
「……むっ」
 社長の顔が険しくなった、焦りかけるせつな、首にやんわりとモフっとしたチョップが響く
「ぐふっ……あっ、えーと……」
 失言をしたのは気づいたのだが、何がいけなかっただろうか、※お言葉になってしまっただろうか?
※お言葉 気に障る一言かもしれませんがの意味を添えるビジネス的一言 
「旦那! 社長の教えで自分を謙遜するのはダメや言うたやん、可能性に一時的でも蓋してしまうよ、って」
「あっ、ごめんなさい!」
「分かってると思うけど口癖も大事だからね、わしは、会社員や関係者皆に幸福に生きて欲しいから、まぁ……宗教臭さがあるって5chで叩かれてるけど」
 社長は気まずそうにポリポリと頭を掻いた。
 社長が少し元気がなくなったのを察し僕は凄く焦る。
「宗教臭いかどうかはおいといて、社員皆と関係者の殆どは、社長の教えで救われていると思います。 心が苦しい時は、藁にも縋る想いといいますか」
「社長=藁なんやね、旦那言うことがエグイ!」
「ち、違うって!! えーと、だからそのー……」
「ははっ、相変わらずだ、言わんとせんことは伝わってるから分かっている、他の皆の言葉は50%の受け止めにしているけど、君の言葉だけは100%で受けるようにしているよ。
 そして此方から投げかける言葉もほぼ100%受け止めてるという覚悟で喋ってるよ」
「えっ?…… それってつまり?」
「プロポーズでんな、ヒュー」
 一瞬、隣人の言葉を真に受けキュンと来るが、社長にはしっかりとしたパートナーがいる。『パートナーがいたから今の社長でいられる』と社長は言っていた。
「待て待て、嫁つーか恋人はいるから!フィアンセいるから!」
 焦る社長、冗談めいてしゃべる隣人。
「社長、それ意味違います、婚約者を指す言葉です」
「あ、社長って口説き魔だったんですか? 社内に愛人がいる疑惑が少し確証に……しかし僕は男で……」
 言葉の意味を理解すると勝手に言葉が出た、状況も気にすることなく僕は等身大でモノ申した。
「旦那、真に受けすぎ、えーと、社長が言いたいん事はね、純粋なところを評価しているって意味でそれで頼みたいことがあるってことなわけで」
「……んんっ、回りくどいからもう問いかけるが、わしのために一肌脱いでくれんかね?」
「キャー社長大胆!」
 キャーキャー賑わう隣人、しかし、ぎろりと社長の目が彼に行ったのを目視すると隣人はすぐさま頭を下げた。
「ご、ごめんなさい以後気を付けます……と、とりあえず肩揉ませて下さい」
 そういって隣人は立ち上がり、社長の肩を半ば強引に揉み始めた。
 一瞬嫌がっていた社長だったが、肩が凝ってるようで首をゆっくりと左右に倒しながらその行為を受けた。
……

「ふー……ありがとうね、戻っていいよ」
「隣座っても良いですか?」
「うっ……どうぞ、でも黙っててね?」
「はい、失礼いたします」

 僕の所に座ると思ったのか、不意を突かれた社長は一瞬ひるんだが嬉しそうだった。
 そういって彼は隣に座った。僕のことを『旦那』とは呼んでいるが一番慕っているのはやはり社長なわけだ。
 少し寂しく感じたが、好いてる様子の彼を客観的に見るのは眼福だった。

 そして、言いだされた本題は、20年前に行ってくれないかということだった。
 過去に行く際の決まり事がある、特定の事以外を行うことは良くない。
 宝くじなどももっての他だ。
※20年前かはまだ仮、このサイドストーリーはまだ続きます。


