This is Tokyo
その日は池袋でビアガーデンが似合わない人たちとビアガーデンに行っていた。なんとなくグダグダと二次会まで行き、このまま終電帰宅だなぁ、と思っていた時にミュージシャンの友人から突然連絡が来た。
内容が唐突すぎて驚いたが、後で聞くと、その日彼はライブでかなり高ぶっていたらしい。そして、私がなぜかその会場にいると勘違いして連絡したのだと。
まぁ、そんなことはどうでもよくて、そこから「今から遊ぼうぜ」という流れになり、渋谷に向かおうとしていると、「Aさんと合流するかも」と送られてきた。Aさんとは私が好きな作家で、前に友人に会った時に、彼がこのあとその人に会うんだよって話をしていて、私は偶然著書を鞄に入れていて、わぁすごいねぇ、という話をしていた。そ、それは、それはぜひ会いたい。断られないのであれば、私も一緒に合流したい。
今思えば図々しいこと極まりないし、なんでそこまでの勢いが出せたのかわからないが、行先をAさんが待っているという六本木に変更。ライブ終わりで一旦シャワー浴びたいという友人を一瞬で用意しろ!とせっついて向かった。
時刻は0時半あたり、六本木についた私たちはAさんが待つ中華料理屋へ。入口の階段を上がると、エメラルドグリーンのドレスを着たAさんが円卓に一人座っていた。中華!な店内に映えるグリーン!静かに微笑んでいたあの光景を私は今でも思い出せる。
「あ、あ、はじめまして…」ともごもご挨拶をして、本読んでます!とか言うのもなんか白々しいよなぁと思いながら自分の名前だけ言って椅子に座った。友人がいつもの調子で「北京ダック食べていいすか!?」とメニューを開き、ドリンクを注文した。2人は「ライブ良かったっすね」「うわ、この曲いい!」とかガツガツ話していて、彼は「あ、そういえば僕まだシン・ゴジラ見てないんすよ!」と言った。「あ、六本木なら今からでも見れるよ~」と言って上映スケジュールをスマホで開くAさん。ひとまず一時間後に上映されることを確認して、いったん考えよう、と北京ダックを食べることにした。
2人は音楽の話をしていて、私は元カレに二度フラれた話とバンドマンの奴隷になりたいとかいう話をずっとしていた。Aさんは「もしかして、私に恋愛相談送ってきたことある人?」とじっと私を見た。「ダメだよ、しあわせにならないと。本当はこの北京ダックの肉が食べたいのに、私はこっちのスープと炒め物でいいの、みたいなのはダメ」と卓上の料理を指しながら諭された。
2時すぎになり、いよいよ本当に映画を見に行くかの決断が迫られた。「映画にもこんなシーンあるよ」と言って笑っていた。時間も丁度いいし行ってみますか!と店を出て、コンビニに寄ってお水なんかを買って出るとAさんが「これお守り」と言って口紅を模したボールペンを渡してくれた。「バンドマンの奴隷になりそうな時にこれを…」「かざす…?」と3人でケラケラ笑った。
予告の分を計算しても時間に間に合いそうになく、ヒルズまで走った。いつも通り派手な服を着た友人とエメラルドグリーンのドレスのAさんと六本木を走った。パーティ感がありすぎるパーティだ。
最後一気に階段だかエスカレーターだかを駆け上がって映画館に滑り込んだ。
肝心の映画はほとんど寝ていた。
外に出ると日が昇り始めていて、映画の中とリンクしているようだった。私と友人が都会感にきゃあきゃあしていると「こっちにもっと東京を感じられるポイントがあるよ」と喫煙所に案内してくれた。朝焼けの中、東京タワーとビルとクレーン車が見えた。私たちは段差にのぼり手すりぎりぎりに立って街を見下ろした。
夢のようだ。This is トーキョー!
六本木駅で友人は日比谷線に、私とAさんは大江戸線に進んだ。ホームでやっと「本を一冊だけ持っています」と伝えた。電車に乗って新宿駅が近づいて、あぁ、もうこれ以上近づくことは出来ない、ツイッターフォローします、とか言ったらキモいよなぁ、どうしよう、もう駅に着いちゃうなぁ、と思っていたら「元彼の話とかはツイッターに書いてるの?」と聞かれた。「見ない方がいいかな?」と聞かれたけど、大江戸線のうるさい音に負けないように「そんなことないです!」と大きな声で言った。ぽちっとフォローボタンを押してくれた。そのあとすぐに勿論フォローした。
前に座っている外国人男性に話しかけられて、あぁ、もう大事な時間なのに!と思った。そうこうしている間に新宿について解散した。
友人にお礼のLINEをしたら「いい人やろ?」と来たので「よく笑ってくれるしいい人だった」と返した。彼はAさんに私のことを「面倒だったら川に沈めるんで」としきりに言っていたらしい。なんでもいいや、ありがとう。
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