「ぼくらの未来をつくる仕事」を読んで その11 医者が作るWikipedia、「MEDLEY」誕生
医療のことを知ろうという思いが最も強くなるタイミングの一つは「自分や家族が病気となった時」
実際私も妻がパニック障害と診断された時、仕事や家事をこなしつつ、妻の職場と病院とのかけ橋をやりつつ、という状況の時が一番困りました。
●病気になった人間の分まで自分が頑張らないといけない
●それまでの生活環境に携わっている人々(例えば職場や家族)に説明しなければならない
ただでさえ自分もパニックになっているのにいざ病気について調べる時間がない。
●いざ調べても情報が多すぎていったい何を信じればいいか分からない。
どんな病気なのか、どんな治療法があるのか、どんな病院が良いのか、今後どうなっていくのか。
また、医療従事者の立場からみても、患者さんやその家族が正しくない情報を信じてしまうような状況は好ましくないです。
オンライン医療辞典「MEDLEY」はそんな想いからうまれたそうです。
正しい情報が、きちんと揃っている場所。あって当たり前、あるべきだけど今までなかったもの。
患者さんも家族も、そして今後医療従事者も必要とするもの。
カタチになるまで、さまざまな障害を乗り越え、
中立性と更新性と網羅性を持つことで、正確な情報を提供するサービスができました。
MEDLEYには、医師が匿名で登録し、編集を行う仕組みになっています。
登録時には医師免許を確認し、得意な診療科を登録してもらったうえで、その診療科に関する病気情報が更新された時には医師側に通知がいき、確認してもらう、という流れ。
2018年7月現在の段階で643名の医師が協力をしてくれているそうです。
MEDLEYに関してよく「どうして医師の名前を出さないのか」という質問をもらうようです。
それは、ほかならぬ「中立性」を保つためだそうです。
例えば医療情報の作成や監修に関わっている医師の中には医療界では著名な医師も含まれます。
そういった方の名前をいったん出してしまえば「その医師の色」がついてしまう。
そうすると、情報の多様性がなくなったり、他の医師からの知見が入りにくくなる。
MEDLEYに協力してくれる医師は「自分の名前を売りたい、出したい」というより「自分の名前は出なくてもいいけど、きちんとした病気情報を発信することは良い事だと思うから協力する」という方々で成り立っているそうです。
そんなMEDLEYですが、実際にどんなふうに使って欲しいのかを伝えるためにオリジナルの付箋を作って医療機関に配ったりと様々な試みを行ったそうです。
付箋の上部には「本日お話しした病気」と印刷され、下にはMEDLEYのURL。
この付箋には、外来の最後に医師が付箋に病名を書き、患者さんに
「今日説明した病気の名前はこれなので、帰ってMEDLEYというサイトで自分でも読んでみてくださいね」と言って渡してもらうためのもの。
医師はなるべく分かりやすく患者さんに病気の概要を伝えようとしますが、診療時間に限りがあり全ての情報を話せないことが。
そうした課題意識を持つ医師に配ることで、MEDLEYを実際の診療の場で活用してもらったそうです。
2017年12月現在でMEDLEYは1500疾患、3万の医薬品、16万の医療機関の情報に、最新の医療情報をお届けするMEDLEYニュースなどのコンテンツも加わりかなり充実したサービスになっています。
病状チェッカーという、病状から病気を検索できるシステム。
例えば「おなかが痛い」という病状を選ぶと、どんな痛みか、いつからか、他の症状はないか、などの医師の問診のような質問が自動で表示され、答えるにつれて該当度の高い疾患を絞り込んでいく機能。
リリースの時には「病気辞典」だったらしいですが薬剤師などの協力により医薬品情報が完備され、さらにエンジニアが厚生労働省のデータベースを整備し連携する機能を開発したことで全国の病院情報も掲載。
これはもう「病気辞典」ではおさまらない、ということで「医療辞典」に名前を変えたそうです。