「過去に行って何をすれば?」
「私のサポートをして欲しい」
「えーと……社長はあと数年で50歳ですが、約20年前となると暫くして30歳になる社長のお世話をして欲しいと?」
「そういうことだ、私が大の認められたがりやなのは知っているだろう?」
「そうですね、誰かに認められていれば本領を発揮出来るというか」
「30歳の前後は、今と違い友達が殆どいなかった時期の終盤より少し前だが、支える一人になってくれ」
「な、なるほど……しかしそんな大役……私なんかに……?」
「嗚呼、適正を見極めたり教えて欲しいことの再教育もするが、頼めたら良いなと思っているよ、なんせ右腕の様なものだからね」
「いあいあ……お言葉ですが、それだったら、△さんに任せては? ずっと一緒だったわけでしょうから」
「んー……私と△に離れ離れになれと……?」
「あっ、いえ! そういうつもりではありませんでした、怖いですが、頼られるのは嬉しいです、それに会ってみたいです30歳の社長に」
「ありがとう、時間もかかるし無理に頼むことではないとは思っているから、考えながら私の指導を受けてくれると嬉しいよ」
「はっ、はい!社長」
 そして、仕事の量は減り、その代わり社長から色々な経験や持論を教えていただいた。どれもためになるものだった。
 まず一番大切な、自分は運が良い、幸せ、恵まれているなどの面に当てはまっていることに少しでも多く気づくことから始まり

 憧れの人とワンツーマンで、時折、着ぐるみ交じりで色々な事を指導してもらう時間は本当に楽しく過去に行く恐怖よりも
 今までの恩返しとこの幸せな時間の恩返しをしたいと強く思った。

 社長と間接的なコンタクトの始まりは、十年ぐらい前のことで、この会社が大きくなる前のことだった。
 たしか当時は、チャンネル登録者数万人でコメントの平均数は十数件前後だった。
 それが故に、コメントに対して社長は、丁寧に返事をしていた。
 一時期アンチコメントにより承認制になっていたが、軌道に乗り出してか承認制は一時的なものだった。
 社長の気が弱く、コメントをやたら気にする性格であると同時に、大多数の人に認められたがっているというのはよくわかって
 自分も似た立場だったら同じ行動をしているのかな、とさえ共感していた。
 社長の動画は、ラジオみたいに語ったり、着ぐるみ動画や動物や獣人主体のショートアニメや漫画なんかを作ったりしていてそれが動画になっていた。
 また、大好きな歌や漫画、小説などの紹介もあり、感受性が似ているのか、社長の紹介するものには凄くハマった。

 ふぉうちゅんドッグす (アニメ)
 2000年初期にブームになっていたTHE DOGのアニメ版に近いもの、原作は絵本らしいが、社長も詳しくは知らない。
 10巻でているDVDは、何故か一部の巻が入手困難だったりした。
 子供向けアニメかと思いきや、獣好きや犬好きにはよりたまらない感じで、飼い主と離れ離れになるシーンや、死別のシーンやお迎えが来るシーン。
 どれをとっても感動だった。笑えて泣けて、大人じゃなきゃよさが分からない、でも子供向けに作られたアニメなので分かりやすいそんな感じの作品だった。

 自分は、某サイトを利用して一度見たのだが、見始めたら止まらず、休日二日がつぶれる結果になった。 そして、お風呂場で通販サイトAmazonやヤフオク等でぽちり揃えられる範囲だけでもをDVDを買った。


 ガウガウわー太 (漫画)
 とある血縁事情により対象の動物と血の接触をすることでその動物と会話ができるようになる獣医師の息子の主人公。
 泣けるシーン多め、リアルな社会事情描写などもあり、読むのがつらくなる話もあった。しかし、これまた一級品で、泣ける話も多かった。単行本約20巻分ぐらいだった。

 他にも素敵な歌の紹介があり、どれもとても感情移入し、一時のマイソングになった。

 漫画やアニメ、歌は、星の数ほどあるといっても過言ではない世の中、社長の紹介というキッカケがありそれらは僕の目に止まった。
 そして、一つ一つが確かな輝きがあった。 

 そんなある日、居ても立っても居られず、少し前の動画にコメントをしたのがキッカケだった。

 何気なくコメントして、古い動画だから返事が来なくても良いやと思っていたのにもかかわらず、

 数時間後にはコメントが来ていた。 そのコメントは、一語一句間違わずしっかり覚えている。

『はじめまして、ボクの紹介している沢山の作品を気に入ってくれてありがとう、どれも本当大好きだし、知ってもらいたいから紹介していて、共感してくれる君に出会えたことに本当に感謝!
 差し支えなければ、コメントで語りあったり、逆に、君のお勧めを聞きたいので、よかったらまたコメントして下さいね。』


