プロソフトテニスプレイヤーを名乗ることについて
弁護士でソフトテニス愛好家のふくもとです。
ソフトテニスでは、数年前から、プロ宣言をして、プロソフトテニスプレイヤーを名乗る選手が誕生し始めました。
年々、プロソフトテニスプレイヤーは増えつつあります。
このような流れは、ソフトテニス界に活気をもたらしていると思います。
他方で、Twitter等のSNSを見ていると、プロ宣言をすれば誰でもプロになれるのか?といった議論が定期的になされているのを見かけます。
そこで、この記事では、「プロソフトテニスプレイヤーを名乗ることについて」というテーマで、「プロ」について私なりに検討してみたいと思います。
この記事における私の検討は、一つの考え方として捉えていただければ幸いです。
特定の選手を肯定したり否定したりする意図は全くありません。
1 法律上、「プロ」と名乗ることは禁止されていない
まず、スポーツ選手が「プロ」という肩書きを名乗ることが法律で禁止されているということはありません。
例えば、法律で肩書きを名乗ることなどが禁止されている例として、以下のようなものが挙げられます。
上記の例では、一般人が、無関係の者を弁護士と誤認したり、会社と誤認したりすることを防ぐ要請が強いため、法律上の規制がなされていると考えられます。
これに対して、スポーツ選手が「プロ」と名乗ることを禁止する法律はありません。
それでは、プロ宣言をすれば、誰でもプロスポーツ選手になれるのでしょうか。
以下で検討してみたいと思います。
2 プロサッカー選手を名乗るには?
まず、極端な例ですが、私が、「本日から日本でプロサッカー選手として活動することに致しました。」と宣言すれば、私は日本のプロサッカー選手として活動できるのでしょうか。
上記の例に対する答えは、限りなく、ノーに近いと考えます。
日本スポーツ協会に中央競技団体として加盟している「公益財団法人日本サッカー協会」(以下「JFA」といいます。)は、JFAにおける「アマチュア選手」と「プロ選手」を次のように定義しています。
上記のことから、日本において「プロサッカー選手」と名乗る場合には、一般的に、JFAの「プロ選手」の定義に規定された要件を満たす選手のことをいうと考えられます。
したがって、私がプロサッカー選手宣言をしたとしても、世間一般からプロサッカー選手と認められないでしょうし、私がプロサッカー選手と名乗って目立った活動を行うと、世間の人々を困惑させる結果となります。
さらに、それによって不当に利益を得ているような場合には、人を騙していると評価される可能性さえあるでしょう。
そのため、私は、日本のプロサッカー選手を名乗って活動することはできないという結論になりそうです。
3 プロゴルファーを名乗るには?
次に、プロゴルファーの場合はどうでしょうか。
日本スポーツ協会に中央競技団体として加盟している「公益財団法人日本ゴルフ協会」に掲載されている「アマチュア資格規則」を参照して、アマチュアゴルファーとプロゴルファーの違いをみてみましょう。
したがって、プロサッカー選手の場合と同様に、プロゴルファーと名乗って活動する場合には、一般的に、上記のプロフェッショナルゴルファーの要件を満たす必要があるといえそうです。
4 プロソフトテニスプレイヤーを名乗るには?
プロソフトテニスプレイヤーの場合はどうでしょうか。
日本スポーツ協会に中央競技団体として加盟している「公益財団法人日本ソフトテニス連盟」の諸規程を確認しても、「プロソフトテニスプレイヤー」の定義は見つかりません。
また、その他一般的に、プロソフトテニスプレイヤーに定義があるということを聞いたことはありません。
したがって、プロソフトテニスプレイヤーを名乗る場合に、よりどころとする基準や、世間一般に共通する認識は、現時点ではないといえそうです。
このような状況であるため、ソフトテニス界においては、プロ宣言をすることで、プロソフトテニスプレイヤーを名乗るという流れができているのだと考えられます。
5 プロソフトテニスプレイヤーを名乗るにあたって
一般的にプロ選手を名乗って活動するためには、どのような要件が必要になるでしょうか。
この点、前述したプロサッカー選手や、プロゴルファーの要件から検討すると、(i)報酬や利益を目的として、職業としてプレーしていることといった目的の観点と、(ii)プロ契約の締結やプロ資格の取得といった能力の観点があるように思います。
これをプロソフトテニスプレイヤーにあてはめた場合、(i)の報酬や利益を目的として、職業としてプレーという目的の観点はそのまま当てはめて考えることができそうです。
しかし、(ii)の能力の観点については、それをわかりやすく示す方法が存在しないという問題があります。
そのため、「プロソフトテニスプレイヤー」を名乗って活動するにあたっては、(i)の目的の観点から、報酬や利益を目的として、職業としてソフトテニスをプレーすることに加え、(ii)の能力の観点について、経歴や成績、活動内容を正確に示し、自分の能力や実績をできる限り客観的に伝えた上で、自身がプロにふさわしいことを示していくことが望ましい姿勢なのではないかと考えます。
6 最後に
この記事では、私なりに、「プロソフトテニスプレイヤー」を名乗ることについて検討してみました。
現状、ソフトテニス界では、プロ宣言すればプロソフトテニスプレイヤーになれるという状況がありますが、プロ宣言をして活動していくことを決めた選手の覚悟は、簡単に真似できるものとは思いません。
能力の高い選手が、職業としてソフトテニスをプレーできる環境が整備されていくことを、ソフトテニス愛好家の端くれとして待ち望んでいます。
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Daniel RecheによるPixabayからの画像
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