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ザ・クラウン(シーズン1)

Netflixで配信されている「ザ・クラウン」のシーズン1を視聴した。
まだ、シーズン1だけしか観ていないので、作品全体としてどの様な構成になっているか分からないが、シーズン1ではエリザベス2世を中心として英王室の出来事や関わる人達のドラマが描かれる。
舞台となる年代は、エリザベス2世の結婚から女王即位以降数年まで(1947年~1955年)。

視聴して受ける印象を一言で言うと、「重い」。
題材が題材なこともあるが、映像の雰囲気が重いし、エピソードの内容も重いし、演技も重い。

常に不穏感が漂っていて、心が安らぐようなところがほとんど無い。
場面を切り取れば和やかなシーンはあるのだが、それは微かな救いのように見えて、実は諦めにも似た悟りや皮肉によって生まれたもの。
もしくは、幸せの入り口のように見えて、不幸の序章であったり。

英王室怖い。

実在の人物や王室を取り扱っているということもあって、知られている史実には沿って描かれていると思います。
そこにフィクションとしてのドラマを混ぜ込んでいるのだと思って観ています。
特に本作の登場人物たちの人物像は作られたものだと思います。
そうでなければ、バッキンガム宮殿ドロドロで、やっぱり英王室怖しです。
英王室も英政治も不安だらけで、この作品の世界線でのイギリスの将来が心配になってくる。

物語としての内容以外では、演技が全体的に上手いと感じた。
これは役者陣が上手いのは当然ですが、編集が上手いのかもしくは下手な編集をしていないというのが上乗せされているような気がします。
とにかく、あちこちに間が多くて、贅沢に尺を使っているという印象を受ける。
つまり演技を下手に削っておらず、役者のポテンシャルが十分伝わってくるのではないかと思った。

毎話の時間を揃えなくてよいというネット配信用作品であることが、よい方に働いているのではないでしょうか。
毎回の時間が固定されるTV放送用作品だと、決まった時間に収めるためにカットされるシーンや演技の間(ま)を、ネット配信用なら無理にカットする必要がないのではと。
もちろん不要なものを残していては間延びを感じてしまうでしょうし、全く制約がないわけではないと思いますが。

で、全体的に演技が上手いと感じる中でも、チャーチル役の役者の演技が特にすごいと思った。
最初の方は、権力にしがみつく政治家かと思っていたのだが、所々に挟まれるエピソードでそうではないのかもと思わせ、でもやっぱりただの往生際の悪い政治家にも見えるという役柄を演じきっている。
第9話にチャーチル中心のエピソードがあるが、そこでの演技が爆発している。
晩年の体の自由が効かなくなっている状態を演じながら、そこに表情や視線、セリフや細かな仕草でチャーチルのいろいろな想いや葛藤を見る人に想像させる。
演じるのが老いによって追い詰められていくという切迫した役ということもあって、その演技を凄いと感じた。

こういう暗いトーンの作品は、視聴がなかなか進まなかったり、途中で見るのをやめたりするのだが、本作は結構速いペースで消化した。
続きも観たいとは思うのだが、連続して観るには重すぎるので少し間隔を空けたいとも思う。

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