 何事にも耐えれない幸せがそこにはあった。
 ありふれたコメントの返事かもしれないけど、社長は僕の存在を喜んでくれていた。
 慌ててお礼と自己紹介のコメントをしたが、数分後、やっちゃった感に焦りが生まれ、コメントを削除した。

 そして、『有難うございます。遅れコメントになるかもしれませんが、是非是非コメントさせていただきます。』と返した。

 それからしばらくして、自分の数本上げていた動画の説明文を辿ったのか、1通のメールが届いた。

 それは、社長からで、嬉しいとはいえ暗記するには長すぎる文章だった。

 内容を要約すると、〇〇は、どのキャラが好きかな? だとか、一度お話ししてみたい。とか、他の作品も良かったら宜しくね。 とのことで

 メールの最後に、『ネットであった人とのメールのやりとりは表向きはしてないのでこのメールは、他言厳禁でお願いします。』と書いてあった。

 書いてあったとはいえ、あまりに嬉しくて、唯一無二の親友一人に言った。とはいえ親友は、別に獣や着ぐるみが好きな人種ではなかったので言い広まる心配は多分なかった。

 それから、思いのほか社長は食い気味で色々な話をしてくれたり、ちょっとしたプレゼントをしてくれたりした。

 社長の好きなキャラと合致していたのか、社長のためだけに書かれたと思うとあるキャラクターの絵をメールに添付された時は感動だった。


 それから、時々電話をすることがあり、色々と人生の励みになった。10歳年上とはいえ、とても良い人で親しみやすかった。

 そんな幸せ話が続く中、人生山あり谷あり、職場で疎外されているように感じた。

 うまく誤魔化すつもりだったのだが、社長の温かい声を聞いていると涙が溢れた。

 社長は親身に聞いてくれて、社会の仕組みについて教えてくれた。 何をとっても一番大事なのは自分自身、辛ければ辞めてしまえばいい、ただ、逃げればいいという訳ではない。

 ちょうどその時、月の真ん中だったので、『有給要らないので、今月いっぱいで辞めさせて下さい』と上司に言った。

 上司はかなり驚いていた様だが、話を聞いてくれた。 事の発端は、何気ない言動で浮足立っていて、絡みづらい、だとか、やる気が見えない。とかの苦情が先輩や後輩から来ていたみたいだった。

 話してみると上司は良い人だった。 有給を半分貰う代わりに、約一か月後の給料締め日に辞めれることになった。 就活を頑張らなきゃと思えた最中、社長の言葉は、『うちの面接受ける?』とのことだった。

 話を聞くと、交通費ぐらいは、こっちきてくれた時、明細と引き換えに出すよ。 まぁ、その話は近々、そちらの都合に合わせてお話ししたいんだけど1週間後の〇日~って仕事どんな風になってる?

 と尋ねられた。事情を聴くと社長の方も忙しい時期らしく、LINEでの簡単な返事は出来るものの約1週間後の夕方にゆっくり話すということになった。

 
 それから約1週間後、

 仕事場での多少の気まずさはあったが、その代わり多少の気遣いも見られた。 人手不足ではあるため、辞められるのはやはり惜しいようだった。

 自分はただ、決められた期間まで頑張るだけだった。そして、二日連続の有給が訪れ、夕方になった。

「有給中かな? やっと落ち着いたよ、詳しい話をする前に、そっちの天気って今どうなってる?小雨降ってる?」

 会話の文脈に違和感を覚えつつ、曇り空のベランダを見た。雨は降っているのだろうか? 

 ベランダへのガラス戸を開け、ベランダにあるスリッパを足場にして、手を伸ばした。

『曇りですが、雨は降ってないみたいですね』

 そう打とうとしたときだった。

『よし』

 社長からの短い返事、何が『よし』なのだろうか?

 打ちかけた文章を 消そうか迷う刹那だった。

 社長からのライン着信。

 当然、慌てて出る。

「わわっ、も、もしもし?」

 この時が楽しみで仕方なかった。

「やぁやぁ、お疲れ様」

「は、はい、お仕事お忙しかったみたいで、お久しぶりです」

「うん、お陰様で片付いたよ、ところで……」

 その後の社長の言葉に僕は驚いて振り向いた。まさかと思う間もなく、

 携帯から聞こえる

「おーい、見えてる?」

 そして、マンションの下にいる手を振りながら電話をする人影。

「えっ……!?」

 社長らしき人影と目が合うと、社長は手を下した。

「それじゃぁ、話(はな)そっか」

 涙が出そうになって視界がぼやけた、そして、その社長の傍に、やれやれとキャリーバックを二つ支えている人影が居た。

 社長の視線を追ってボクを見つけ、そして、目が合うとコクリと小さく会釈をした。


 

 通話をしながら状況を把握する。ハンズフリーにしてから外出の服装に着替え、財布をジーパンのポケットに入れ、携帯のハンズフリーを解除して、通話しながら階下へエレベーターで降りる。
 階下へ降りると、そこには、にこやかな中年(社長)と僕より数歳年上そうなややイケメンの付き人が居た。
 誰なのか分からない、秘書か付き人だろうか?
「は、初めまして!急に押しかけてすいません」
「ど、どうも初めまして。えっと……あれ? 仕事ご多忙じゃ?……」

「まぁまぁ、ご飯行く?それともモフる?」
「えっと、ご飯は構わないんですけど、荷物置かせてもらっても大丈夫ですか?」
 社長を遮る付き人さん、心なしか社長よりしっかりしている気がする。多分秘書か何かだろう。
「え、中身ってもしかして……」
 着ぐるみイベントに行っていれば見慣れた光景、恐らく、一体ずつ着ぐるみが入っているのだろう。
「とりあえず、御家に荷物置かせて? この辺美味しい所ある? 焼肉でも何でもいいよ、君の好きなモノで」
 こんな自分にここまでしてくれる意味が分からず僕は泣きそうになった。 涙をこらえて、エレベーターに招き入れ、5階を押した。
 

 部屋に招き入れる。 風呂トイレ別の、6畳程の小さいアパートでキャリーバック二つ置くと足の踏み場が限られる。

 ベッドをソファー代わりに招き、二人に座ってもらう。たまたま未開封だったスポーツ飲料を目の前で開けて、3つのマグカップに注ぐ。
 相手はお金持ちな訳で、更にはわざわざ足を運んできてくれていて、失礼のないように……。 その気持ちでいっぱいいっぱいだった。

 少し自己紹介をしてくれた、どうやら付き人は、秘書よりも重役な専務的立場のようだった。
 付き人は、半分ほどスポーツドリンクをグイッと飲んでから、
「じゃ、〇〇呼んできますね」
 といった。〇〇には聞き覚えがあって、社長の大のお気に入りの着ぐるみだった。
「嗚呼ぁっ……(尊い)」
 魂が抜けるかのような歓喜の声。 目の前がテカテカして現実味がなかった。
「おぅ、宜しくーっ」
 着ぐるみが出るのが日常茶飯事の様な言い方、僕のための宅オフが今始まろうとしていた。
 社長と雑談してあっという間に五分ちょっとが経った頃、台所の方から、やや窮屈そうに、〇〇が出てきた。
「嗚呼ぁっ……(尊い、もとい、死んでもいい……)」
 着ぐるみ好きにしか分からないこの感覚、ただその言葉と同等なぐらい嬉しいし、幸せなのだ。
 アイドルとは当然ハグが出来ない、でもその点着ぐるみであれば、過剰なハグでなければ問題ない。
 ふかっとする感触に、ふわっと心地よい柔軟剤の香りが漂う。
「うわぁぁあああ……ありがとございます……〇〇君……」
 狭い室内の中、憧れの社長の前で、〇〇君にハグをしてもらい、優しく頭や背中を撫でてもらった。
 夢なら覚めないで欲しい一時だった。


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